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美しいくらし
昭和モダンの家を建てる 日本モダンガール協會 × 音楽史研究家
淺井カヨ × 郡 修彦
第4回 小平新文化住宅の全容紹介? 郡 修彦
◆外観

 外観も和洋折衷の文化住宅に相応しくするべく、最大限の配慮が為されており、膨大な数の文化住宅観察の結果として、家内と合議の上で決定したものである。
 先ず南西角に位置する応接室は独立した洋館風を目指し、屋根は光沢のS字瓦とした。当初は橙・煉瓦色系を考えていたが、現在では艶消ししか生産されておらず、文化住宅の洋館には光沢が相応しいとの判断から入手可能な青緑色とした。完成してみると壁面の薄クリーム色と良く調和し、和式部分との対比も宜しく橙・煉瓦色系よりも結果的に最適であったと実感している。
 壁面は全面モルタル仕上、下半分下見板の上半分モルタル、窓上部まで下見板の額部分漆喰等の様々な形態があり、実物を観察し完成予想図を作成して比較検討し、近代的な全面モルタル仕上とした。色は上品な薄クリーム色とし、窓は褐色として壁面との対比を際立たせている。当時は褐色の下見板に白色の窓も散見されたが、和室部分との対比から上記の仕様とした。

◆壁面

 南・西・北の和式部分の壁面は下見板鎧張であり、これは下見板の上端に次の板の下端が重なる張り方に押縁と称する押さえの縦棒を有する方式である。押縁の内側を下見板に合わせて削り完全な押さえとする簓子(ささらこ)下見板が希望であったが、予算の関係から押縁の内側を削らない簡略方式にて妥協した。但し居間西側の雨戸戸袋は簓子下見板としてあり、惚れ惚れとする出来である。
 書斎南側の雨戸戸袋も簓子下見板にて統一を希望したが、予算の関係から漆喰仕上として変化を持たせた。一時期までは簓子下見板は標準仕様であったが、時代の変化を痛感した出来事である。三方の下見板鎧張の上部(額部分)は漆喰仕上として当時の和式外壁と同一にしたが、比率が若干狭い様に感じられる点は否めない。
 玄関部分は格子の木製引き違い戸の上部を漆喰仕上とし、実用と装飾を兼ねた欄間を設け、上部に玄関灯を配して当時の雰囲気を再現してある。
 東側壁面は隣家との隣接により下見板仕上が不可能で、防火用にモルタル仕上としてあるが、黄土色系として下見板部分との調和を図っている。
 2階部分も東西南北1階に準じており、北西の出窓部分は周囲をモルタル仕上として和洋折衷に成功している。

◆屋根

 当時の和洋折衷住宅の屋根は瓦による入母屋屋根が圧倒的であったが、地震対策と予算の関係から金属板による切妻屋根とした。新文化住宅の優先順位は安全性第一・風情第二(利便性第三)故に、複数の地震経験者の助言にて屋根部分の軽量化を最優先とした。
 幸い屋根の位置と勾配から金属部分が殆ど見えないのも快適であり、安全性と風情を両立し得たと納得している。なお、当時でも関東大震災の経験から小田原等では新築の大半が金属板屋根で、瓦屋根が殆ど見られない傾向がある。

(写真提供:郡 修彦)
※次回(12月下旬更新予定)は淺井カヨさんのエッセイをお届けします。

【郡修彦東奔西走記】
http://blog.livedoor.jp/kohri0705/
【日本モダンガール協會の「週刊モガ」】
http://moderngirlkayo.blog.shinobi.jp

 結婚を機に、大正から昭和にかけて建てられた和洋折衷住宅の新築を計画した淺井カヨさんと郡修彦さんご夫婦。新居となる「小平新文化住宅」を2016年秋に完成させました。古きよき時代の家を現代によみがえらせた家づくり秘話を語る、日本モダンガール協會・淺井カヨさんのインタビュー「ようこそ、小平新文化住宅へ」はコチラをご覧ください。
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【あさい・かよ × こおり・はるひこ】
◆淺井カヨ◆大正65年(昭和51年)名古屋市生まれ。平成19年に日本モダンガール協會を設立。大正末期から昭和初期を生きた日本のモダンガールと、その時代の調査や研究、講演を行うだけでなく、ファッションから生活様式まで当時のスタイルを追求し実践する。著書に『モダンガールのスヽメ』(原書房)がある。
◆郡 修彦◆昭和37年東京都生まれ。音楽史研究家。拓殖大学大学院修了(修士)。作曲家・音楽評論家の故・森一也氏に師事。SPレコード時代の音楽史を一次資料の徹底した調査により解明し、CD解説書・新聞・雑誌・同人誌に発表。SPレコードの再生・復刻で世界最高水準の技量を有し、200枚以上を世に送り出した。企画・構成・復刻を手がけた『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』で文化庁芸術祭大賞を受賞。
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