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美しいくらし
フランスの小さな村を旅する 写真と文
木蓮
第9回 まぶたの奥に残るゼラニウムの赤【ロシュフォール・アン・テール】


 「Cité du Géranium(ゼラニウムの町)」という可愛らしい愛称で呼ばれるロシュフォール・アン・テール。村には花があふれ返り、その名に思わず納得する美しさです。古くはローマ軍によって征服されていたブルターニュ地方は、ブルターニュ公国となってからもイギリスとフランスの間に挟まれ、常に戦略的重要地となっていた歴史があります。そのため、フランスでありながらもイギリスの面影を残し、鈍色の雲に覆われた暗い建物が多い。そんなイメージを勝手に持っていました。
 ですが、青空に包まれたこの村の美しいこと! 私が訪れた日は晴天で、華やかなゼラニウムの赤が今でもまぶたの奥に焼きついています。

 この村がなぜ「ゼラニウムの町」と呼ばれているか、その秘密は20世紀の初め、あるアメリカ人男性がこの村を訪れたところから物語が始まります。彼の名は、アルフレッド・クロッツ。画家である彼は、この美しい村を見てひと目で恋に落ち、丘の上から村を見守るように建つ12世紀の廃城を購入し美しい城へと変貌させました。

 しかし、クロッツが届けた贈り物はそれだけではありません。「この村を世界でいちばん美しい村にしよう!」。そう決心し、住民のために1911年に「花のコンクール」を開催、最も美しく彩ったバルコニーに25フランの賞金を出すアイデアを考えました。しかも、ゼラニウムの愛好家だった彼は、すべての住民が自宅に花を飾れるよう必要な花を贈ったのだそうです。その話をフランスのテレビ番組「Le Village préféré des Français(フランス人が好きな村)2016」で聞いたときは感動しました。
 フランスの地方自治体を対象にした「花の町と村コンクール」で4つ花のラベルを持つ村ではありますが、この村にとって「花」は、ずっと昔から当たり前のように暮らしの中に存在し、「ゼラニウム」は文化の一つとして息づいているのです。

 雨が比較的多いといわれるこの地域では、雨を流れ落ちやすくする「Coyau(コヨー)」と呼ばれる独特なスタイルで屋根が造られ、外壁にはこの地域でよく採れる結晶片岩や花崗岩が使われています。そんな美しい建物に囲まれ多くの観光客でにぎわう広場「Place du Puits」には、1544年創業のヨーロッパで最も歴史ある「カフェ・ブルトン」があり、クイニー・アマンの甘い香りが周囲を包んでいました。

 ちなみに、調べてみると意外にもブルターニュ地方の降水量はマルセイユよりほんの少し多いだけ。ブルターニュ半島の西端に位置するブレストのみ特別に雨が多いようです。
「もうね、嫌になっちゃうの! 雨が多いのはこの辺じゃなくてブレストの辺り! なのに、みんなが雨、雨、って言うのよ」。その日お世話になったシャンブル・ドットのマダムが、なみなみとグラスについだシードルを片手に、ため息をついていました。(つづく)


★ParisからRochefort-en-Terreへの行き方
Montparnasse駅からRedon駅まで約2時間15分(直通かRennes駅で乗り換え)。Redon(Parc Anger)のバス乗り場からRochefort-en-Terre(Saint Roche)まで約1時間。乗換時間などを考慮して合計約4時間。


★木蓮さんのブログ【フランス小さな村を旅してみよう!】
http://ameblo.jp/petit-village-france/

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【もくれん】
フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュ地方の人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。いきなり2人のフランス人娘の母親になり悪戦苦闘だったが、生来の自由気ままな性格と、さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、「フランスの小さな村宣伝大使」を自負し、訪ねた村々をブログで紹介している。花にあふれる美しい村の魅力を伝えるブログは、日本でも多くのファンがいる。
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