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はっぴーあにまる
東海大学農学部准教授
伊藤秀一
第3回 ヒツジ

♂「ねぇねぇ,そこの彼女ぉ~~~」♀「(聞こえない……聞こえない……)」



 ヒツジが1匹、ヒツジが2匹、ヒツジが3匹…………Zzzzzzz……。
 今回は読んでいる皆さまがおネムになったので、おやすみなさい……。

 というわけにはいかないので(かもめの編集長に怒られてしまう!!)、ヒツジのいろいろを書きましょう。

 ウシやブタなど、家畜化されている動物は群れで生活をしているイメージがありますが、もっとも「群れ」を意識する動物はヒツジではないでしょうか。ヒツジが1匹、ヒツジが2匹……以上終わり!! では、いつまでたっても眠れませんね(だから群れで飼育しているわけではありませんが……)。イギリスやオーストラリアなどをドライブすると、道路脇の放牧地にたくさんのヒツジを見ることができます。私のような家畜マニアにとっては、広大な放牧地のはるか彼方まで、点々と存在するヒツジがたまりません。


 ヒツジは世界中で飼育されていますが、日本での飼育頭数はあまり多くはありません(専門的には特用家畜に分類されることが多い動物です)。その日本でも春になると、ほぼ必ず新聞やニュースでヒツジの話題を目にします。春の風物詩というかお約束のネタというか――「ヒツジの出産ラッシュ」です。○○○牧場の子ヒツジをテレビで見ると、「春が来たなぁ」と思われる人もいるのではないでしょうか? でもウシの出産ラッシュなんていうニュースは見ませんよね?(想像するとちょっと面白いですが)

 なぜでしょう?
 それはヒツジが季節繁殖動物だからです。

 ほとんどの野生動物は季節によって繁殖期が決まっています。食物を入手することが容易な時期に子育てができるように調整されているんですね。それが生き残るために重要だからです。しかし私たち人類が長い時間をかけて家畜化したブタやウシやニワトリは、どんな季節でも繁殖するように改良されています。ヒツジはその中でも例外で、いまだに季節繁殖をする珍しい家畜なのです。つまりそのような面から考えれば、ヒツジはウシなどに比べてまだ野生に近い動物といえます。世界中の環境、粗放な環境でも飼育することができるのは、そんなことも関係しているのかもしれません。

 さて、ヒツジの出産ラッシュが春ということは、ヒツジの恋の季節は秋です。その時期は、雌ヒツジの群れに飛び込んだ雄ヒツジを邪魔しないようにしてあげましょう。“ヒツジの恋路を邪魔する奴は、ヒツジに蹴られて……”
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【いとう・しゅういち】
1972年千葉県生まれ。麻布大学獣医学部環境畜産学科卒業、同大学院獣医学研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は応用動物行動学。中学生のころより写真撮影を始める。家畜たちの日常の素顔を集めた写真集『まきばなかま』を出版。
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