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美しいくらし
落語でボン・ヴォヤージュ! フランス人落語パフォーマー
シリル・コピーニ(尻流複写二)
第1回 南仏に日本伝統芸が大集合!

Bonjour !
2023年10月から始まった連載「落語はトレビアン!」に引き続き、今月から「落語でボン・ヴォヤージュ」という新連載がスタートすることになりました。私、フランス人落語パフォーマーの尻流複写二(シリル ・コピーニ)です。どうぞよろしくお願いしいます。
この連載では、今までフランス国内で開催された落語会の模様を伝えながら、その場で会を開催した理由やその地方の特徴を紹介したいと思いす。なお、ご紹介した場所は今後フランスをヴォヤージュ(旅行)されたときに、ぜひ訪ねてみてくださいね。

今回はマルセイユ、カンヌ、ニースを回った南仏プチツアーのお話です。きっかけは2023年、とある日本の旅行会社からの「南仏で日本の伝統芸を紹介しませんか」というオファーでした。ツアーで巡るニースは私の生まれ育った故郷。声がかかれば、行かないわけはありません。それから約1年後の10月に、和太鼓や日本舞踊などのメンバーとともに南仏に向けて出発しました。

最初に訪れたのはパリに次ぐフランス第二の都市、Marseille(マルセイユ)。南仏プロヴァンス地方の地中海岸に位置している港町で、1961年から神戸市と姉妹都市提携を結んでいます。ド派手なカーアクションの映画『TAXi』シーリーズの舞台にもなっています。
ちなみに、マルセイユの人はクセが強め(笑)。この『TAXi』を観た方やマルセイユを何度か訪れた方なら、きっとその雰囲気を感じ取っているのではないでしょうか。彼らはいつも「気候が最高」「飯がうまい」「サッカーチームがフランスナンバーワン!」と、地元を誇りに思い、何よりも「パリには絶対負けない!」という強い対抗意識を持っています。この感覚は大阪人の大阪VS東京に似ているかもしれません。ですから、私がフランスの落語会で関西と関東の文化の違いを説明するときは、大阪をマルセイユに例えて話すことにしています。すると、お客さまは「なるほど」とうなずいてくれるので、話がスムーズに進むのです。

さて、話が少し逸れましたが、このマルセイユには日本領事館があります。領事館はフランスに暮らす日本人に向けた生活情報の提供やビザ・証明書の発行業務だけでなく、日本文化の普及を目的とした広報活動にも力を入れています。その一環として開催されているのが、私たち日本伝統芸の一行が参加した「Fête japonaise de l’automne(フェット・ジャポネーズ・ドォ・ロトーヌ)」の「日本秋祭り」です。

野外ステージに多くの観客が集まった

このイベントは毎年10月の第1土・日曜日に開催され、会場となるのはマルセイユ市内にある広大な植物園「Parc Borély(パーク・ボレリー/ボレリー公園)」。その敷地は1700平方メートルにも及びます。入場無料で、毎年1万2000人ほどのお客さまが来園する大規模なイベントです。雨天中止とはならないため、屋外の催しはお天気が心配でしたが、2024年10月5日・6日に開催された第13回は幸い大雨にはならず、小雨がぱらつく程度でした。
イベントのプログラムも充実していて、両日とも伝統的なアクティビィティーが盛りだくさん。ラジオ体操に始まり、盆踊り、武道のほか、各ブースでは折り紙や茶道、書道、着物なども体験できます。さらに野外ステージでは和太鼓の迫力や日本舞踊の美しさで訪れた人を魅了しました。
そんな中、私も落語を披露。落語を聞くのが初めてという方が多かったので少し不安もありましたが、「尻」が「流れる」に「コピー(複写)」が「二(枚)」という最初の自己紹介から会場のお子さんたちに大ウケ! ステージから降りたときに、「母ちゃん、ムッシュ・フェッス・キー・クール(尻が流れるさん)と写真とりたい!」と、すっかり人気者になってしまいました。落語は『寿限無』と『饅頭怖い』をしたのですが、特に「じゅげむじゅげむ……」の早口言葉のところは驚きの表情で聞いてくれていたのが印象的でした。

フランスでは日本文化の人気が高く、こうした日本をテーマにした祭りやイベントが各地で開催されています。ただし、それらの多くは基本的にフランス人が主催・運営するため、「折り紙」「武道」「茶道」といったベタなコンテンツに偏りがちです。しかし、この日本秋祭りは日本領事館が監修していますのでパフォーマンスだけでなくフードスタンドにもこだわりが感じられます。焼きそばやたこ焼きといった日本のお祭りならではの食べ物から「ラジオ体操」や「盆踊り」、それに「紙芝居」まで。フランス人はそこまでは思いつきませんからね。来場者にとって本物の日本文化を体験し、知ってもらえる貴重な機会になっているのです。それだけに私たち出演者も自然と力が入り、朝から大忙し……。でも楽しかったー。

その後、マルセイユからカンヌ、ニースへと移動し、南仏3都市を巡るツアーは無事に終了しました。ご一緒したメンバーのみなさん、お疲れ様でした!!(つづく)

祇園小唄のリズムをステップで体験(マルセイユ)

伝統芸を披露した出演者がステージに集合(カンヌ)

和太鼓による迫力のパフォーマンス(カンヌ)



【シリルのフランス豆知識 ●マルセイユ編】



その1)フランスにはたくさんの日本企業が進出していますが、日本全国に展開しているホテル「東横INN」は1カ所のみ。マルセイユ中心にある駅「サンシャルル駅」付近にあります。
その2)マルセイユ北部に位置する町Aix-en-Provence(エクサンプロヴァンス)には能舞台があります。姉妹都市である熊本市で活動されていた喜多流能楽師・狩野琇鵬(かの・しゅうほう)さんが1992年にエクサンプロヴァンス市に贈呈したもので、日本でも珍しい総檜造りです。私も以前、この能舞台に落語で出演したことがあります。

(写真提供:Cyril Coppini)

★シリル・コピーニさんの口演会やイベントの情報はこちら→https://cyco-o.com/

【参加募集!】4月5日(土)開催
シリルさんが出演する南仏トークイベント


好評既刊『ニースっ子の南仏だより12カ月』の著者で、フランス政府公認ガイドとして活躍するルモアンヌ・ステファニーさんのトークイベントを開催します。会場は東京・神田神保町の出版クラブホール。特別ゲストとして、ステファニーさんと同じくニース出身で日本在住20年以上というフランス人落語パフォーマー、シリル・コピーニさんが登場! 南仏気分を味わえる春のトークイベントをお楽しみください。

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【シリル・コピーニ】
1973年フランス・ニース生まれ。落語パフォーマー、翻訳家。フランス国立東洋言語文化研究所(INALCO)で言語学・日本近代文学の修士号を取得。1995 年から1996 年まで長野県松本市信州大学人文学部へ留学。1997年から2021年まで在日フランス大使館付属文化センター「アンスティチュ・フランセ」に勤務。2011 年から「フランス人落語パフォーマー」としての活動を開始、国内外問わず落語の実演、講演会、ワークショップを積極的に行う。テレビやラジオにも数多く出演。2013年からは漫画やビデオゲームなどの日本のサブカルチャーコンテンツの翻訳と海外への紹介にも取り組んでいる(『名探偵コナン 』『どうらく息子』など)。
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