第3回 木桶で白味噌を造る唯一の蔵㊥(片山商店・京都府)
いざ、味噌蔵へ!
私が日本各地の味噌蔵をめぐるために選んだ交通手段は、夜行バスでした。「大変じゃない?」とよく聞かれますが、そうですね、大変です(笑)。でも、夜行バスを利用すれば、宿泊代も浮くし、到着したら早朝から動けるし、帰りは夜まで時間が使えるし、一般の公共機関に比べ3分の1程度の金額で往復できるので、自費で動く私にとってはメリットのほうが多くありました。
夜行バスで約7時間、平日なら東京から往復4000円ほどで、あの京都にも行くことができます。寝て起きたら京都だなんて、タイムスリップしたみたいでワクワクしませんか?
忘れられない出会いとなった片山商店の京丹味噌
味噌について調べ始めたころ、知っている味噌を書き出した中にあった「西京味噌」というワード。蔵元を尋ねてみようと思い立ったものの、まだ旅行慣れしていなかった私は、まず学生時代に修学旅行で行ったことのある京都を候補に挙げることに。
最初に電話をしたのが、西京味噌の代表格・石野味噌でした。
「木桶で白味噌を造るのはとても難しいのでは。うちは木桶仕込みではないけど、亀岡にある蔵が木桶を使っていたかも……ちょっと確認して連絡しますよ」
会ったこともないし、何ひとつ実績もなかったのに、そう対応してくれたのが、のちにお世話になる社長の石野元彦さん。そして、ほどなくして1本の電話がかかってきて、片山商店につないでいただくことができました。
片山秋雄さん(左)宏司さん親子
片山秋雄さんは京都府優秀技能章を受章
京都府亀岡市にある「片山商店」は、昭和34年創業の味噌蔵です。
創業者の片山秋雄さんは、全国の名産品とそれを生み出す名人たちをリポートするNHKの番組「ごちそう賛歌」でも紹介された白味噌造りの達人です。福井県の中学校を卒業後、京都市内の味噌屋で修行。佳水の地、京都の丹波・亀岡市で30歳の時に独立し、京丹味噌醸造元「片山商店」を創業しました。片山さんが独自の伝統技法で造った米麹をたっぷり加えて木桶でじっくり熟成させ、うまみとまろやかさを引き出した極上の白味噌が、京丹味噌。店舗には数多くの表彰状やトロフィーが飾られ、その中には片山さんが平成25年の京都府「現代の名工」受賞のものもあります。
のちに、深いお付き合いになっていく片山宏司専務は2代目。電話をすると「岩木さん、おおきに!!」との第一声から会話が始まり、いつも心が和みます。(つづく)
◆◆片山商店(京丹味噌醸造元)/京丹波 六右ヱ門(店舗)◆◆
〒621-0013 京都府 亀岡市大井町並河3-8-11
TEL:0771-23-6665 FAX:0771-22-6977
http://www.kyotanmiso.jp/ 昭和34(1959)年創業。清らかな水と緑豊かな味噌醸造に適した京都丹波で、大量生産体制では実現しえない豊かな味わいの京丹味噌を造っている。伝統技法を踏襲しながらも、独自の工夫で大豆をふっくらと蒸煮し、杉室造りの板麹製法といった独特の製法で独自の伝統技法でできた極上の米麹をたっぷり加え、じっくりと天然木樽熟成させて、うまみとまろやかさを引き出す。
(写真提供:岩木みさき)
★岩木みさきさんが味噌との出会いや奥深い魅力について語るインタビュー「今こそ伝えたい、味噌の力」もぜひお読みください。【実践料理研究家・岩木みさきのみそ探訪記】
http://misotan.jp