「生徒に“カツ”を入れる先生が、自分自身に“カツ”を入れる場面とは?」をテーマにこれまで多方面で活躍する先生方にお話をうかがってきた『先生たちのちょいカツ!』も、ついに最終回を迎えました。今回登場するのはマナーコンサルタントの西出ひろ子先生です。「マナーで大事なのは、型でなく心です!」と話す西出先生に、講師人生における“カツ”について聞きました。指導に込められた熱い思いも明かされます!マナーへの情熱を原動力に

20代で独立して以来、仕事としてお金をいただいている以上はこの道のスペシャリストでなければならない、という意志を貫いてきました。そのためにもっとも注力してきたのが、まずは自分自身がマナーを実践・実行すること。自分の本で書いたことやセミナーで伝えていることを私自身がきちんとできているかを、絶えず意識しています。
本来、マナーとは日本語で“礼儀”ともいわれるように、
相手の立場に立って相手を思いやる気持ち(礼)を形で表現する(儀)こと。美しく見せる所作や堅苦しい形式といったたぐいが、マナーのすべてではありません。
たとえば生徒さんたちには
“先手必勝”を“先手必笑”にして、いい笑顔を心がけようと伝えています。初対面のあいさつは誰でも緊張するもの。そんなときに少しほほえみむだけで、相手の心を解きほぐして円滑な人間関係を築くことができます。このことをセミナーや研修などで常々語っているのですが、もしも講師である私がこの話の最中に無表情だったらどうでしょう? 生徒さんは納得してくれるわけがありませんよね。
どんなにつらいこと、苦しいこと、落ち込むことがあっても、ほほえみを絶やさないのがマナー。できていないのならば説得力はゼロ。マナーを語れるはずなんてありません。

マナー研修を行う西出さん
写真提供: 西出ひろ子さん
私は21歳のとき、マナー講師になろうと決意しました。きっかけは両親による泥沼の離婚問題です。自分勝手な言い分ばかりを繰り返す醜い争いを目の当たりにし、「もうこんな不幸な人たちをつくってはいけない!」という熱い思いが込み上げてきました。
人と人はなぜ衝突をするのか? 私に突きつけられた課題でもあるかのように必死に答えを探りました。そしてコミュニケーションに大切な“マナー”の存在にたどり着いたのです。さらに、相手の立場に立つことを大前提に考える本来の意味や、マナーが社会生活を維持するために欠かせないという意義にも気づかされました。相手を思いやるマナーの心があれば、いざこざのない穏やかな暮らしが実現できるはず。トラブルのない社会を目指して何がなんでもマナーを伝えていきたい! 私はマナーに秘められた大きな可能性に、将来の希望を見いだしたのです。
実はこれまでの講師人生で、自分に“カツ”を入れて壁を乗り越えたという自覚は正直ありません。
“カツ”を入れなくても、「マナーを伝えていきたい」という情熱が原動力になって、困難な局面でも私を前進させてくれたように思います。でも、あえて“カツ”を入れるとするなら、マナー講師に求められる姿勢かな。どういう状況下でも自分自身がマナーを実践・実行できているかどうか? 厳しく問いかける先は、いつも自分にあるからです。
カツナンバー渡辺美里『MY REVOLUTION』両親の離婚問題でゴタゴタしていた大学生当時の大ヒット曲で、帰省した田舎でもよく流れていた。「人が起こしたものに乗っかるのではなくて、革命を私が起こさなきゃ!」と自分を奮い立たせるときに聞く。
カツ語
写真提供: 西出ひろ子さん
マナーどんなときでもマナーの心を大切に!「私からマナーは外せません(笑)」
一生書生「死ぬまで学び続ける」というこの言葉は、講師人生の糧になっている。「先生という職業をしている人の中には、勘違いしている方いらっしゃるようで、上から目線になっている人が多いような気がしてなりません。人の模範にならないといけないわけですから、誰に何を言われようが謙虚さと感謝の気持ちを持って生きていくべきです」
【HIROKO MANNER Group】ホームページ
http://hirokorose.co.jp/取材を終えて 初対面でもすぐに打ち解けられそうな優しい笑顔で迎えてくれた西出ひろ子さんは、一つひとつの立ち居ふるまいが実にエレガント。登場するだけでその場が華やかになる人でした。今回たくさん聞いた話の中で、私にビビビッときたキーワードは“自信”。西出さんの高いプロ意識の背景に、自らの運命を切り開いてきたという確固たる自信をうかがい知ることができました。柔らかな表情の中にも凛とした芯の強さ。「誰がどうこうじゃない。自分がやるかやらないかです」。西出さんの熱いメッセージがいつまでも心に響きます。
(構成:狭間由恵)