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ようこそ、小平新文化住宅へ 日本モダンガール協會
淺井カヨ
第1回 三角屋根の洋館が目印です
 「モダンガール(モガ)」とは、まだ女性の洋装が珍しかった大正末期から昭和初期に、流行のファッションや文化をいち早く取り入れ、新しい時代を謳歌した女性たちのこと。今でいうキャリアウーマンの先駆けともいえる日本のモダンガールとその時代を研究する淺井カヨさんは、その暮らしぶりが実にユニーク。ファッションだけでなく、黒電話や氷で冷やす冷蔵庫を日常的に使用するなど、当時の生活スタイルをそのまま取り入れて過ごしています。

大正から昭和にかけて建てられた和洋折衷住宅を再現した小平新文化住宅
 音楽史研究家の郡修彦さんとの結婚を機に、大正から昭和にかけて建てられた和洋折衷住宅の新築を計画した淺井さん。ついに、新居となる「小平新文化住宅」を昨年の秋に完成させました。それならば「お宅拝見!」とばかりに、淺井さんが暮らす小平市へ向かうことに。日本の古きよき時代の家を現代によみがえらせた家づくり秘話を、教えてもらいました。

――小平市内の閑静な住宅街に、その家がありました。和の趣を色濃く残した日本家屋に三角屋根の洋館を併設した木造2階建て。まるで映画『小さなおうち』に出てくるような昭和レトロな佇まいです。
 じりじりと容赦なく日差しが照りつける午後2時。玄関ブザーの丸いボタンを押すと、中から出迎えてくれたのは、ピンクのワンピースに真っ赤な釣鐘型の帽子がお似合いの淺井カヨさん! 帽子の下からのぞく断髪スタイルがとても魅力的なモダンガールです。

早速、淺井さんの案内で新居の中へとおじゃまします。木の温もりを感じながら向かった先は、2階にある淺井さんのお部屋。古い書籍やアンティークな雑貨たちがノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。それではインタビューを始めましょう。

――もともと、この場所にご主人の郡修彦さんが一人暮らしをしていた家があり、結婚を機に建て替えることにしたそうですね。

淺井 どんな家にするのかを二人で話し合って、大正から昭和にかけて建てられた和洋折衷の家を建てたいと意見が一致しました。私は昔のものがとにかく好き。大正から昭和初期の日本のモダンガールのファッションや当時の文化に憧れ、その時代の暮らしを実践しているほどです。主人も小さいころから古い建物に心惹かれて育ちました。そんな二人が思い描いた家とは、当然のように大正から昭和にかけて建てられた家だったのです。

――なるほど。二人が長年抱いていた憧れや理想を形にした夢の家だったのですね。ところで、玄関の表札に「小平新文化住宅」とありますが、そもそも文化住宅ってどのような家のことをいうのでしょう。 

2階の洋室には、アンティーク雑貨やモダンガールの洋服などが所狭しと飾られている。壁一面の本棚には年代を感じさせる書籍がびっしり
 
淺井 文化住宅とは、1920年代から1930年代にかけて建てられた一般向け住宅のことです。当時は欧米の文化が入ってきていますので、従来の日本家屋に洋風を取り入れた和洋折衷の家が都市部を中心にブームとなりました。
 機能性がかなり向上していて、たとえばそれ以前の家だと水回りが家の離れにあることが多かったのですが、文化住宅では家の中にお手洗いを設けた一体型になっています。外観は映画『となりのトトロ』のサツキとメイの家をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。住みやすさを追求した中流以上の住宅という位置づけでした。

――近代化の波を受けたサラリーマン向け住宅といった感じですね。それにしてもこの家にはテレビや電子レンジ、炊飯器もないようです。生活用品といえば、ひと昔前のものばかり。まるでタイムスリップしたかのような暮らしが淺井さんの日常なのですね。

淺井 私の部屋では、夏は基本的に扇風機、冬は火鉢と石油ストーブだけ。電話をかけるときは黒電話、音楽を聴くのは蓄音機です。食材を冷やすのは氷式冷蔵庫で、洗濯は、私は手洗いですが、主人は二層式洗濯機を使っています。庭に七輪出して魚を焼いたり、火鉢に鉄瓶を置いてお茶を沸かしたりするのも、私にとってはごく普通のことなのです。「そんな生活は不便じゃないですか?」とよく聞かれるのですが、料理にしても大正から昭和初期に発行された雑誌を見てつくるので電子レンジは必要ありません。当時の本には電子レンジを使った献立なんてありませんからね(笑)。けれど例外として、パソコンだけは持っています。全国の研究資料などを調べるときにどうしても必要です。

 当時のものを取り入れた暮らしにカルチャーショックを受けつつも、淺井さんが情熱を傾けた、大正から昭和にかけて建てられた家づくりへの興味は深まりばかり。第2回は新居建設の準備段階が明らかになります!

【日本モダンガール協會のホームページアドレス】http://mogakyokai.com/

(構成:狭間由恵、撮影:永田まさお)

【写真展のご案内】
「小平新文化住宅竣工記念 郡修彦・淺井カヨ寫眞展」

小平新文化住宅の着工から落成までを記録した写真を展示します。
日時:7月1日(土)~7月15日(土)
   19時ごろ~翌朝2時ごろ、火曜定休
会場:バー鳥渡(杉並区高円寺北2-4-8-2F)

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【あさい・かよ】
大正65年(昭和51年)名古屋市生まれ。2007年に日本モダンガール協會を設立。大正末期から昭和初期を生きた日本のモダンガールと、その時代の調査や研究、講演を行うだけでなく、ファッションから生活様式まで当時のスタイルを追求し実践する。2016年9月に大正から昭和にかけて建てられた洋館付き住宅「小平新文化住宅」が完成。同住宅を会場に蓄音器コンサートや講演会なども開催するほか、かつての古きよき時代にタイムスリップしたかのような自身の暮らしぶりも公開している。著書に『モダンガールのスヽメ』(原書房)がある。
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