地方の温泉旅館や観光地で必ずといっていいほど見かける地ビール。その昔、一世を風靡した地ビールブームはもはや過去の話かと思いきや、最近はビール界に新たな潮流が生まれているそう。そんな日本のビール事情をビアジャーナリストのコウゴさんが解説してくれます。
クラフトビールの昔と今 1994年4月の酒税法の改正により、2000キロリットルだったビールの年間最低製造量が清酒と同じ60キロリットルに大幅に引き下げられました。これによって大手メーカーしか実現できなかったビール製造が、小規模なブルワリー(醸造所)でもできるようになりました。いわゆる「地ビール解禁」です。これを機に新規参入が相次ぎ、個性豊かな「地ビール」が全国で誕生したのです。
一時は一大旋風を巻き起こした地ビールブームですが、「おいしい」と評価される銘柄もあればそうでないものもあるなど、クオリティにバラつきがあり、残念ながらブームは衰退していきます。
それでもなお、ビール職人たちの情熱は消えることはありませんでした。品質の向上を目指し、ノウハウを磨くブルワリーは現在も数多く残っています。最近では新進気鋭の職人たちが次々と参入し、独自のレシピを追求。その結果、地域の特産物を使った斬新でユニークな新商品が登場するようになりました。技術の進歩と商品の充実ぶりは著しく、多くのビール愛好家たちから根強い支持を得ています。
こうして時代やニーズとともに変化を遂げてきた日本の「地ビール」は、職人が精魂込めてつくる工芸品であるというメッセージを込めて「クラフトビール」と呼ばれるようになりました。

ビール製造の様子(神奈川県・厚木市のサンクトガーレン有限会社)
以前は、ビール醸造に使える副原料がコーンやスターチ(でんぶん)などに限られていましたが、2018年4月の酒税法改正により、果実、野菜、ハーブ、香辛料、茶などの使用が認められるように。それ以外の原料を使用すると酒税法上「発泡酒」に分類されますが、発泡酒も職人が手がけたクラフトビールであることには変わりありません。副原料のバリエーションの拡大は、近年のバラエティーに富んだ商品づくりにつながっています。
ビールの種類は千差万別! クラフトビールの人気を支える秘密はなんといっても種類の多さでしょう。アメリカの醸造者組合がつくる「スタイルガイドライン」では、原料の違いや製造⽅法で分類すると約110以上のビアスタイルがあります。普段私たちが飲んでいる大手メーカーのビールは「ピルスナー」と呼ばれる、ほんの1スタイルにすぎません。
現在、全国各地にあるブルワリーは北海道から沖縄まで約400カ所。それらで造られる銘柄の総数はざっと2000以上に上るでしょう。しかも、この中のどれを取っても味、香り、コク、のどごしに至るまで1つとして同じものがありません。これこそがクラフトビールの大きな魅力。職人の知恵と技、これに副原料が加わることで、唯一無二の味わいになるのです。(つづく)
…… ご当地ビールで旅気分 ……
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【銘柄】サンクトガーレン ゴールデンエールクラフトビールの魅力にいち早く気づいた先代が、1993年にアメリカで開業。翌年の“地ビール解禁”の礎になった。同社はフルーツビールが有名だが、本格的製法のゴールデンエールは創業以来続く看板商品。華やかできれいな味わいが特徴。

【醸造所】サンクトガーレン有限会社神奈川県厚木市金田1137-1
https://www.sanktgallenbrewery.com/ 第3回は、「旅―ル(たびーる)」を計画するコツやポイントを紹介します。あなたに合った旅のプランや気になる醸造所を見つけてください。自宅でも旅気分を味わえる全国各地のクラフトビールも登場します。お楽しみに!(構成:狭間由恵)
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