
アジャクシオ・ナポレオン・ボナパルト空港

アジャクシオ市を見守るナポレオン像
今回は地中海に浮かぶ島にボン・ヴォヤージュ!
フランス皇帝ナポレオン・ボナパルト(1769〜1821年)の出身地として知られるコルシカ島、その西岸にあるアジャクシオ市のイベントにフォーカスします。
イタリア半島の西に位置するコルシカ島は地中海ではシチリア島、サルデーニャ島、キプロス島に次いで4番目に大きい島。フランスの地域圏に属し、島全体は「コルシカ単一地方公共団体」という行政組織が統括しています。そのせいか、同じフランスでもコルシカの人々はプライドが高いです(笑)。その理由は最後の「豆知識」で紹介しますね。
さて、2023年9月。アジャクシオ市内で「ISULI MONDI」(イズリ・モンディ)というフェスティバルが初開催されました。テーマは「島国の交流」。コルシカ島とは異なる島国の文化や風土、伝統を紹介し、相互理解を深めようという試みです。
記念すべき第1回は「コルシカとアイスランド」。そして第2回(2024年9月24日~10月2日)は「コルシカとジャポン(日本)」に! 私もゲストとして招かれ、落語を披露してきました。
これまでフランスで開催されているジャパン・フェスといえば、アニメやコスプレ好きが集まるちょっと“マニアックなイベント”という印象が強かったのですが、「ISULI MONDI」のプログラムを見たとき、「これはひと味違う。落ち着いた“大人のフェス”になりそうだな」と感じました。確かに、折り紙や漫画などのワークショップがありましたが、コスプレ大会やアニソンライブ、人気声優の登場といった派手さはなし。その代わり、日本とフランスの両方で活躍する方々――作家で演出家、映画監督・ミュージシャンでもある辻仁成さん、元シャネルジャパン社長で現在は作家として活動するリシャール・コラースさん、詩人で翻訳家の関口涼子さんなどがゲスト出演。黒澤明監督の名作『七人の侍』の上映もあり、日本文化をさまざまな角度から深掘りするプログラムがぎっしり詰まっていたのです。
実際に来場していたのは、大人の方が中心で、日本の文化や芸術をじっくり味わいたいという熱気が会場全体に感じられました。そんな中で私が落語を披露できたことは、とても意味深く、心に残る貴重な体験でした。

会場の外を歩くと独創的なオブジェに遭遇
メイン会場となった「Le Lazaret(ル・ラザレー)」は海沿いにある円形型の野外ホールです。現在はアートイベントやジャズフェスの会場に利用されていますが、もともとは検疫所だったそうで、どこか幽玄な空気感が漂っています。周囲に点在する独特な彫刻やオブジェのせいか、不思議な魅力のある場所でした。
こうしたイベントの多くは、主催者以外のスタッフはみんなボランティア。とにかくいろいろな場面で手づくり感が満載です。特にこの「ISULI MONDI」はそれがハンパない! その一つが、無料の翻訳ツールを使って作成したドリンクメニュー。これを見たときに思わず写真を撮ってしまいました。これは日本の皆さんにぜひお見せしたい一枚です(笑)。

「たまり水」と表記されていたドリンクメニュー
ちなみに、「ISULI MONDI」主催者の構想では、毎年異なる島国を紹介していく予定だったのですが、第2回開催の「ジャポン」があまりにも好評だったため、今年(2025年)の6月に日本をテーマにしたイベントを特別開催をするそうです。(つづく)
【シリルのフランス豆知識 ●コルシカ島編】
フランス人は自分の出身地に熱い誇りを持っている人が少なくありません。中でも南仏出身の人々(私もその一人です)は特にその傾向が強め。コルシカの場合はさらに顕著で、「自分はフランス人というより、コルシカ人だ!」と強く主張する人が多いです。これは島という独立した地理的環境に由来する「あるある」なのかもしれませんね。
(写真提供:Cyril Coppini)
☆シリル・コピーニさんがフランス語で落語を披露するときのコツや面白さを語る
連載【落語はトレビアン!】はこちら→
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