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はっぴーあにまる
東海大学農学部准教授
伊藤秀一
第9回 ウシ

これって愛?


 放牧地の巨大動物であるウシ(第2回)も、産まれた直後は、それほど巨大ではなく、カワイイ姿をしています(とはいえ、30~50kgありますが……)。自然分娩の場合は、分娩直後の母子に出会うことは、なかなか難しいのですが、幸運にもその場にいることができた場合は、ウシは普段見せない行動をしてくれます。



 ほとんどの哺乳類は、分娩直後には母親が子どもの体を舐める行動を示します。ウシも同様に、特に分娩直後は体が濡れていることから、母ウシが子ウシを舐める行動が発現します。近年、この母親が子どもを舐めるという行動は、母子のつながり(絆)を強くする効果を持っていることが明らかとなりました。子ウシは母ウシに舐められることによって、脳内のオキシトシンという物質の働きが強くなるのです。オキシトシンは、ある状況では“信頼を強める”効果があることが知られている神経伝達物質です(ホルモンとして作用することもあります)。

 子ウシの時期に、母ウシからのケアを多く受けた個体や、実験的に人からブラッシングを受けた個体は、成長後に“ウシ社会”にうまく溶け込めるとの研究結果もあります。ストレスに対処する能力や、扱いやすい動物を育てるには、幼少期の体験も重要なのです。


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【いとう・しゅういち】
1972年千葉県生まれ。麻布大学獣医学部環境畜産学科卒業、同大学院獣医学研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は応用動物行動学。中学生のころより写真撮影を始める。家畜たちの日常の素顔を集めた写真集『まきばなかま』を出版。
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