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アンチエイジングの教科書
東海大学特任教授
石井直明
第5回 生活習慣病と老化は同じもの!?㊦

「隠居細胞」が活性酸素を増加させる 


 老化した細胞は、分裂を止めます。
 そもそも、私たちヒトを含めた動物の細胞は、限られた回数しか分裂することができません。これはアメリカの解剖学研究者、レオナルド・ヘイフリック教授が発見したことから、「ヘイフリック限界」と呼ばれています。こうした分裂回数の限界は種によって異なり、ヒトの場合は約50回とされます。

 限界がきて分裂を停止した細胞を、「隠居細胞」(または老化細胞)といいます。
 近年、この隠居細胞から、炎症物質のインターロイキン6(IL6)などが分泌されていることがわかってきました。IL6などの炎症物質は、免疫機能を司るサイトカインと呼ばれるタンパク質の一種です。サイトカインは主に免疫細胞から分泌され、細胞間の情報伝達を担います。免疫細胞が、がんや病原体などの異物を認識するとサイトカインが放出され、体内に入り込んだ細菌やウイルスなどの病原体を攻撃するために活性酸素を増やします。サイトカインには、このように私たちの体を異物から守るう重要な役割があります。

 一方で、活性酸素の攻撃は無差別なので正常細胞も傷つけます。IL6が新型コロナウイルス感染症で重症化した人の体内にも大量にみられたことは、テレビの解説番組などでも紹介されましたから聞いたことがある人も多いでしょう。
 これは、ウイルスと戦うはずのサイトカインが制御不能となって細胞から放出され続ける「サイトカインストーム」という現象により、ウイルスに感染していない正常な細胞まで傷つけてしまう現象。詳細なメカニズムはまだ解明されていませんが、高齢者や基礎疾患のある人で起こりやすいとされることから、身体が健全であること、つまり細胞が健康であることがカギを握っていることは確かなようです。

活性酸素が正常な細胞を傷つけると、
眠っていた隠居細胞がサイトカインを分泌し、
がん細胞の発生につながる。
このような細胞の劣化サイクルが始まると、
老化が加速度的に進む


 病原体を死滅させて命を守るためには、正常細胞がある程度犠牲になることは仕方がありません。若ければ細胞がダメージを受けてもすぐに回復させることができます。しかし、すでに隠居細胞が増えてしまった人の体は、病原体がいなくても炎症物質が分泌されているために、体のあちらこちらで炎症が起こっています。体中に出回った活性酸素が細胞を傷つけているのです。

 例えば、血管の壁にコレステロールがたまると、活性酸素がコレステロールを酸化させてオキシステロールという有害物質に変え、炎症を悪化させて血栓をつくる要因になります。また、前述したように活性酸素がDNAを傷つければ、がん細胞の発生につながります。このようなサイクルが始まると細胞の老化は加速度的に進み、75歳くらいで、あるいは人によっては65歳くらいから急に老け込みます。

代謝を整える食習慣で抗酸化生活を


 では、どうすれば細胞の老化を先延ばしにできるのでしょうか。最も有効なことは、繰り返しお伝えしているように、なんといっても食事なのです。ビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどが含まれている抗酸化力の強い食品を積極的に食べ、タンパク質やミネラルなど必要な栄養素をバランスよく摂取すること。それが最善の生活習慣病予防であり、そのままアンチエンジングにつながります。

 でも、人間ドックなどの問診票で親の病歴を質問されるくらいだから、生活習慣病の発症は結局、遺伝的素因なのでは? そう思う人もいるでしょう。遺伝的な素因も影響しますが、自分の体質に合う食事を心がけることで体内環境が変わり、生活習慣病発症にかかわる遺伝子の働きにブレーキがかかります(第3回 アンチエイジングもゲノムの時代㊦を参照)
 また、生活習慣病は、突き詰めると代謝の乱れにほかなりません。糖尿病は糖代謝の異常、脂質異常症は脂質代謝の異常、高尿酸血症は尿酸代謝の異常であり、高血圧にも代謝が関わっています。皆さんもよくご存じのメタボリックシンドロームは、日本語に訳すと代謝症候群です。

 細胞を正常に保ち、いつまでも健康で若々しくあるためには、何度も繰り返すようですが、食生活とライフスタイルを見直し、抗酸化生活を心がけることが大切です。何よりも、毎日の食事があなたと家族の健康な未来を築くということを、忘れないでください。(つづく)

構成・天野敦子、イラスト・斉木恵子(シンプラス)
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【いしい・なおあき】
医学博士。1951年神奈川県生まれ。東海大学医学部教授を経て2018年より同大健康学部特任教授。専門は老化学、分子生物学、健康医科学。30年以上にわたり老化のメカニズムを研究し、世界で初めて老化と活性酸素の関係を解明。テレビや雑誌などでも幅広く活躍する。著書に『専門医がやさしく教える老化判定&アンチエイジング』『分子レベルで見る老化』『アンチエイジング読本』ほか。
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