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美しいくらし
フランスの小さな村を旅する 写真と文
木蓮
第10回 バラが咲く清流の村【ヴール・レ・ローズ】


 「あの植物はいったい何だろう?」。そう思って川をのぞき込む私に、「何が見えるの?」とでも言いいたげに、鴨までこちらをのぞき込んできました。フランスで最も短い川(1149メートル)として有名なヴール川。清流には野生の虹鱒が泳いでいる姿が見え、川辺にぎっしり生えている植物は、14世紀から栽培されているこの村の特産であるクレソン。川に沿って作られた「フランスで最も小さな川岸の散歩道」は季節ごとの花に囲まれ、周囲の景色を眺めながらの散歩は、この村の魅力を堪能する楽しみの一つです。

 ノルマンディーにある多くの街や村の名前は、イギリスの街の名前と同じだったりすることがたびたびありますが、「川」に由来するものも多く、この村の名前である「Veules les Roses(ヴール・レ・ローズ)」の「Veules」は、古代英語である「wella」、すなわち近代の「well(井戸)」に由来しています。それだけ美しい川が流れているということがこの村の特徴ですが、村の名前に「バラ」がつくため、「バラが咲く清流の村」としてなんともロマンチックなイメージに……。毎年6月には「La Rose en Fête(バラ祭)」も開かれています。
 パリから車で2時間半ほどで遊びに来られる海岸は、19世紀には文豪ヴィクトル・ユゴーなどの著名人が集まるビーチとして有名になりました。怪盗ルパン・シリーズ『奇岩城』の舞台として有名なエトルタもここから約1時間。石灰質の崖が続く白い沿岸はノルマンディーならでは。ここから眺める夕日は絶景です。良質なヴール産の牡蠣も有名なので、ぜひ味わって!

 第二次世界大戦の際には、ノルマンディー上陸作戦によって沿岸地帯は目も当てられない惨状となりましたが、ヴール・レ・ローズは奇跡的に被害をあまり受けず、この地方独特のコロンバージュ(木骨造)、かやぶき屋根の民家が今でも残っていて、格好の撮影スポットとなっています。それにしても、ここまで川と村が一体になっている場所も珍しく、朝霧が出る季節もまたお勧めです。


 初めてこの村を訪れた際は、あまり村のことを知らずに散策していましたが、予想以上に立派な邸宅が多く、どの庭にも多くのバラが植えられていました。アーチが幾重にも重なっているバラの家はとにかく圧巻。ただ、私はこのときに初めて目にした自動芝刈り機にくぎ付け。その後、フランスの多くの庭で目にすることになりますが、大きな庭を管理する大変さをあらためて知りました。


 12世紀に建立、16世紀に改修されたサン・マルタン教会は、かまぼこ型の美しい天井を持つ教会。まるで学校のような雰囲気で、前面にテーブルがあり、イスのところにはネームプレートがはまっていました。教会の周りには小さなビストロがいくつかありますが、少し歩いておしゃれなサロン・ド・テへ。美しい布が吊り下げられているプチホテルも印象的。
 まだまだ知られていない小さな村ヴール・レ・ローズは、こっそりと再訪したい美しい村でした。(つづく)



★ParisからVeules-les-Rosesへの行き方
St Lazare駅から特急列車でRouen-Rive-Droite駅まで約1時間15分。列車を乗り換えDieppe駅まで約50分。そこから61番のバスに乗り約55分。乗換時間などを考慮して合計5時間。


★木蓮さんのブログ【フランス小さな村を旅してみよう!】
http://ameblo.jp/petit-village-france/

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【もくれん】
フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュ地方の人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。いきなり2人のフランス人娘の母親になり悪戦苦闘だったが、生来の自由気ままな性格と、さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、「フランスの小さな村宣伝大使」を自負し、訪ねた村々をブログで紹介している。花にあふれる美しい村の魅力を伝えるブログは、日本でも多くのファンがいる。
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