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ようこそ、小平新文化住宅へ 日本モダンガール協會
淺井カヨ
第2回 今なお残る戦前の家をお手本に
 結婚を機に家を建て替えることにした淺井カヨさんとご主人の郡修彦さんは、大正から昭和にかけて建てられた和洋折衷住宅、いわゆる文化住宅をモデルにした新築を計画。家の外観だけでなく、内装や間取りも当時の仕様を忠実に再現する家づくりを目指します。しかし、その道のりは平坦ではありませんでした。


――大正から昭和にかけて建てられた和洋折衷住宅(文化住宅)といっても家のデザインは多彩です。建てるからには、家の外観や内装のイメージを決めなければなりません。昭和初期以前の家を平成に新築するというニーズが全くない状況で、現代の住宅情報誌やモデルハウスを見てもヒントにならなかったのではないでしょうか。

淺井 家の外観については、現存している文化住宅を見て回り、構想を固めていきました。昔の和洋折衷の家を探して歩くという地道な作業の繰り返しです。町歩きの要点は、怪しまれない程度に観察することと、空襲を受けていない地域を選ぶこと。都内ですと、JR中央本線の中野駅から三鷹駅周辺の住宅地をよく歩きました。かなりの軒数を探して歩いたのではないでしょうか。普段何げなく歩いているときや、地方の旅行先でも偶然に見つけることも多かったですね。

――旅行先でも当時の家を偶然見つけた(!?)。それはきっと、昔のものが大好きな淺井さんが家に引き寄せられたからですよ(笑)。話を戻しますが、家の外観については町歩きである程度の情報を得ることができたとしても、家の中はそうはいきません。

淺井 間取りや意匠、細かい仕様についても、実際の建物を見て回りました。私の著書『モダンガールのスヽメ』(原書房)にもあるように、昭和初期の別荘を改装した民宿や築100年の旅館を宿泊したり、昔の住宅を展示する博物館に出向いたり。知人に頂いた「よこはま洋館付き住宅を考える会」の冊子や報告事例も参考にしながら、天井や出窓、明り取りなどが家ごとにどのような仕様になっているのかを自分の目で見て研究し、新居にどう生かせるかを考えました。

 主人の郡も昔から古い建物が好きで、かなりの数の近代建築を見て歩いてきましたから、建物には詳しいです。彼は50代で、子どものころは友だちが文化住宅に住んでいたこともあって、当時の記憶も参考にしていると思います。

――それにしても、文化住宅を忠実に再現するという二人の熱意はホンモノ。建具の幅・高さから、金具やネジの種類に至るまで、家に関する仕様をすべて書き出し、一つ一つ詰めていく作業は想像以上に大変だったようです。二人の思いが詰まった新居ですから、中にはお互い絶対に譲れないところも当然出てくるのでは?

淺井 ①洋館付き住宅で和玄関である。②洋館は三角屋根で木製の出窓があり、母屋より張り出して別棟のように見える。③庭には大きな棕櫚(しゅろ)の木が3本生えている。これだけはなんとしても再現しようと決めて、私の意見を曲げませんでした(笑)。
 今振り返ると、「こんな家にしたいな」とイメージを膨らませていたときがいちばん楽しかったのかもしれません。文化住宅は基本的に一戸一戸が異なるものですから、当時の家を見るたびに驚きと発見があり、その魅力は尽きることはありませんでした。



 現在の住宅情報が参考にならないという状況の中、郡修彦さんと淺井カヨさん夫婦の地道な努力のかいあって、家の完成イメージを仕上げる段階までこぎ着けます。このまま順調に進むと思いきや、二人の前に新たな壁が立ちふさがります。そのお話は、また次回(第3回)。

【日本モダンガール協會のホームページアドレス】http://mogakyokai.com/

(構成:狭間由恵、撮影:永田まさお)

【写真展のご案内】
「小平新文化住宅竣工記念 郡修彦・淺井カヨ寫眞展」

小平新文化住宅の着工から落成までを記録した写真を展示します。
日時:7月1日(土)~7月15日(土)
   19時ごろ~翌朝2時ごろ、火曜定休
会場:バー鳥渡(杉並区高円寺北2-4-8-2F)


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【あさい・かよ】
大正65年(昭和51年)名古屋市生まれ。2007年に日本モダンガール協會を設立。大正末期から昭和初期を生きた日本のモダンガールと、その時代の調査や研究、講演を行うだけでなく、ファッションから生活様式まで当時のスタイルを追求し実践する。2016年9月に大正から昭和にかけて建てられた洋館付き住宅「小平新文化住宅」が完成。同住宅を会場に蓄音器コンサートや講演会なども開催するほか、かつての古きよき時代にタイムスリップしたかのような自身の暮らしぶりも公開している。著書に『モダンガールのスヽメ』(原書房)がある。
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