忍者修行 其の四 ~忍びの虚と実。山に棲む頭脳派忍者の巻㊦~&【コラム:忍者の豆】⑤
大自然の中での弓矢体験は最高でした!
弓矢は当てるのが難しくて的に届かせるのがせいぜいでしたが、山に入るというだけでいろんな事がわかります。
例えば、忍び衣装はかぶれる葉や虫、折れた枝での怪我を避けることが出来て、山歩きにぴったりです。また、山道はデコボコしており、場所によっては根っこが出ていたり、石が急に動いたりするので注意が必要。忍者の歩行法で足音を立てないための「忍び足」というのがあるのですが、これが意外なことに山歩きに適していました。具体的にはモノにつまずかないように膝を上げ、つま先からゆっくり地面に下ろしていくのですが、山歩きをするだけで忍び足の修行になるのです。
忍び装束を着たり九字を切ったりするのは、現代の、とりわけ都心だと、とても神秘的に感じたり、逆に滑稽に見えたりすることがあります。ですが、忍者が生まれた時代や環境を考えると、日々の暮らしの中で考え出されたものだったり、生死に関わる仕事をしていた人々の緊張感から生まれたものなのだと感じました。
そういえば、甚川さんにもそういう部分があります。自然体でありながら、どこか張り詰めた空気を感じるような……この緊張感は、彼の経歴にありました。
もともとはコンサルタント業で、世界を相手に億のお金を動かしていたエリートでした。ところが転職で調査員の仕事につくことになり、上司から「今日からお前は忍者だ!」と言われたのだそうです。調査を依頼された会社に潜入して横領の証拠を押さえたりなど、まさに諜報活動をする忍者のような業務をこなしていたのだとか。
その後、独立して調査・監査&リスクマネジメント支援の会社を起こしますが、2011年の東日本大震災を機に文明の危うさに危機感を覚え、事業内容をガラッと変えて今の土地に移住。もともと趣味で続けていた山歩きや武術を生かし、自然との共生や地域のつながりを軸に日本文化を伝えてゆく忍者の仕事を「選んだ」人なのです。
画:いずみ朔庵
【まとめ】
自然が好きで、忍者が好きでこういう仕事をしているのかな? と思っていたのですが、「和の精神」など日本独特の考え方をビジネスに生かし、ひいては人類の未来まで視野に入れた活動をしている甚川さん。最初は山で修行をするのが目的だった私ですが、それ以上に彼の不思議な人物像に強烈に魅かれました。いつもにこにこしている姿の向こうには、今まで経験してきた厳しい世界が垣間見えます。
優秀な忍者とは正体を見せないもの、どこまでが本当で、どこまでが嘘かわからない。虚と実の間に存在するからこそ、人々は惹きつけられるのでしょう。それはまるで、実在したと言われるものの、実態がほとんどわからない歴史上の忍者に出会ったかのようでした。(つづく)【コラム:忍者の豆?】
忍者には常に携帯すべしとされる「忍び六具」というものがありますが、意外にも刀や手裏剣は含まれません。これは忍者が戦いではなく、生きて情報を持ち帰ることを目的としているから。顔を隠したり目印にできる「編笠」、石や壁などに文字を書くための「石筆(せきひつ)」、侵入するのに欠かせない「鉤縄(かぎなわ)」、火を起こすための「打ち竹(火打ち石)」、薬などを入れる「印籠」、顔を隠したり傷口を縛ったり、時には武器にもなる「三尺てぬぐい」の6つを差しますが、今回は甚川さんに「現代の忍び六具」を選んでもらいました。災害も多い昨今、忍者でなくてもできるだけ持ち歩きたいものです。
画:いずみ朔庵
◎養沢野忍庵◎
甚川さんの著書
『職業は忍者』
(新評論/2,160円)
住所:東京都あきる野市養沢1252番地
アクセス:JR「武蔵五日市」駅下車、「上養沢」行きバス20分、「木和田平」下車すぐ
TEL:042-588-5126(クロスインテリジェンスエージェンシー内)
実施場所(修行内容によって変わります)
・あきる野市養沢を中心とした西多摩地区(檜原村、御岳山など)
・風魔の仕える北条領国(特に小田原・八王子で定番プログラム策定中)
・その他、呼ばれれば何処にも参上致す!
料金※体験プログラム、修行プログラムはオーダーメイドですので人数や場所、内容等により変わります。詳しくは下記ホームページを参照。
養沢野忍庵のホームページ:https://www.yajin-ninja.jp/【朔庵亭 いずみ朔庵イラストレーションギャラリー】
http://www.sakuan.net/取材協力:養沢野忍庵
https://www.yajin-ninja.jp/