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食べるしあわせ
旅においしいビールあり! 一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会
コウゴアヤコ
第1回 「旅―ル(たびーる)」はこうして始まった
 今や世界中で愛されているビールですが、日本各地にも趣向を凝らした醸造所があり、それを訪ねるユニークな旅のスタイルがあるのだとか。そこで、旅とビールを組み合わせた「旅―ル(たびーる)」を自身のライフワークにする日本ビアジャーナリスト協会のコウゴアヤコさんにインタビュー。その魅力について教えてもらいました。

(写真提供:コウゴアヤコ)


衝撃を受けたベルギーの旅
 旅とビールを結び付けて考え始めたのは、バックパッカーとして世界各国を巡っていたとき。その際立ち寄ったベルギーの首都ブリュッセルで、世界遺産の「グラン・プラス」を目の前にしてビールを飲んだのがきっかけです。文豪ヴィクトル・ユゴーが“世界で最も美しい広場”と賛嘆しただけあって、ゴシック建築の傑作といわれる市庁舎をはじめとする歴史的建造物に囲まれたグラン・プラスは圧巻のロケーション。こんな美しい景色を眺めながらビールが飲めるなんて! このとき私は「おいしい」を通り越して大きな感動を味わいました。と同時に、旅先で飲むビールの醍醐味も知ってしまったのです。それからというもの、行く先々でその土地ならではのビールを探すようになりました。

ベルギーの首都ブリュッセルにあるグラン・プラスでは、
世界中のビールファンが訪れるベルギービールウィークエンドが毎年開催される
(写真提供:コウゴアヤコ)


現場で味わうおいしさ
 帰国後もビールに夢中な私でしたが、ある日、おいしいビールが出店していると聞きつけ、渋谷の百貨店で開催されていた大阪物産展に友人らと出かけました。そこで出会ったのが、「箕面ビール」の大下正司前社長です。その場で試飲させてもらったのですが、私たちが「おいしい!」と連呼するのがうれしかったのか、「もっとええもん飲ませたるから一度大阪に来い」と自信満々に何度も声をかけていただいたのです。そこまで社長が言うのなら……と後日、醸造所がある大阪・箕面市を訪ねることにしました。

 箕面ビールは梅田駅から電車で約30分の住宅街にある、家族経営の小さな醸造所でした。まず案内されたのは、麦汁を煮る甘い香りとホカホカの湯気が立ち込めたビール工房。大手メーカーの生産工場とは違って、仕込みから発酵、熟成、充填、出荷に至るまですべて手作業で行っています。初めて訪れたビール造りの現場は、見るものすべてが新鮮。活気があって、ものづくりの臨場感にあふれていました。しかも、一つひとつ手間暇かけた仕事には職人さんたちの思いがぎっしり込められていたのです。

 驚いたのが、見学した後に飲んだビールの味でした。出来たてのフレッシュなおいしさは想像以上。しかも、ビールを醸したその土地の空気と一緒に飲む1杯、職人さんたちのこだわりを近くに感じて飲む1杯はどこか違う。ビールが造られた町で飲む1杯は、自宅やお店で飲むよりひと味もふた味も違うおいしさがあることに気づかされました。
 思い返すと、箕面ビールを訪ねたこの大阪旅行が旅とビールを結び付けた「旅―ル」の記念すべき第1回。今に至るライフワークに出会えたのですから、ビール目当てに大阪まで行った甲斐がありましたね。 

旅とビールの魅力を伝えたい
 さて、それから私の人生はというと……、ワーキングホリデーを活用してビール大国ドイツで暮らすことを選択し、再びヨーロッパへ。欧州のビールを求めて旅する「旅―ル」を続け、各国のビールを実際に見て学びました。1つの銘柄から知り得る情報は多く、醸造所がある町や村のこと、酸味、苦み、甘味といった味の違い、伝統的な製造方法など、話題は尽きません。ベルギーのグラン・プラスで毎年開かれるビールの祭典「ベルギービールウィークエンド」に参加したときは、ビールがその国の歴史や文化に通じていることを身をもって知りました。私は「旅―ル」を重ねるにつれ、ビールの奥深い世界にますます魅了されていったのです。

 今ではその経験を生かして、おいしさや楽しさだけでは終わらないビールの魅力を多くの人に伝えるべく、こうしてビアジャーナリストとして活動しているのですから、人生って不思議ですよね(笑)……。(つづく)
 

…… ご当地ビールで旅気分 ……

\ コウゴさんおすすめ! お取り寄せ可能なビールを紹介 /


【銘柄】箕面ビール スタウト
ビターチョコを連想させるこうばしい香りと、滑らかな口当たり。黒色の外観からは想像もつかないほど軽やかで、何杯でも飲みたくなる。国内外で多くの賞を獲得。世界中に多くのファンを持つ。

【醸造所】エイ.ジェイ.アイ.ビア株式会社 箕面ブリュワリー
大阪府箕面市牧落3-14-18
https://www.minoh-beer.jp/



 バックパッカーの経験や箕面ビールの見学が、「旅―ル」発想のカギになったコウゴさん。人生に大きな影響を与えたのは、ビールへの飽くなき探究心でした。ビールとの出会いは、新しい自分探しの旅だったのかもしれません。次回はビアジャーナリストとしてさまざまな情報を発信しているコウゴさんに、日本のビール事情について教えてもらうとともに、一世を風靡したあの地ビールブームを振り返ります。

(構成:狭間由恵)

【一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会】コチラ
★ドイツで配布される情報誌「ドイツニュースダイジェスト」で連載中の「旅ールのススメ」コチラ
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【こうご・あやこ】
1978年東京都生まれ。ドイツビールにほれこみ1年半のドイツ暮らしを経験。旅とビールを組み合わせた「旅ール(たびーる)」をライフワークに世界中の醸造所や酒場を旅している。日本ビアジャーナリスト協会に所属し、雑誌・書籍を通じて国内外のさまざまなビール情報を発信するビアジャーナリストとして活動中。
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