今回は島での暮らしをリアルにご紹介しようと思います。
伊豆大島にはコンビニエンスストア、大型ドラッグストア、量販店はありません。買い物はもっぱら数軒ある地元スーパーか個人商店となります。店はそれぞれに個性があり、「魚を買うなら〇〇〇」、「総菜やお弁当がおいしいのは〇〇〇〇」と、島民は使い分けています。
ごく一般的な生鮮食品、日用雑貨、ドリンク類などは問題なく手に入りますが、たとえばイタリア製のブランドパスタやエスニックなアジアンスパイス、話題のスイーツといったこだわりの商品は都心のように豊富とはいえません。どうしても欲しいものはインターネットで取り寄せるのが島民の定石です。
そして、価格は高めです。大手スーパーのように量をさばくことができないうえ、すべての商品は船で海上輸送されるわけですからその分のコストが加算されます。缶ビールやペットボトルのドリンク類も都心より10~30円ほど高いでしょうか。
何よりも島に来て驚くのがガソリンの値段です。もともと都心よりも高かったのですが、コロナ禍やウクライナ戦争の影響などで現在、島内では1リットル190円をこえ、200円近くまでになっています。観光客の皆さんも、レンタカー返却時にガソリンスタンドで給油してその金額に驚愕しています。海上輸送コストがかかってくる特殊事情から高いのはわかりますが、車が不可欠の島ぐらしとしては非常に痛いところ。でも、周囲約50キロの小さな島です。長距離移動もなければスピードを出す高速道路もありません。島での最高速度はマックス40キロ。実に経済的にゆっくりと走ることになります。
うれしいのは「はい、これとってきたから食べて!」とご近所さんからのいただきものがとても多いこと。自家の畑で採れた旬の野菜や、ときには釣ってきたばかりの魚や貝、イカなどフレッシュな食材が連日のように我が家に届きます。
冬には大ぶりの大根、春になった今の時期は絹さや、ブロッコリー、そしてアシタバなどが。その合間にはタラの芽、フキノトウ。夏になるとびっきり新鮮なトマトやキュウリ、そして秋ともなれば原木シイタケや自然薯などなど。季節の恵み、島の恵み、そして島民の皆さんの気持ちに感謝するばかりです。
昔からこうやって島の人たちは、限られた島の環境の中で助け合い、食べつないできたのでしょう。今もその暮らしぶりがこの東京の島で継承されていることをうれしく思います。
そのうち私も、畑をやったり目の前の港で釣りをしたりと、自分で食材調達をしていこうかな、なんて考えたりもしていますが、今はご近所さんからいただく旬の味をありがたく楽しませてもらっています。
そうそう、こうした住環境の島民が最大級に喜ぶ本土からのお土産は何だかおわかりでしょうか?
それは、コンビニスイーツやハンバーガーやフライドチキンのようなファーストフードなんです。伊豆大島が舞台となったテレビドラマ『東京放置食堂』にも、本土帰りのお土産のファーストフードに大喜びする、というシーンがありましたが、まさにそれ。テレビコマーシャルで流れてくる新商品や期間限定メニューなどであれば、さらにうれしい。
飛行機なら25分、高速ジェット船なら1時間45分という距離だからこそ可能なまだ人肌に温かいハンバーガーは、どんな高級なスイーツよりも島民の心と舌を満足させてくれるのです。(つづく)
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