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子どものこれから
将棋×子育てのイイ関係 女流棋士
中倉彰子
第7回 棋は対話なり(下)
指導者として痛感したある出来事
 「相手のことを考える」という点では、子どもたちだけではなく指導者である私にとっても大事なことです。
 以前、子ども教室を開いたばかりのころ、ある小学1年生男の子が入会してきました。彼は将棋が好きそうに見えるのですが、「『囲い』はこうするんだよ」「『棒銀』という攻め方を覚えてみようか?」と、戦術を教えようとしてもなかなか聞いてくれません。生徒同士の対局なら参加してくれるのですが、他の時間は走り回ることも多く、どうやって指導したらいいのか頭を悩ませていました。
 そんなある日、何かの拍子に口に出た、「だって覚えても忘れちゃうもん」というひと言。お母さんによると、彼のお姉ちゃんはとても頭がよいそうです。教わったことはお姉ちゃんのように要領よく覚えなければならない、という彼なりのプレッシャーがあったのかもしれません。そのときから、「先生は何回でも教えるから大丈夫。何回間違ってもいいし、何回忘れてもいいんだよ」と声をかけ続けると、私たち講師の話に少しずつ耳を傾けてくれるようになり、やがて教室の開始時間になると一番に元気よく入って来る生徒になったのです。そんな彼の態度の変化、成長ぶりには驚かされました。以来、指導する者として、子どもたちをよく観察し、子どもの立場になって考えることを肝に銘じています。

イラスト:高野優


将棋のタイプも十人十色
 子ども教室の生徒と接していると、将棋に向かう姿勢にさまざまなタイプがあることがわかります。

階段を一段ずつ確実に上がっていくような勉強家タイプ
自分の好きな「囲い」を真っ先につくりにいく芸術家タイプ。
序盤の型を覚えるよりも、勢いよく指していく勝負師タイプ。
勝負よりも将棋を研究したくなる研究者タイプ……。

 一人ひとりの「楽しい」と思うツボは違うし、「上手になりたい」という動機も異なります。しかし、全員に共通しているのは、「将棋が好き」ということ。「好き」の才能を生かしながら、さまざまな個性を伸ばすお手伝いをしていきたい。子どもとふれあう中で日々感じています。


【「株式会社いつつ」のホームページ】 http://www.i-tsu-tsu.co.jp/

【高野優 公式ブログ「釣りとJAZZと着物があれば」】https://ameblo.jp/youtakano2018/
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【なかくらあきこ・たかのゆう】
★文/なかくら・あきこ★東京都出身。女流二段。株式会社いつつ代表取締役。6歳から将棋を始める。1991、92年の女流アマ名人で連続優勝を果たし、94年に高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。その後、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会を務めるなどメディアで幅広く活躍。2007年に公益社団法人日本女子プロ将棋協会へ移籍。15年3月に現役を引退し、同年10月に株式会社いつつを設立。将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開し、お母さん向けの講演なども行う。将棋入門教材「はじめての将棋手引帖」の制作や、絵本『しょうぎのくにのだいぼうけん』(講談社)も出版。

★絵/たかの・ゆう★北海道出身。育児漫画家・絵本作家。NHK教育テレビにて『土よう親じかん』(2008年4月~2009年3月)、『となりの子育て』(2009年4月~2011年3月)の司会を務め、子育て世代から支持が厚い。『よっつめの約束』(主婦の友社)など著書は約40冊に上り、台湾や韓国などでも翻訳本が発売されている。また、マンガを描きながら話をするという独自のスタイルで、育児をテーマにした講演会を全国で開催。2015年には、特定非営利活動法人日本マザーズ協会が主催する「第8回ベストマザー賞2015・文芸部門」を受賞。
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