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美しいくらし
わたしの仕事道具 「職人醤油」代表
高橋万太郎
第8回 記憶のためのノート

イラスト:高尾斉



 醤油蔵めぐりを始めて13年、これまで日本各地400以上の蔵を訪ねました。ほぼ2カ月に一度、1日平均2~5蔵を1週間ほどかけて、というペース。ありのままの蔵と職人さんに出会いたいから、アポイントはとらず「見学させてください」と飛び込みます。

 蔵めぐりの必需品といえば、やはりこの取材ノート。これで46冊目です。職人さんたちの話を聞くときは、大きな木桶を見上げたり、逆にのぞき込んだり。だから、片手でしっかり支え持てて、なおかつズボンのポケットに入るよう、ちょっと小ぶりなB6サイズの大学ノートを愛用しています。罫線が細めのものが書きやすいので、ずっと同じメーカーの同じシリーズ。といいながら、話を聞いていると夢中になってしまい、気づくと罫線を無視して書いています(笑)

 最初のころは、「こんなことも知らないの?」と思われてもかまわないと思い、とにかく醤油造りの基本から根掘り葉掘り。必死でメモをとる姿を哀れに思ってか、職人さんたちは丁寧にいろいろなことを教えてくれました。そうして聞いた貴重な話を知識として蓄え、次の蔵に行く。すると「お、醤油のことをちょっと知っているな」と思っていただいて、もう少し詳しいことや独自のこだわりまで話してくれるようになる。その繰り返しで、ここまできました。まるで、「わらしべ長者」みたいでしょう。

 面白いのは、同じ製造工程なのに、造り手によって使う言葉や表現が違うこと。後からそのニュアンスまでしっかり思い出せるよう、漏らさず書きます。本当のことを言うと、極端に記憶力が悪いからなんですけれどね(笑)

(構成:白田敦子)

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【イラストレーター:高尾 斉(たかお・ひとし)】
1951年島根県生まれ。Web、PR誌、会員誌、雑誌等などのイラストやデザインを手がける。趣味はベランダガーデニング、下手なフットサル。
[ホームページ]http://hitpen.net/
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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