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食べるしあわせ
旅においしいビールあり! 一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会
コウゴアヤコ
最終回 3人の海外出身者が醸す“和の心”「京都醸造」

(写真提供:コウゴアヤコ)


 秋の深まりを感じるようになると京都が恋しくなる私です。寺社を彩る紅葉を愛でたり、丁寧に調理された秋の味覚を楽しんだり。ここ数年私のお気に入りは“京都クラフトビール醸造所めぐり”です。近年、歴史と伝統工芸が息づく京都にクラフトビールを造る醸造所が次々とオープン。市内だけでも9カ所(2020年10月現在)と、職人によるビール造りが根づきつつあるようです。

 今回ご紹介する京都醸造も2015年にできたばかり。創立したのは海外出身者の3人で、醸造を担当するのはアメリカ人のクリス・ヘインジさん、販売業務はイギリス人のベン・ファルクさん、経営全般を行うのはカナダ人のポール・スピードさん。それぞれが留学や仕事のため来日し、2005年に青森で出会って意気投合。いつしか国内外のクラフトビールを飲み歩く仲になったのだとか。

創業者の3人。左からポール・スピードさん、クリス・ヘインジさん、ベン・ファルクさん(写真提供:京都醸造)

 きっかけは、大学職員として京都に暮らすクリスさんが さまざまな伝統文化を受け継ぐ京都で「工芸品(クラフト)のようなビール造りをしたい」と一念発起したこと。ビール職人になるべく、アメリカの醸造学校と長野県にある志賀高原ビールで研鑽を積みます。そこへ別の仕事に就いていたベンさんとポールさんも引き寄せられるかのように加わり、京都醸造が誕生しました。

 新進気鋭の彼らが造るビールは、本場ベルギーの伝統に、クラフトビールの先駆者アメリカの手法を融合させた新しいスタイル。ベルギー産酵母による複雑な香りに、アメリカ産ホップを用いることで、柑橘系のさわやかな香りと苦みがプラスされ、絶妙なニュアンスを醸しています。
 型にはまらない自由な発想を取り入れたビールが、伝統を重んじる京都の街に受け入れられているのは、基礎から学んだ確かな技術と、繊細な和食にも合う調和のとれた味わいを兼ね備えているから。伝統と革新が一体となったビール造りに新しい可能性を感じます。

 さて、醸造所は東寺の南側、住宅や工場が並ぶ一角にあります。木材加工所だった建物を改装しただけあって、外観はシンプルですが、その無骨な雰囲気が魅力的。週末は1階の売店で、専用容器でのビールの量り売りや、ボトルビールやグッズを販売したり、外のスペースでは椅子に腰かけて出来たてのビールを楽しむ人の姿も見られたりと、気軽に立ち寄れるスポットになっています。現在は中止していますが、キッチンカーの出店もあり、観光で疲れた足を休めるのにもおすすめですよ。

キッチンカーでのフード販売も再開予定(ホームページやFacebookで要確認)(写真提供:京都醸造)

ユニークな商品名はクリスさんを中心にスタッフで話し合って決めている(写真提供:コウゴアヤコ)


 味だけでなく、注目してほしいのが商品名。消滅の危機にあったドイツの伝統製法を復元してつくった「時空を超えて」や、京都・与謝野町で収穫されたばかりの生ホップを使用した「与謝野へ里帰り」など、ストーリー性のあるネーミングが並びます。中でも看板商品の「一期一会」は、「すべての機会は一生に一度しかない。だから醸造のすべての段階にベストを尽くそう」という醸造所の理念から名づけたもの。商品名の一つひとつにも3人の思いが込められています。

 京都醸造のように全国各地には情熱あふれるビール職人が、日々おいしいビール造りに精を出しています。そんな人や味に出会うだけで、人生得した気分になるのは私だけではないはず!? ビールに会いに行くのもよし、お取り寄せでビールに会いに来てもらうのもよし。それぞれの形でクラフトビールの一期一会を楽しんでくださいね。(おわり)

…… ご当地ビールで旅気分 ……

\ コウゴさんおすすめ! お取り寄せ可能なビールを紹介 /


【商品名】一期一会
[原材料]大麦麦芽、ホップ[アルコール度数]6.0%
コメント:ドライな飲み口で、オレンジの皮をかじったかのようなフルーティーな苦みと、ベルギー酵母由来のスパイシーさが特長。ベルギーで農民が喉の渇きを癒すために飲まれていたものが起源とされる「セゾンスタイル」のビールです。
【味わいチャート】弱い☆1⇔強い☆5
甘味:☆☆
酸味:☆☆☆
苦味:☆☆☆☆
香り:☆☆☆☆
ボディ:☆☆☆
カラー:黄金色
【醸造所】京都醸造株式会社
京都市南区西九条高畠町25-1
[その他の銘柄]黒潮の如く、一意専心、太陽の恵み、毬男、地母神へのささげ など


「多くの人に旅とビールを好きになってもらいたい」と、地域性を生かした個性豊かなビールを、造り手たちの熱い思いとともに伝えてくれたコウゴアヤコさん。味をイメージしやすいように、銘柄ごとの「味わいチャート」もつくってくれました。そんなビール愛にあふれる「旅においしいビールあり!」は今回で最終回。この連載が、全国各地の醸造所やそこで造られるクラフトビールの魅力を広げるきっかけになりますように……。思い思いの旅を楽しみながら、あなたの”お気に入り”を探してみてはいかがでしょうか?(編集部)


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★コウゴさんの「旅ールのススメ」は情報誌「ドイツニュースダイジェスト」で連載中!
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【こうご・あやこ】
1978年東京都生まれ。ドイツビールにほれこみ1年半のドイツ暮らしを経験。旅とビールを組み合わせた「旅ール(たびーる)」をライフワークに世界中の醸造所や酒場を旅している。日本ビアジャーナリスト協会に所属し、雑誌・書籍を通じて国内外のさまざまなビール情報を発信するビアジャーナリストとして活動中。
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