日本酒派だった私が世界各地の醸造所巡りをするほど、大のビール好きになるきっかけになった銘柄。それが石川酒造の「多摩の恵 ペールエール」です。酒蔵見学に行ったはずが、併設のレストランで飲んだペールエールの華やかな香りと奥行きのある上品な味わいに、ひと口で虜になってしまいました。

樹齢400年の夫婦ケヤキ。その根元には米の神「大黒天」と、水を司る「弁財天」の祠がある。米と水の神様は酒造りのベストカップル(写真:コウゴアヤコ)
石川酒造は日本酒「多満自慢」で知られる老舗の酒造メーカーで、創業は1863年(文久3年)。東京都内に残る希少な酒蔵です。電車を利用すれば新宿から片道1時間ほどで、重厚な白壁に囲まれたお屋敷に到着します。その門をくぐればきっと多くの人が歓声を上げてしまうことでしょう。
「わー、江戸時代にタイムスリップしたみたい」って。
広い敷地には江戸時代末から明治時代に建てられた大小さまざまな建造物が点在。そのうち6つの土蔵は国の登録有形文化財にも指定されていて、日本酒やクラフトビールの醸造所、レストラン、史料館、直売店として利用されています。
石川酒造のビール醸造は明治時代にさかのぼります。1887年(明治20)年、「日本麦酒」(英文ラベルはJAPAN BEER)のブランド名で東京や横浜で販売していました。しかし当時は王冠の技術がなく瓶の破損も多かったことから、3年ほどで製造装置を売却することに。現在は、史料館に展示された明治期のビールレシピやラベル、庭に据えられたビール釜などから、その歴史を振り返ることができます。
そして最初の醸造から111年後の1998年に、念願だったビール造りを再開。「向蔵ビール工房」と呼ばれる1896年建造の土蔵の1階では、日本酒造りにも使われる地下天然水をぜいたくに使用したクラフトビールを製造しています。

明治時代のラベルなど貴重な展示物がある(写真:コウゴアヤコ)

1887年ごろに使用したビール釜
風情ある酒蔵を散策したあとは、土蔵を改装したレストラン「福生のビール小屋」へ。ここでは旬の食材を使ったイタリア料理や、地元で手作りされたソーセージなど、ビールに合うメニューが各種楽しめます。風が気持ちいい行楽シーズンは敷地内の庭でピクニックもおすすめです。セルフサービスの店「ぞうぐら」でお惣菜をテイクアウトし、出来たてのビールと日本酒を購入したら、樹齢700年を経たケヤキを目印に移動しましょう。庭にベンチとテーブルが設置されているので、木々のざわめきや熊川分水の小川のせせらぎを聞きながら、ゆったりとした時間が過ごせます。
今秋、歴史ロマンを感じるビール旅に出かけてみませんか?
写真提供:石川酒造株式会社
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【商品名】多摩の恵 ペールエール[原材料]大麦麦芽、ホップ[アルコール度数]5.5%コメント:麦芽のカラメルのようなこうばしさと、ホップのさわやかな苦みが好バランス。ペールエールのお手本のようなビールです。
【味わいチャート】弱い☆1⇔強い☆5
甘味:☆☆☆
酸味:☆
苦味:☆☆☆
香り:☆☆☆☆
ボディ:☆☆☆
カラー:薄茶色
■【醸造所】石川酒造株式会社東京都福生市熊川1番地
【定休】火曜
[その他の銘柄]多摩の恵 ピルスナー、多摩の恵 デュンケル、TOKYO BLUES セッションエール、TOKYO BLUES ゴールデンエール、TOKYO BLUES シングルホップウィート
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【一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会】は
コチラ★コウゴさんの
「旅ールのススメ」は情報誌「ドイツニュースダイジェスト」で連載中!