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子どものこれから
将棋×子育てのイイ関係 女流棋士
中倉彰子
最終回 考えるから面白い(上)
将棋界に広がるAIの波
 近年、インターネットの普及やSNSの台頭により、子どもたちの周りには、ひと昔前とは比べものにならないほどの情報があふれています。また、情報量が増えただけでなく、検索機能を使えば意図も簡単に知識を得ることができるようになりました。今後はそういった情報や知識を持っていることが前提で、それをどう活用させるか、という力が求められるのではないかと思っています。つまり、「自分の頭で考える」ということがより重要になってくるのではないでしょうか。

 将棋界では、AI(人口知能)によって、コンピューターが人間のレベルを超えるという現象も起き始めました。それによって、プロの棋士たちはAIを対戦相手だけではなく、研究パートナーとしても活用しています。AIを搭載したコンピューター将棋はそれぞれの局面で“評価値”というものを、+1000とか-500といった数字で示します。ですから、今まで人間が思い込みや経験で「この手は最善手だ」と確信していた手が、実はコンピューターだと低く評価されてしまうケースもよくあることなんです。ただ、なぜ評価値が低いのか、その理由までは教えてくれません。AIが選択した手を、実際に使える手に結びつけていけるかは、やはり自分の頭を使って答えを導き出さなければ棋力向上には繋がらないのです。

日常で頭を使う
 日常生活においても、親のちょっとした工夫と心がけで子どもに考える時間をつくることができるんですよ。例えば、「これをしてもいい?」と子どもに聞かれたときに、「いいよ」「だめ」というような○か×で答えるのではなく、「あなたはどう思うの?」と、質問返しをしてみることをおすすめします。だからといって、なんでもかんでも聞き返すのがよいというわけではありませんし、もちろん危険なことは「ダメ!」とはっきり伝える必要はあるので、親の見極めは大事ですが……。わが家の次女は特に優柔不断で、何を選ぶにも時間がかかってしまうタイプです。痺れを切らして「はい、もうこれにしたら?」と言いたい気持ちは山々ですが、どちらにしようか迷うこと自体が一生懸命考えていることと、私自身に言い聞かせてじっと我慢。なるべく親の都合で中断させないようにしています。
 将棋の場合、自分の手番で指すことができるのは1手のみ。数ある指し手の中から、比較検討してこっちにしようかと選んでいるシーンはまさに将棋のそれと同じなんですよね。とにかく、自分の頭を使って考える。この繰り返しによって思考は鍛えられていくのだと思います。


イラスト:高野優


考える力が求められる時代へ
 2020年度から大学入試センター試験に代わり、「大学入学共通テスト」が導入されます。これによって知識だけでなく、思考力、判断力、表現力など幅広い要素が求められるそうで、大手の学習塾ではその対策として、将棋教室や入門イベントを取り入れる試みもあるようです。これまで何度も繰り返し伝えてきましたが、将棋は考える力を競うボードゲームです。将棋を楽しみながら考える力を身につけられるとしたら、まさに一石二鳥! 大きな教育改革が始まろうとしている今、将棋を利用しない手はありませんよね。(最終回・下につづく)
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【なかくらあきこ・たかのゆう】
★文/なかくら・あきこ★東京都出身。女流二段。株式会社いつつ代表取締役。6歳から将棋を始める。1991、92年の女流アマ名人で連続優勝を果たし、94年に高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。その後、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会を務めるなどメディアで幅広く活躍。2007年に公益社団法人日本女子プロ将棋協会へ移籍。15年3月に現役を引退し、同年10月に株式会社いつつを設立。将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開し、お母さん向けの講演なども行う。将棋入門教材「はじめての将棋手引帖」の制作や、絵本『しょうぎのくにのだいぼうけん』(講談社)も出版。

★絵/たかの・ゆう★北海道出身。育児漫画家・絵本作家。NHK教育テレビにて『土よう親じかん』(2008年4月~2009年3月)、『となりの子育て』(2009年4月~2011年3月)の司会を務め、子育て世代から支持が厚い。『よっつめの約束』(主婦の友社)など著書は約40冊に上り、台湾や韓国などでも翻訳本が発売されている。また、マンガを描きながら話をするという独自のスタイルで、育児をテーマにした講演会を全国で開催。2015年には、特定非営利活動法人日本マザーズ協会が主催する「第8回ベストマザー賞2015・文芸部門」を受賞。
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