塩の結晶の形は、塩を構成している塩化物イオンとナトリウムイオンが均規則正しく並んでいるため小さな立方体が基本ですが、球状、粉末のほかにピラミッド型といったユニークなものもあります。これらの形状は釜の素材や形、熱源の種類や温度、結晶化するときの湿度によって多種多様に変化。塩の形状が違えば食感の種類が異なり、それは塩味の感じ方や料理のおいしさにも直結するため、塩選びの参考になるポイントです。まずは塩にはどんな形や大きさがあるか見ていきましょう。
【立方体】塩水の中で四方八方に均等に成長した正六面体(サイコロ状)の結晶。結晶工程に立釜や天日、低温で炊いた平釜を使う場合にできやすい。一般的に最も知られている食塩は直径0.4ミリメートルほどと非常に小さい。長い時間をかけて育てると、直径数センチメートルの立方体をつくることも可能。主な商品は有限会社与那国海塩(沖縄県)の「花塩」や田野屋銀象(高知県)の「銀象MEAT」など。
【凝集晶】散らばったり壊れたりした結晶が集まって結びついたもの。平釜で高温加熱して流動させながら結晶化させた塩や、にがりを多く含む塩によく見られる。直径0.2~0.6ミリメートル程度の複数の結晶がゆるくくっつきあった状態になっている。指でふれると簡単にバラバラになる。
【フレーク】塩水の表面にできる薄い板状の結晶。天日塩田の表面や平釜で低温加熱した塩水の表面にできやすい。粒の大きさは直径0.2~1センチメートル。こしきの塩「こしきの塩クリスタル」(鹿児島県)はサクサクとした特徴的。
【トレミー】中が空洞のピラミッド状の結晶。塩水の表面に浮かんだ結晶が、自重で少しずつ沈みながら成長したもの。粒の大きさは直径0.3~1センチメートル。株式会社高江洲製塩所の「Hamahiga Diamon Salt」(沖縄県)の直径は大きいもので1センチメートル近くあり、カリッとした食感が楽しい。
【球状】角のないボール状の結晶。塩湖の底に沈んだ立方体が塩水の中で結晶がゆっくり転がりながら成長するとできる。直径1ミリメートル未満の小さいものから、直径1センチメートルを超える大きなものもある。国内で該当する商品はない。
【パウダー】片栗粉のように細かい粉末状の結晶。海水を瞬間的に蒸発させることで得られる。日本独自の製法で製造されているのは、株式会社パラダイスプランの「宮古島の雪塩」(沖縄県)や株式会社ぬちまーすの「ぬちまーす」(沖縄県)、田上食品工業株式会社「宗谷の塩」(北海道)の3種類。
【顆粒】ペレット状に成形したもの。パウダー状の塩に少量の水を加えて練り、穴から押し出しながら温風を当てて乾燥させる。粒の大きさは直径1ミリメートル程度、長さは2~3ミリメートル程度のものが多い。パウダー状の塩「宮古島の雪塩」(株式会社パラダイスプラン・沖縄県)や「ぬちまーす」(株式会社ぬちまーす・沖縄県)にも顆粒タイプがある。
【粉砕】岩塩や大きく育った海水塩などの結晶を砕いたものや、塩を焼成した際に、にがりの液胞が膨張し破裂して細かくなったもの。不定形。粒の大きさはパウダー状の細かいものから直径4~5ミリメートルのミル用までさまざま。焼成することで結晶が細かくなった塩に、株式会社モクモクしお学舎の「やさしいお塩」(三重県)や、竈方塩づくり振興協議会の「竈方の塩」(三重県)などがある。
塩の結晶は形だけでなく、その大きさも片栗粉のように細かい粉末のものから、人が抱えきれない巨大なものまで千差万別です。よく「結晶が大きいから岩塩」というような話を耳にするのですが、結晶の大きさでは岩塩か海水塩かの種類を見分けることは不可能です。岩塩も砕けばパウダー状まで細かくなりますし、海水塩も低温でじっくり時間をかければ、大きな結晶に育てることが可能だからです。(つづく)
写真提供:青山志穂
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