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美しいくらし
フランスの小さな村を旅する 写真と文
木蓮
第5回 白い大地が輝く神秘的な瞬間【ゲランド】


 「来てよかった……」。思わずため息が漏れるほど、神秘的なゲランド塩田の朝焼け。
 ボルドーから北へ向かう旅の途中、地図とにらめっこしながら悩んだ揚げ句、「起きられたら見に行こう」と、早めの就寝を試みた私。次の朝、気がつけば今にも昇り始めそうな太陽と追いかけっこしながら、ゲランドから隣町のル・クロワジック間に無数に広がる網目状の道に車を走らせていました。

 わずか10分ほど走ったころだったでしょうか。「あの白い塊は、もしかして……」。道路沿いにチラチラ見える塩田は、まるで水田のよう。なんとなく日本の原風景を思い出させます。水面はまだ夜明け前でほの暗く、白い小さな塩の山ばかりが目の端に入ってきました。
 ブルターニュ地方の言語であるブルトン語でGwenrann(グエン・ラン)。その地名の意味は「白い大地(国)」と聞くけれど、言葉どおり大地には白い花が咲いていました。


 塩田をじっくり見るのは後にして、とりあえずル・クロワジックの近くまで行き、空がオレンジ色に輝き始めた瞬間を楽しむことに……。道路脇の民家のそばにまで塩田があることにびっくりしたけれど、どこを走っても「オイエ」と呼ばれる塩の採取が行われる小さな四角い升目が連なる景色に、南のカマルグ塩田の華やかな印象とは別のどこかうら寂しい美しさを感じたのでした。


 塩の採取は6月半ばから9月半ばまでが基本で、私が訪れたのは9月初旬。まだ明けたばかりの朝陽の中、遠くでパリュディエと呼ばれる塩職人たちが塩を収穫している姿を見かけました。そっと道端からのぞき込むと、オイエの周りのあぜ道に、塩湿地に生育するサリコーヌが赤く色づいています。日本ではアッケシソウと呼ばれますが、この地方ではニンニクやパセリと一緒にソテーにしたり、ハーブと一緒に酢漬けにして食べるのだそう。

赤く色づくサリコーヌ


 ゲランドの辺りは天日塩を作ることができる北限ともいわれており、太陽の力で海水の水分を蒸発させて作る塩のうま味はミネラル分たっぷり。わが家ではパスタを湯がくときはゲランドの塩、と決めているほど味に深みが生まれます。

 美しい塩田に別れを告げゲランドの古い街並みに戻ると、14世紀に建造が始まった外壁が約1300メートルに渡って街を取り囲み、見る者を圧倒します。サン・トーバン参事会教会の美しいステンドグラスを眺めながら外に出ると、モニュメントの中に、先ほど見かけた塩職人の姿も見えました。街中には塩だけでなく、塩を使ったキャラメルやクレープのお店がずらり。
 塩の街ゲランド。次回に訪れる際は気球に乗り、空の上からこの美しい塩田を眺めてみたいと思います。(つづく)

★ParisからGérandeへの行き方
Montparnasse駅からTGVでSt-Nazaire駅まで約2時間50分。2番のバスに乗り換えAthanor(Gérande)まで約25分。乗換時間などを考慮して合計約3時間40分。

★木蓮さんのブログ【フランス小さな村を旅してみよう!】
http://ameblo.jp/petit-village-france/

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【もくれん】
フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュ地方の人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。いきなり2人のフランス人娘の母親になり悪戦苦闘だったが、生来の自由気ままな性格と、さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、「フランスの小さな村宣伝大使」を自負し、訪ねた村々をブログで紹介している。花にあふれる美しい村の魅力を伝えるブログは、日本でも多くのファンがいる。
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