◆ひと振りでおいしさ&うま味アップ 塩にスパイスやハーブなどがブレンドされたものを総称して「調味塩」と呼びます。またの名を「シーズニングソルト(seasoning slat)」「シーズンドソルト(seasoned salt)」と言い、複合原材料にハーブが多用されることから「ハーブソルト」とも呼ばれています。「season」と聞くと「季節」と訳したくなりますが、「(食べ物に)風味を加える、味付けをする」という動詞もあることから、シーズニングソルトは味付けをして風味を増してくれる塩、シーズンドソルトは味付けされていて風味が増した塩という意味になります。
調味塩の特長を3つ挙げるとしたら、まずは下味や仕上げにも振りかけるだけの手軽さでしょう。調味塩だけを舐めてもおいしいと感じるほどバランスの取れた味になっているため、料理の味付けに迷ったときには「とりあえずこれを使っておけば安心」となり、非常に便利です。
次に見た目の華やかさ。塩は基本的には無色透明なので、黄色やピンク、紫、赤などの色味が加わった調味塩の華やかさは食卓をぱっと明るくしてくれます。
最後は味の種類が豊富なこと。塩にどんな素材を混ぜるかによって、本格的な味やひと味違う風味にも簡単にできるのでレシピの幅がぐんと広がります。
レモンやバジルなどの風味が楽しめるクレイジー・ソルト
こうした調味塩が日本で普及した背景には、1980年に輸入されたアメリカの「クレイジー・ソルト」(日本緑茶センター)が大きく関係しています。日本の塩ではあまり見かけないようなしゃれたパッケージで、岩塩にガーリックやオニオン、タイム、オレガノがブレンドされている洋風の味付けが人気を博しました。ハーブやスパイスというと海外のものという印象がありますが、日本にもユズや抹茶といった風味豊かな和の素材がたくさんあり、それらを生かしたさまざまな調味塩が製造されてきました。最近では竹炭や醤油、ウメ、ワサビを使ったユニークな商品が次々と登場しています。
◆注目の新商品が続々と登場 現在販売されている調味塩の充実ぶりといったら目を見張るものがあります。ハーブやスパイスをブレンドするという以外に「燻製にする」「煮詰める」「乾燥させる」といった製法も加わり、独自の進化を遂げています。それでは実際にどういった調味塩があるのか、タイプ別に見ていきましょう。
塩に乾燥ハーブなどがブレンドされている
【混ぜる系】 塩にハーブやスパイスをブレンドするもっともベーシックな調味塩。
<主な製塩所と商品>有限会社新海塩産業「珠洲の竹炭塩」(石川県)、株式会社男鹿工房「黒い塩」(秋田県)、株式会社白松「魔法のだし塩 ドラゴンスパイス」(長崎県)【燻製系】 塩を燻製にしたもの、燻製の香りやエキスをブレンドして風味付けしたもの。スモーキーなテイストで、料理の仕上げにかけるだけで芳醇な燻製の香りが口いっぱいに広がる。
<主な製塩所と商品>農業生産法人株式会社島酒家「沖縄の燻製塩」(沖縄県)、新三郎商店 とったん工房「またいちの塩 SMOKE」(福岡県) 【煮詰める系】 海水に果汁や赤ワイン、出汁などの液体や色がでる野草などを加えて煮詰めたもの。材料のうま味や風味がしっかりと塩の結晶の中に入り込むので、香りや味の余韻が長く続く。
<主な製塩所と商品>株式会社さかたの塩「さかたの塩 赤ワイン塩」(山形県)、有限会社日本海企画「笹の雫」(新潟県)【乾燥系】 醤油や味噌、海産物のエキスなど、塩分を含んだものを乾燥させて粉末にしたもの。素材本来の風味が強く残っている。
<主な製塩所と商品>株式会社かめびし「ソイソルト クリアボトル 三年醸造」(香川県)、はるのTERRACE本店「ベルガモットソルト」(高知県)◆調味塩の選び方と保管方法 調味塩には、塩にはない注意すべき点があります。それは賞味期限があるということです。塩は浸透圧の働きによって雑菌が繁殖しにくいことから、経年劣化が極めて少なく、賞味期限を気にせずに使えるのですが、調味塩はそうはいきません。時間の経過とともに複合原材料の風味や色合いが劣化し、品質の低下を招くため、消費期限が設けられています。
調味塩には湿気対策も必要です。塩そのものも湿気で固まる性質があるのですが、糖分を含むような複合原材料が使われている場合、より湿気を含んで固まりやすくなります。開封後は必ず密封して乾燥した冷暗所に保管するようにしてください。
塩以外の味や香りがついている調味塩は、料理にひと振りするだけで味のバリエーションが広がる便利な調味料です。しかし、味に飽きてしまったり、複合原材料によっては用途が限られてしまったりして、「使い切らないうちに賞味期限を超えてしまった」という声もよく聞きます。そのような後悔をしないためにも、最初は小容量のものを選び、タイプの異なる調味塩を2~3種類に絞って持つことをおすすめします。
◆調味塩づくりに挑戦! 実は調味塩を自宅で比較的簡単につくることができます。自作すれば、ベースとなる塩からこだわって選ぶことができますし、味や香りを好みでブレンドすることもできます。ぜひオリジナルの調味塩づくりにチャレンジしてみてください。
【塩コショウ】 好みの塩50グラムに対して、ブラックペッパーやホワイトペッパーを20~30グラム入れてよく混ぜる。ピンクペッパーやグリーンペッパーなど、お好みのペッパーを複数ミックスしてもOK。
肉・魚料理、ドレッシングなどにも使える塩レモン
【塩レモン】 防かび剤等を使用していないレモンを皮ごと洗い、しっかり水気を拭き取って輪切りにする。レモンの重量の30パーセントに当たる塩を用意する。消毒した瓶に塩とレモンを交互に入れて、最後に塩で蓋をする。最初の1週間は毎日瓶を逆さまにして全体に塩が行き渡るように混ぜる。常温で1カ月ほど置いたら出来上がり。
※熟成が進むと色が褐変するので、それが嫌な人は冷蔵庫で保管してください。炒め物、鍋、パスタ、サラダなどのさまざまな料理に利用できます。
【うま味だし塩】 塩50グラムを手でふれる程度に温めたフライパンの上に広げ、その上から濃いめに取っただし汁を50~100CCかける。塩とだし汁をなじませたら、水分が蒸発するまで全体をかき混ぜる。
【燻製塩コショウ】 自家製の塩コショウを燻製機に入れるだけで完成。水分が含まれていない素材には香りが移りにくいため、塩はにがりを多く含んだ海水塩がおすすめ。
調理時間を短縮できる時短料理が話題になっている昨今、調味塩のニーズは今後も拡大すること間違いなし! 各製塩メーカーさんもご当地の素材を使ったユニークな調味塩を次々と販売しています。あなたも味わい豊かな調味塩の世界を楽しんでみてください。(つづく)
写真提供:青山志穂
★青山志穂さんが訪れた全国各地の製塩所を紹介する連載「にっぽん塩めぐり」は
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