第5回 日本旅を実現させた高校生たちのジャパン・フェス

のどかな風景が広がるBar-sur-Aube
今回は南仏を少し離れて、フランス東部、オーブ県にある小さなコミューン「Bar-sur-Aube」(バール=シュール=オーブ)へヴォヤージュ!
「え? それどこ?」と思われた方、ご安心ください。私も行くまではノーマークの場所でした(笑)。でも実はこの町、おいしくてお手ごろなシャンパンが楽しめるシャンパーニュ地方の一角なのです。
Bar-sur-Aubeで落語会を開催することになったきっかけは、2024年の年明けに私のSNSに届いたある一通のメッセージから始まりました。内容はフランス語だったのですが、ここでは短く訳して紹介しましょう。
Hajimemashite(←ここだけ日本語のローマ字で、笑)
ボンジュール、ムッシュ・コピーニ。
私は◯◯と申します。Bar-sur-Aubeで高校の教員をしており、生徒たちを日本に連れて行く旅行を企画しています。旅行資金を集めるために、生徒にいろんな活動をしてもらうのですが、その一つとして地元で「ジャパン・フェス」を開催する予定です。ぜひこのフェスにご出演いただけないでしょうか?正直、最初は「これは冗談か?」と疑いました。でも先生の名前をググってみたら(インターネットで検索してみたら)、以前にもBar-sur-Aubeの高校生を日本に引率したという記事が見つかり、「これは本当だ!」と確認してすぐに返信しました。それからしばらくのメッセージのやりとりを重ねるうちに、「これは一度会って直接話をしてみたい」と思うようになり、私は2024年4月にパリ滞在の予定があったため、そこから電車で2時間半ほどのBar-sur-Aubeを訪ねることにしました。
せっかく行くのなら、「生徒さんに落語のワークショップをしましょうか?」と提案すると、先生は大喜び!
いよいよBar-sur-Aube初訪問の日。最寄り駅に到着すると、先生が出迎えてくれました。ワークショップのために高校へ直行かと思いきや、向かったのはジャパン・フェスの会場。そこで施設内を案内してくれることになりました。
「ここがメインステージで、あそこ物販コーナー、ここはフードエリアで、あちらが講演会場……」。先生の説明は止まりません。
ちょ、ちょっと待って! まだ正式にオッケーを出してないんですけど。
内心ツッコミを入れつつも、先生の話を聞いているうちに、その熱意がじわじわと伝わってきました。先生ご自身、日本が大好きで、しかも空手家。かつては年に1度のペースで来日して空手のスタージュ(研修)に参加し、高校では「クラブ・ジャポン」を立ち上げ、生徒たちに「日本ラブ」を伝えてきた方だったのです。

生徒たちはジャパン・フェスの準備に大忙し
旅行の資金は、主に生徒たちが自分たちの力でアルバイトなどをして集めます。例えば地元のマルシェで手作りのケーキを販売したり、ブドウ畑のヴァンダンジュ(収穫)を手伝ったり。そして最大のプロジェクトがBar-sur-Aubeで初となる「ジャパン・フェス」を開催して、その収益で旅費をまかなう計画です。
日本に行ってみたいという夢を叶えつつ、同時に仕事の価値も学べる。なんてすばらしい教育プランなのでしょう!
2024年11月末に迎えたフェス当日。地元の新聞やテレビにも取り上げられ、2日間で約500人が来場! これはBar-sur-Aube人口の10%に相当するそうで、地方都市では驚異的な集客力です。
私の落語会では、4月のワークショップに参加した生徒の1人が「ぜひ高座に上がりたい」と申し出てくれて、小噺を披露してくれました。堂々とした姿に、思わず拍手喝采です!
こうして2025年4月に、生徒45人がついに日本旅を実現。2週間の滞在を通して、たくさんの体験をすることができました。
あの熱血先生は? というと、「ジャパン・フェスの第2回を2026年末に開催して、2027年にもまた生徒を日本に連れて行きたい!」と、すでに次の計画に向けて動き始めているそうです。(つづく)
(写真提供:Cyril Coppini)
☆シリル・コピーニさんがフランス語で落語を披露するときのコツや面白さを語る
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