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美しいくらし
昭和モダンの家を建てる 日本モダンガール協會 × 音楽史研究家
淺井カヨ × 郡 修彦
第6回 工務店選択の記⑦ 郡 修彦
 正確な測量図に基づき設計が行われ、この間に婚約者の出版への原稿が最終段階を迎えた事にて打ち合わせは少々後となり、年末の12月21日に3度目の打ち合わせが行われた。これにて設計は1月中に、検討と申請が2月、3月後半に旧居解体、4月着工との予定が組まれ、支払の説明を受ける。
 設計の途中段階から有料へと移行し以後は撤回の場合でも料金発生との説明を受け、納得の上での進行は折原女史が紹介の工務店とは天地の差であり、10万円の調査経費や、100万円の契約金を経験して来た我々には極めて良心的と感じられ、矢張り伝統のある工務店は応対や支払の形態が誠実且つ段階的で有り、発注者に不安を抱かせないと納得した。
 明けて2016年1月21日に4度目の打ち合わせ、設計図に基づき細部の検討に入るが、全てが納得の行くものとなり、和洋折衷の文化住宅が現実性を帯びて来た。

 当日の詳細は以下の通りである。
便所の便器は国産品に希望の品が無く、海外品を検討して輸入
便所の床はタイル張りとし、清掃用の排水溝は防水の点から設置せず
洗面所の洗面台は海外品を輸入
洗面台を西側壁面に設置、洗濯機は東側に配置し、夫々の給水栓の位置を決定
台所の流し台は段差無しの平台のタイル張りに人造石研出
台所窓は耐震構造のL字壁を北西面に設置の為に6尺から3尺に縮小
風呂場の浴槽はタイル張り、混合栓とシャワ-の位置を決定
プロパンガスのボイラーを設置して風呂場と台所に給湯
書庫は居間との境を引き違い襖とし、南側の入口を廃止
書庫の窓を引き違い硝子戸として、夏期の通気を確保
書斎はオーディオ用に1畳半を板張、防音上から東側の窓を壁面に変更
階段東側に窓を設置、耐震構造のL字壁を南東面に設置の為に南窓を半分に縮小
夫人室天井は斜線の都合上から9尺
外壁は南・西・北を下見板張り、東側は隣家との防火上モルタル
応接室屋根はS字瓦可能にて、見本にて検討
応接室出窓は写真資料にて検討


 次いで2月4日に5度目の打ち合わせ、当日の詳細は以下の通りである。
基礎の下には割栗石、猫土台は御影石、土台が檜、柱は松
白蟻用の防蟻剤はシックハウスを考慮して檜油
3寸5分の敷居内に木製硝子戸と網戸を設置し、外側を木製雨戸とする故に障子は無し(障子設置の場合はアルミの硝子戸・網戸・雨戸)
筋交いの都合上から洗面所南側と階段北側の壁は大壁仕様
夫人室の腰部分は1階屋根との兼合いから上端位置を4尺弱
風呂場天井は傾斜を付けず


 2月23日に6度目の打ち合わせ。
応接室屋根のS字瓦は見本により緑系
玄関叩きは豆砂利洗い出し
東側外壁はリシン
窓部分の網戸は夏期のみ使用につき嵌殺し式
硝子戸の意匠を指示
洗面台は国産の医療用として利便性と廉価を両立
契約の詳細を詰める


 3月3日に7度目の打ち合わせ、申請用の図面を検討する。
網戸の可動式と嵌殺し式の部分の確認
階段部分の手摺の形状を検討
応接間天井の廻り縁の意匠を決定
斜線の都合上から家屋の位置を若干東南に寄せる
換気扇・換気口・火災報知器の位置を決定

 3月18日に契約を行う。細部の打ち合わせを行い、以後は現場にての打ち合わせとなり、実際に工事開始後に決定したのは、霧除(庇)の形状、応接室屋根の裾部分の形状、玄関敷居の形状であった。なお、以下の2点は打ち合わせ段階で遺漏となりし部分であるも、結果としては完成した現状が最善と納得している。
 玄関の叩き位置は当時の建物と同様に地面から若干上部とし、角柱状の敷居の上に金属レールを設置して玄関戸を受ける様式を考えていたが、現在のベタ基礎工法では叩き部分を下げる(地面に近い)と強度上の問題が生じる事から、叩き部分を上げざるべからざる事となり、加えて角柱状の敷居は打ち合わせ不足から不可能となり、叩きの先端に金属レールを設置する事となった。
 また、階段は昭和50年の実家と同一角度として下部の書斎押入部分を十分に確保する計画なるも、現在では法律にて角度制限が有り押入天袋部分に若干の干渉が生じた事は残念であり、時代の変化を痛感した部分である。

 「家は3度建設する」との都市伝説的な表現があるも、もとより金持ちの戯言か建設業者の陰謀と端から馬耳東風の我々は、この1回に全力を傾注して理想に限りなく近い新居を建設し得たが、これには矢張り優秀な技術と見識の有る工務店が存在してこそ初めて為し得る事で有り、この連載を終わるに当たり来住野工務店に満腔の感謝を捧げる次第である。

 なお、後日談として折原女史より工務店との契約金の4分の1の返金は可能との連絡があり、25万円を回収し得て被害額は75万円に減少した。また、一定基準を満たし得る新居に交付される「すまい給付金」を希望するも、当局が基準とする高気密・高断熱、バリアフリーを満たさない稀有の住宅である為に不可能であった事を付記しておく。

※郡修彦さんのエッセイは今回で最後となります。なお、7月中旬更新予定の次回(最終回)は、連載全体をしめくくる“まとめ”として、「家を建てる際にお手本にした大正・昭和の家」をテーマにした淺井カヨさんのエッセイを掲載予定です。

【郡修彦東奔西走記】
http://blog.livedoor.jp/kohri0705/
【日本モダンガール協會の「週刊モガ」】
http://moderngirlkayo.blog.shinobi.jp

 結婚を機に、大正から昭和にかけて建てられた和洋折衷住宅の新築を計画した淺井カヨさんと郡修彦さんご夫婦。新居となる「小平新文化住宅」を昨秋完成させました。古きよき時代の家を現代によみがえらせた家づくり秘話を語る、日本モダンガール協會・淺井カヨさんのインタビュー「ようこそ、小平新文化住宅へ」はコチラをご覧ください。

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【あさい・かよ × こおり・はるひこ】
◆淺井カヨ◆大正65年(昭和51年)名古屋市生まれ。平成19年に日本モダンガール協會を設立。大正末期から昭和初期を生きた日本のモダンガールと、その時代の調査や研究、講演を行うだけでなく、ファッションから生活様式まで当時のスタイルを追求し実践する。著書に『モダンガールのスヽメ』(原書房)がある。
◆郡 修彦◆昭和37年東京都生まれ。音楽史研究家。拓殖大学大学院修了(修士)。作曲家・音楽評論家の故・森一也氏に師事。SPレコード時代の音楽史を一次資料の徹底した調査により解明し、CD解説書・新聞・雑誌・同人誌に発表。SPレコードの再生・復刻で世界最高水準の技量を有し、200枚以上を世に送り出した。企画・構成・復刻を手がけた『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』で文化庁芸術祭大賞を受賞。
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