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美しいくらし
昭和モダンの家を建てる 日本モダンガール協會 × 音楽史研究家
淺井カヨ × 郡 修彦
第6回 工務店選択の記① 郡 修彦
 小平新文化住宅の全容と各部屋の調度品に続いて、連載第6回では、家づくりには欠かせない「工務店選び」をテーマに郡修彦さんにつづってもらいます。新築といえば、大手ハウスメーカーによる画一的な家が一般的な現代。「大正末期から昭和初期までの家を新築する」という二人の願いを叶えてくれる工務店を、どのように見つけたのでしょうか?

 昭和50年に完成した西荻窪の実家は建売住宅故に本格指向の両親を満足させるに到らず、加えて老朽化が比較的早く進み、新築計画が始動したのは20年程を経た頃からであった。私も幾つかの私案を提出したが素人の机上論と一蹴され、本格建築に向けて両親が先ず行ったのは大工探しであり、木材の質が良好な東北の某地方の温泉常宿の主人から「第五・第六は数有るが第九なら」と紹介されたのが藤山工務店(仮名)であった。
 但し、設計は行わず建築家の設計による家を建築するとの分業式工務店であり、紹介の甘木先生(仮名)は偶然にも父の郷里の方にて、双方の信頼関係の下に無事に設計が完了し、半年以上の仮住まいを経て実家が完成したのは平成10年(1998年)半ばであった。この過程で小平にも住居を有しており、新築の際には是非とも発注をとの話になり、その旨を私も幾度か聞かされて来たが、正直なところ余り乗り気にはならなかった。

 平成19年(2007年)、都内の私立中学・高校の司書教諭として比較的安定した生活を送り始めた私に、両親が新居建設の話を勧めて来た。一定額の援助と無利子・無担保・無期限にて500万円を融資するとの条件で、設計は是非とも甘木先生をとの事であったが、当時独身で結婚は異星の出来事程に程遠かった私には新居建設が現実的な話とは言えなかった。それでも築57年の都営住宅の老朽化は著しく、早急とは言わねども可能ならば早く着工すべき課題でもあり、幾つかの私案を立てたが未来像が確定していない自分には絵物語に過ぎず、如何にすべきかの基本方針に懊悩(おうのう)した。

即ち
①生涯独身との大前提の下に独棲用の住宅を新築する。
②将来結婚を前提として家族用の住宅を新築する。
③伴侶を先に得て合議の下に家族用の住宅を新築する。

であり、家が人を呼ぶので②が正解との助言や、今まで独身(当時45歳)ならば奇跡を期待せずに①をとの現実的意見等に翻弄されながら、人生に希望を捨ててはならじと「丈夫天下の志、四十未だ家を成さず」(河野鉄兜)と③を基本方針として、五里霧中・暗中模索の遠大なる荊棘(けいきょく)の路へと踏み出したのである。
 結果は私の選択が正鵠を射た訳であり、現伴侶に逢着する迄の恋愛映画やドラマを遥かに凌駕する過程は紙面の都合で省略するが、求婚の後に新居建設に向けての具体的な活動が始まったのは平成27年(2015年)1月であった。先ずは検討を繰り返し内装・外装・仕様を全て決定してから工務店探しを開始した。

 甘木先生は実家での建築記を聴く限りでは、我々の仕様を忠実に設計するとは思えず、先ずは相談をと両親から言われるも、撤回の場合を考慮して丁重に辞退申し上げた。幸いにも援助と融資を盾にした「紐付き」では無く(友人知人に同様の条件で選択肢皆無の例有り)、特に父が我々の自由を尊重して呉れたので、先生の設計による「作品」を回避する事が出来たのは幸いであった。(つづく)

(写真提供:郡 修彦)

【郡修彦東奔西走記】
http://blog.livedoor.jp/kohri0705/
【日本モダンガール協會の「週刊モガ」】
http://moderngirlkayo.blog.shinobi.jp


 結婚を機に、大正から昭和にかけて建てられた和洋折衷住宅の新築を計画した淺井カヨさんと郡修彦さんご夫婦。新居となる「小平新文化住宅」を昨秋完成させました。古きよき時代の家を現代によみがえらせた家づくり秘話を語る、日本モダンガール協會・淺井カヨさんのインタビュー「ようこそ、小平新文化住宅へ」はコチラをご覧ください。
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【あさい・かよ × こおり・はるひこ】
◆淺井カヨ◆大正65年(昭和51年)名古屋市生まれ。平成19年に日本モダンガール協會を設立。大正末期から昭和初期を生きた日本のモダンガールと、その時代の調査や研究、講演を行うだけでなく、ファッションから生活様式まで当時のスタイルを追求し実践する。著書に『モダンガールのスヽメ』(原書房)がある。
◆郡 修彦◆昭和37年東京都生まれ。音楽史研究家。拓殖大学大学院修了(修士)。作曲家・音楽評論家の故・森一也氏に師事。SPレコード時代の音楽史を一次資料の徹底した調査により解明し、CD解説書・新聞・雑誌・同人誌に発表。SPレコードの再生・復刻で世界最高水準の技量を有し、200枚以上を世に送り出した。企画・構成・復刻を手がけた『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』で文化庁芸術祭大賞を受賞。
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