第4回 “若”の志を応援したい豆味噌の蔵㊦(南蔵商店・愛知県)
南蔵商店の“若”、青木良之さん
伝統的な製法で豆味噌を造る南蔵商店を初めて訪ねたとき、6代目の青木良之さんに「蔵を継ぐことは、いつ決めたのですか?」と質問しました。返ってきたのは「幼いころから蔵や味噌製造を見てきたので興味があったし、やりがいがあると感じていたので、ずっと継ぐつもりでいましたね」という答え。その言葉に迷いはありませんでした。続けて、「海外への視点も必要になってくると思うので留学もしましたし、そういう経験をさせてくれる両親に感謝しています」。
当時、24歳とは思えない落ち着いた口調。真っすぐ答えてくれた姿が印象的で、こういう志を持っている蔵の跡取りである“若”に、私ができることは何だろうかと、帰り道で胸が熱くなりました。
最も大切な仕込み作業、麹造りをする良之さん
そんな初めての出会いから2年後の2018年。私が年に1回主催している生産者と消費者を紡ぐイベント「醸すパーティー」の第2回目のゲストとして、良之さんに起こしいただくことになりました。
その当時は、イベントで大勢の前で話をするのはこれが初めてとのこと。ですが、それを全く感じさせず、豆味噌は大豆自体に麹菌をふりかけ、塊にしてから塩と一緒に仕込むことや、3年熟成するとチロシンといううま味成分であるアミノ酸が目でも確認できる味噌ができ上がることなど、豆味噌への熱い思いを語ってくれました。
良之さは「醸すパーティー」のゲストとして登場してくれた
イベントの最後にじゃんけん大会をしたのですが「じゃんけんぽーん!」「あれ?もしや?勝っちゃったよ!俺かー!!」と、見事、勝者になり、景品をゲットされたときの笑顔も、よき思い出です。
一人ひとりにお辞儀をしながらお礼を伝える姿を見て、「あふれる思いを持った蔵元さんの言葉が直接届いてほしい」と思いました。
商品の魅力や使い方を知っていただきたい、蔵元さんとお客さんが触れ合う機会は意外と少ないと知ったから、こういう機会をもっともっと増やしたい、私にできることは何でもやろう——。同世代のひたむきな想いに大きな刺激を受け、日本各地で奮闘する“若”たちに会うことも、私の味噌蔵めぐりの大きな楽しみになりました。(つづく)
◆岩木さんセレクトのイチオシ味噌とおススメレシピ◆
南蔵商店 「里の味 つぶ」
【種類】豆みそ
【味】全麹・塩分11%・中辛
【色】3年熟成・黒色
豆味噌は味噌の中でも酸味を感じやすいのですが、コク・うま味・酸味・苦みのバランスがとても良い一品。汁物にすると、コクやうま味がありながらもすっきりした味わいに。また、ホイコーローやマーボー豆腐などの豆板醤を使うレシピにとても合うので、いろいろとお試しいただきたいです。
おススメレシピ「豆味噌のホイコーロー」
【材料】(2人分)
ごま油小さじ2
豚バラ薄切り肉160g
酒小さじ1
片栗粉大さじ1
aごま油小さじ1
aおろしにんにく小さじ1
キャベツ200g
ピーマン1個
bみそ大さじ1
b砂糖小さじ1
b豆板醤小さじ1/2
b水大さじ1と1/2
【作り方】
1.キャベツは大きめにざく切り、ピーマンは乱切り
2.豚バラ薄切り肉は3cm角の正方形に切り重ね、10個の固まりにする。酒で下味を付けて片栗粉をまぶす。ボウルにbを合わせる
3.フライパンにごま油をひき熱し、2の豚肉を並べて中火で2分焼き色が付くように焼いて取り出す
4.フライパンをペーパーでふき、aを入れて火にかけ、よい香りがしたら、ピーマンを中火で1分程焼き、キャベツを加える
5.キャベツがしんなりしたら、3の豚肉とbを加えサッと炒める
(写真提供:岩木みさき)
★岩木みさきさんが味噌との出会いや奥深い魅力について語るインタビュー「今こそ伝えたい、味噌の力」もぜひお読みください。【実践料理研究家・岩木みさきのみそ探訪記】
http://misotan.jp