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美しいくらし
落語でボン・ヴォヤージュ! フランス人落語パフォーマー
シリル・コピーニ(尻流複写二)
第7回 田舎町の博物館で肝試し
本連載の第2回では、フランスに数多くある地名「~レ・バン」についてふれましたが、今回もその「レ・バン」が付く町を紹介します。舞台はプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏、アルプ=ドォ=オート=プロヴァンス県にあるDigne-les-bains(ディーニュ・レ・バン)。さっそくヴォヤージュしましょう!

省略して「ディーニュ」と呼ばれるこの町は、フランス南東部にあるのどかな田舎町です。名物といえば何といってもラベンダー。毎年8月にはラベンダー祭りが開かれ、町は華やかなパレードでにぎわいます。そしてフランス文学好きの方ならお馴染みの町かもかもしれませんね。ヴィクトル・ユゴーの名作『レ・ミゼラブル』の物語は、ジャン・ヴァルジャンがディーニュの司教館を訪れる場面から始まります。

落語の会場になった博物館

さて、そんなディーニュにはMaison Alexandra David-Neel(メゾン・アレクサンドラ・ダヴィッド・ネール)という博物館があります。この建物はもともとはメゾン(住宅)で、かつてここに暮らしていたアレクサンドラ・ダヴィッド・ネール(1868〜1969年)という方は、東洋文化研究者にして探検家。1924年にはヨーロッパ人女性として初めて、チベットの首都ラサ市を訪ねました。長年にわたってアジア各地をめぐり、日本にも滞在したことがあるそうです。晩年を過ごしたのがこのディーニュで、お住まいになっていたメゾンは現在、100歳の生涯を終えた彼女の功績を紹介する博物館になっているのです。

その博物館で今年(2025年)、落語会を開催することになりました。背景にはパリの有名なギメ東洋美術館の取り組みがあります。ギメ東洋美術館は中国、韓国、日本、インドをテーマに、1年を通じてさまざまアングルでアジア文化を紹介しています。そして2025年からは「Guimet +(ギメプリュス)」というプログラムをスタート。所蔵する彫刻や絵画や調度品を地方の博物館へ貸し出し、各地で「日本展」「中国展」といった企画をローテーションで展開するものです。会期中、展示に合わせて関連イベントも開催されます。

ギメ東洋美術館が主催する「Guimet +」のフラッグ

その一環として2月にディーニュで日本展が開かれ、私に落語のアトリエ(ワークショップ)2回と独演会のオファーが舞い込んできました。当日は学校が冬休み中ということもあり、子どもから大人まで約50人のお客様が集まってくださいました。展示品が並ぶ2階の大広間は満員御礼の大好評。おかげさまで10月にはアンコール口演も決定です!

それはうれしいのですが、ただ一つだけ正直に言えば、ディーニュでの宿泊先がちょっとスリリング。アーティスト(出演者)の滞在費を節約するため、主催者が博物館1階にある部屋を提供してくれるのですが、夜になると館内はしんと静まり返り、真っ暗。だ〜れもいません。一人で居ると正直、ちょっとビビります。夏ならおばけが出そう……。冬に呼んでもらえて本当によかった~(笑)。(つづく)


【シリルのフランス豆知識 ●ディーニュ・レ・バン編】



私の故郷・ニースからディーニュまでは電車でおよそ3時間20分。19世紀から運行しているプロヴァンス鉄道に揺られて向かいます。山間をのんびり走るので、車窓からの景色はまさに絶景。鉄道旅が好きな方、スローライフを味わいたい方にはぴったりです。
ちなみにこの鉄道、あまりにものんびりしているため、停車中に松ぼっくりを拾えた、なんて逸話も残っているほど。そんなことからニースの人はこの路線をTrain des pignes(トレン・デ・ピーニュ)、「松の電車」と呼んで親しんでいます。

(写真提供:Cyril Coppini)

☆シリル・コピーニさんがフランス語で落語を披露するときのコツや面白さを語る
連載【落語はトレビアン!】はこちら→
☆口演会やイベントの情報はこちら→https://cyco-o.com/
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【シリル・コピーニ】
1973年フランス・ニース生まれ。落語パフォーマー、翻訳家。フランス国立東洋言語文化研究所(INALCO)で言語学・日本近代文学の修士号を取得。1995 年から1996 年まで長野県松本市信州大学人文学部へ留学。1997年から2021年まで在日フランス大使館付属文化センター「アンスティチュ・フランセ」に勤務。2011 年から「フランス人落語パフォーマー」としての活動を開始、国内外問わず落語の実演、講演会、ワークショップを積極的に行う。テレビやラジオにも数多く出演。2013年からは漫画やビデオゲームなどの日本のサブカルチャーコンテンツの翻訳と海外への紹介にも取り組んでいる(『名探偵コナン 』『どうらく息子』など)。
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