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にっぽん味噌蔵めぐり
実践料理研究家・みそ探訪家
岩木みさき
第3回 木桶で白味噌を造る唯一の蔵㊦(片山商店・京都府)

米を蒸す釜を見せてくれた片山宏司さん

 京都駅からJR山陰本線(嵯峨野線)で約30分、最寄り駅の並河駅から歩いて10分ほどの片山商店に着くと、事務所に案内され、温かいお茶を出していただきました。
 料理撮影など、慣れている仕事とは全く違う状況で、打ち合わせでもない初顔合わせ。緊張しながら、味噌についてはまだ勉強し始めたばかりであること、木桶仕込みの味噌が全国で希少なことを知り、その中でも白味噌はより珍しいようなので知りたいと、一生懸命伝えました。聞いてくれた片山宏司専務の「熱い想いをお持ちなんですね」と返してくれた笑顔に、緊張がほぐれました。

京丹味噌に使う米麹にも特別に触れさせてもらった

 片山商店の最大の特徴は、日本で唯一、木桶を使用した白味噌を造っていることです。白味噌は通常でも色が付きやすく製造過程に気を使うのですが、木桶だとより色が付きやすくなるため、大豆の加熱具合や保存時の温度管理などがいっそう難しく、まさに職人の技が必要なのです。
 製造現場の見学では、米麹を中心に説明していただきました。おいしい味噌を造るためには、麹が原料を分解するための酵素の力がとても重要です。片山さんの米麹造りは、お米を良い状態のまま使用できるように自社で精米し、甘みが増すように通常よりもお米に多く磨きをかけ、すぐに使用します。特にこだわりのある味噌を造るときは、昔ながらの道具「もろ蓋」を使用しています。

店から車で数分の貯蔵庫

大きな木桶と対面


 車で数分の貯蔵庫も案内してもらいました。169cmの自分の背丈よりも大きな木桶と対面し、その存在感に「わっ」と気持ちを奪われました。正直なところ当時はまだ、もろ蓋や木桶などの価値はよくわかっていなかったのだと思いますが、とにかく何かを感じたのです。吸い寄せられるように両手で木桶に触れ、思わず「はじめまして、こんにちは。お邪魔します」と話しかけたことだけはよく覚えています。目には見えない何かに、あいさつをしていました。

 味見させてもらった白味噌は、白あんのようになめらかで、きなこのような風味とバターを思わせるコクがあり「これが味噌?!」と衝撃を受けました。とにかくおいしかったのです。
 片山商店では現在、5種類の白味噌をベースに、20種類の白味噌を造り分けているそうです。白味噌文化の京都では、さまざまな店で白味噌が使われているので、店ごとの要望に合わせて造っているうちに種類が多くなっていったのだとか。白味噌と同じくきめ細やかに対応してくれる片山さんの人柄に、京都の料理人も皆、ファンになってしまうのだと思います。

 こうして緊張の中にも多くを学んだ片山商店の訪問。見学して話を聞き、味噌についてますますわからないことが増えました。白味噌がおいしかったのはもちろんですが、味噌の活用の可能性や木桶の存在感、知らないことを知ること、新しい出会いから世界が広がる可能性に、興奮は冷めやらず。
「もっと、もっと、知りたい・・・!」
 そんな思いを抱えて夜行バスに乗り、まるで一瞬のように気づくと東京に着いたのでした。(つづく)

◆岩木さんセレクトのイチオシ味噌とおススメレシピ◆


片山商店
 

ガチみそ・白」


【種類】米みそ
【味】麹歩合20歩・塩分5%・甘
【色】1カ月熟成・白色
木桶の中でも中央部に位置する色が美しくなめらかな「トロ味噌」と呼ばれる希少な部分を商品化。トーストにバター代わりにぬってもおいしい。今回は、白味噌レシピの中でも特に気に入っているものを紹介。ココナッツミルク不使用でも、白味噌のコクと甘みで、ちゃんとグリーンカレーになる! 不思議な体験をぜひ。

おススメレシピ

「白味噌グリーンカレー」



【材料】(2人分)
ナス1本、パプリカ赤黄各1/8本 ※オリーブオイル大さじ1で炒める
鶏もも肉120g、玉ねぎ1/4個 ※オリーブオイル大さじ1/2で炒め、酒大さじ1を加える
a=牛乳300ml、にんにく1かけ、しょうが1かけ、青唐辛子2本、バジルの葉10枚、白みそ大さじ6
飾り用のバジル

【作り方】
1. ナスとパプリカは乱切り、玉ねぎは1cmのくし切り、鶏肉はひと口大に切る
2. ミキサーにaを入れ30秒ほど攪拌する
3. 鍋にオリーブオイルをひき、ナスとパプリカに焼き色が付くよう中火で2〜3分焼いて取り出す
4. オリーブオイルを引き直し、玉ねぎと鶏肉を中火で1〜2分焼き、軽く炒める
5. 2を加え中火で3分煮たら、3の野菜を加えとろみが付くまで弱火で5分煮る
6. 器にごはんと一緒に盛り、バジルを飾る

【ポイント】
・白みその甘味とコクで、煮ると自然にとろみが付く
・野菜は煮るだけだと退色しやすいので先に焼く
・鶏肉と玉ねぎも炒めてから煮ることでうま味が増す
・弱火でコトコト煮ると青く若い味が和らぎ、全体がなじんでおいしく仕上がる
※辛いのが苦手な方は、青唐辛子を1/2~1本程度に減らして作ってみてください

(写真提供:岩木みさき)

★岩木みさきさんが味噌との出会いや奥深い魅力について語るインタビュー「今こそ伝えたい、味噌の力」もぜひお読みください。

【実践料理研究家・岩木みさきのみそ探訪記】http://misotan.jp
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【いわき・みさき】
1988年神奈川県生まれ。10代のころに摂食障害や肌荒れに悩んだ経験から、食の大切さを実感して料理の道へ。病院栄養士として3年間勤務したのち、2012年に実践料理家として独立。その後、日本の伝統調味料である味噌に魅せられ、4年で日本各地60カ所以上の味噌蔵探訪を続け、その成果をWEBサイトやレシピ、イベントなどを通じて発信している。
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