これって愛?
放牧地の巨大動物である
ウシ(第2回)も、産まれた直後は、それほど巨大ではなく、カワイイ姿をしています(とはいえ、30~50kgありますが……)。自然分娩の場合は、分娩直後の母子に出会うことは、なかなか難しいのですが、幸運にもその場にいることができた場合は、ウシは普段見せない行動をしてくれます。
ほとんどの哺乳類は、分娩直後には母親が子どもの体を舐める行動を示します。ウシも同様に、特に分娩直後は体が濡れていることから、母ウシが子ウシを舐める行動が発現します。近年、この母親が子どもを舐めるという行動は、母子のつながり(絆)を強くする効果を持っていることが明らかとなりました。子ウシは母ウシに舐められることによって、脳内のオキシトシンという物質の働きが強くなるのです。オキシトシンは、ある状況では“信頼を強める”効果があることが知られている神経伝達物質です(ホルモンとして作用することもあります)。
子ウシの時期に、母ウシからのケアを多く受けた個体や、実験的に人からブラッシングを受けた個体は、成長後に“ウシ社会”にうまく溶け込めるとの研究結果もあります。ストレスに対処する能力や、扱いやすい動物を育てるには、幼少期の体験も重要なのです。