今年のゴールデンウイーク(GW)は、3年ぶりで緊急事態宣言でもまん延防止期間でもない大型連休となり、伊豆大島にも多くの観光客の皆さんがお見えになりました。
開業以来、新型コロナウイルスとともに過ごしてきた「Hav Cafe」。昨年のGWは臨時休業や入店の人数規制などを設けながらの営業だったため、今年はカフェにとって初めての集客ピークとなりました。
実際、GW中は連休初日から波浮港にもたくさんの観光客の姿がありました。前半はちょっとお天気が悪かったのですが、それでもカフェ前の昭和の面影を残す商店街には、散策や写真を撮るカップル、ご家族連れ、ひとり旅の方がひっきりなしに往来。話に聞くところでは、船と飛行機、宿やレンタカーなどは満室・満杯だったようで、「レンタカーが予約できなかったのでバスでまわっています」といった観光客の方もいらっしゃいました。おそるべしGW……。
通常、Hav Cafeは土曜日から火曜日の週4日営業ですが、今年のGWはそれに加えて6日間の特別営業をプラス。計10日間をワンオペレーションで決行しました。ワンオペでどこまでできるかチャレンジしたかったのと、GW中の観光客に対応する島内の飲食店数があきらかに足りないことがわかっていたからです。
特にHav Cafeのある南部地域は飲食店が絶対的に足りません。波浮港にもゲストハウスや1棟貸しのお宿が増え、食事を希望される宿泊者も増えています。そんな方たちのために、少しでも利便性あるおもてなしができればとの思いもありました。
結果として、期間中は想像以上に大勢の方がご来店。たっぷり多めに仕込んであったピザトーストや大島牛乳なども、最後は品切れ状態に。そして、私の体力も後半は息切れ状態に……。
大型連休の営業は初めてとはいえ、ワンオペの限界、来客数見込みの甘さなど多くの課題が残されました。今年の夏休みはコロナ前のようなレジャー客数が期待されるだけに、Hav Cafeとしても今後の対応策が必須。いろいろと思考する日々なのです。
観光客が戻ってくることは、伊豆大島に限らず日本の経済を回すことを考えればうれしいことです。半面、コロナ禍以前に戻るだけの現状にも疑問を感じています。なぜならコロナ禍によるさまざまな気づきは、薄利多売、今回のようなGWやお盆、年末年始といった繁忙期の一極集中といった観光産業が抱えてきた産業構造や収益構造を、変える機会でもあったはず。
遠出をせずに近場で楽しむマイクロツーリズムや、混雑する密を避けるためにピークシーズンを外した「ずらし旅」など、新型コロナウイルスの影響によって生まれた旅形態は、これまでの観光産業が取り組むべきジレンマの解消につながるものでもあります。この2年以上に及ぶ経験を活かさずに元に戻るだけでは、地方の活性や観光産業の未来につながらないと危惧しています。
GW中、Hav Cafeにはたくさんのお客さまがお越しいただいたものの、同時に多くのお客さまに満席のためお断りすることにもなりました。コーヒーを淹れ、調理で手いっぱいでお客さまとゆっくり会話する時間もありませんでした。これは私の望むおもてなしのスタイルではありません。
伊豆大島のゆったりとした空間と時間を心から楽しんでもらうこと。そのためにはどういう滞在を提供すべきなのか――。
多くを学び、課題を与えられたGWでした。(つづく)

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