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アンチエイジングの教科書
東海大学特任教授
石井直明
第8回 高年期のアンチエイジング㊦

健康寿命を妨げる因子とは


 では、具体的にどうなったらサルコペニア、フレイルと診断されるのでしょうか。
まず、サルコペニアは、①筋肉の減少、②筋力の低下、③身体機能の低下が診断のポイントになります。2016年に世界保健機関(WHO)がサルコペニアを正式な病名とし、治療が必要な疾患として認めました。日本では17年に国立長寿医療研究センターと、医療、介護や福祉、医学研究者などからなる日本サルコペニア・フレイル学会が診断などのガイドラインを発表しました。
 その基準を紹介しましょう。

1 筋肉の減少
 太腿の周囲長(太さ)が、男性は34センチメートル未満、女性は33センチメートル未満の場合、筋肉が減少している可能性が高い
*太腿の太さが以前とそれほど変わらなくても、筋肉が脂肪に置き換わってサルコペニアになっている場合があります。
2 筋力の低下
 握力が、男性は28キログラム未満、女性は18kg未満の場合、筋力が低下している可能性が高い(握力が18キログラムあるという目安は、ペットボトルのキャップが開けられる程度の力)
3 身体機能の低下
 イスから5回立ち上がるテストで12秒以上かかる場合、身体機能が低下している可能性がある。

 フレイルについては、サルコペニアのように統一された診断基準はありませんが、①体重減少、②主観的疲労感、③日常生活活動量の減少、④身体能力(歩行速度)の減弱、⑤筋力(握力)の低下が、判断のポイントになります。
 ①〜⑤の背景にあるのは、食が細くなる、腸からの栄養の吸収が悪くなる、細胞の機能の衰えから取り込んだ栄養をうまく使えなくなるという、食に関する老化現象が招く「低栄養」です。

太ももの筋肉量が減少すると運動機能に影響が出る



筋肉を減らさないための栄養管理を

 フレイルまでくると、自分も周囲も「衰えた」と気づきますが、サルコペニアは特に初期の場合、あまり自覚がないこともあります。「この歳なんだから、若いときよりも多少は衰えるのは年相応」なんて考えて油断していると、想像以上に筋肉量・筋力が低下し、実年齢よりも老化が進んでいたということになりかねません。
 知らず知らずのうちに歩行能力が低下し、ある日、転んで骨折、そのまま要介護に……という例も決して珍しくないのです。

サルコペニアからフレイルへの悪循環を避けるためにも、適切な栄養摂取と運動は不可欠

 サルコペニアやフレイルを防ぎ、筋肉量・筋力を保持して健康寿命を延ばすためには、良質なタンパク質とともにエネルギー(カロリー)も適切に摂取する栄養管理が大切です。

 タンパク質摂取の必要量は、成人の場合1・0〜1・2グラム/キログラムのところ、低栄養のリスクがある高年期の人の場合は1・2〜1・5グラム/キログラム。体重50キログラムの人なら、1日60〜75グラム摂る必要があります。高齢者は肉を食べよといわれますが、そのとおり。ちなみに、卵1個には6・8グラム、納豆1パックには6・6グラム、鶏ムネ肉4分の1枚には14.9グラム、鮭小1切には15.7グラムグラムのタンパク質が含まれています。

 高齢になれば、誰でも食べられる量が減ってきます。そうなったらもうダイエットからは無罪放免。筋肉を減らさないための食事と運動を心がけましょう。
 そして、いつまでも若々しいアクティブシニアを目指しましょう。(つづく)

構成・天野敦子、イラスト・斉木恵子(シンプラス)

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【いしい・なおあき】
医学博士。1951年神奈川県生まれ。東海大学医学部教授を経て2018年より同大健康学部特任教授。専門は老化学、分子生物学、健康医科学。30年以上にわたり老化のメカニズムを研究し、世界で初めて老化と活性酸素の関係を解明。テレビや雑誌などでも幅広く活躍する。著書に『専門医がやさしく教える老化判定&アンチエイジング』『分子レベルで見る老化』『アンチエイジング読本』ほか。
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