戦国の世が終わった後の忍者はどうなったのでしょう。一部のものは士分に取り立てられ、一部のものは百姓になり、また商いで成功したものもいます。が、うまくいったものばかりではありません。
小田原北条氏が滅亡したあとの風魔一族は盗賊に身を落とします。その後、風魔小太郎は捕縛され処刑されますが、その後、同じく盗賊と成り果てた北条家家臣の鳶沢甚内が残存していた盗賊を集め、幕府から鑑札をもらい古着屋をはじめます。家康は彼らに仕事を与えることで江戸の治安を向上させました。日本橋富沢町の地名はこの「鳶沢」から来ていると言われています。

画:いずみ朔庵
【連載総括】
これまで様々な忍者の施設を修行してきましたが、忍者といっても本当に多種多様な活動方法がありました。
武術や手裏剣を極めたり、古文書や歴史を勉強したり。地方の活性化やエンターテインメント、海外向けのコンテンツなど、個人で活動をしている方々も含めるとキリがありません。忍者と同様、実像の定まらない不思議な存在でありながら、日本人はおろか海外でもよく知られています。私にとって忍者は、史実の地味な部分と、漫画などの世界で活躍する忍者のどちらも「本物」で、どちらも好きです。忍び装束でじゃーんと現れるのも楽しいけど、やはり私は普段は一般人に紛れて生きる忍者にロマンを感じます。
私の理想の忍者生活はこうです。
“普段はイラストレーターとしてごく普通に生活しているけど、タンスには忍び装束が眠っている。ごくたまに「任務」が入ると、ため息をつきながらそっと引き出しを開ける……。”
この場合の「任務」は残念ながら本物の忍者の仕事ではなく、忍者のイベント等に参加するとか、そういう楽しい「任務」になっちゃいますけど。それに、忍者は衣装や武術だけではありません。人の心をつかむ心理術や大胆な発想力、平常心を保つ精神力などは実生活でいくらでも応用できます。子供の頃は見た目と身体能力に憧れたけど、今は忍者の持つ本当の能力に興味があります。
連載をはじめた動機のひとつに「忍者をブームで消費されたくない」という思いがありました。好きすぎて人に言えなくなってたくらいの忍者が、好きでもなんでもない人に利用されるのは哀しいことです。
幸い、私が取材してきた人や施設は心から忍者が好きな人ばかりでした。というか、最初はそんなに好きじゃなくても、忍者をやっているとだんだん好きになるのかもしれません。だってお会いしたみなさん、みんなとてもいいお顔をしてました。忍者楽しいよね。
あと、友人の何人かが甲賀流忍者検定を受けたり、忍び装束を揃えたりして忍者になっちゃいました。これもまた想像していなかったことです。
最後に、この連載に先立ちましてお話を伺いました、
「ninjak」さんと、フリーランス忍者・
青龍窟さんに感謝申し上げます。

画:いずみ朔庵
【朔庵亭 いずみ朔庵イラストレーションギャラリー】
http://www.sakuan.net――子どものころから忍者に憧れ続けた、いずみ朔庵さん。“いつか本物の忍者になりたい”という願いをかなえるべく、この連載を通じてさまざまな忍者体験スポットに潜入し、その魅力と素顔に迫ってきました。さて、その修行の成果は? ほんの少しでもいいので本物の忍者に近づけたのだとしたら、うれしい限りです。またいつの日か、くノ一姿の朔庵さんにお目にかかれることを楽しみにしています。(編集部)