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子どものこれから
将棋×子育てのイイ関係 女流棋士
中倉彰子
第4回 世代間コミュニケーション(上)
将棋道場へ行こう!
 「将棋道場」と聞くとどのような印象を持ちますか? 「道場破り」という言葉があるからか、強い人が相手側に乗り込んで打ち負かす(!)とまではいかなくても、有段者や上級者が集まる特別な空間をイメージする人が多いようですね。私の周りでも「将棋のルールは知っている」「NHKの将棋番組はときどき観ますよ」という将棋ファンの方でも、「道場に行きませんか?」とお誘いすると、「いやー、敷居が高すぎます。とても仲間に入れる気がしません」と苦笑い。「自分が弱すぎて相手に悪いです」という声もよく聞きます。最近では「将棋サロン」「将棋倶楽部」と呼んでいるところもありますが、「道場」というとどこかハードルが高くなるようです。

 しかし「将棋道場」とは、将棋を指すことができれば棋力(将棋の強さ)が上でも下でも、子どもでも大人でも、ルールさえ理解していれば誰が行ってもまったく問題ありません。将棋教室のように、講師がいて戦法などを教わるというのとは違って、ひたすらさまざまな相手と実戦できるのが「道場」なのです。

 最近では、スマホのアプリなどの普及によって、場所も時間も選ばず気軽に将棋ができるようになりました。聞くところによると、デジタル機器で将棋の面白さを知ってから、人との対局に興味を持ち、道場に通いはじめる人もいるとか。将棋の楽しみ方は人それぞれですが、いつの時代も将棋の醍醐味は、人と向かい合ってその場の空気を感じながら指すことにあります。

懐かしの醤油ラーメン
 私は6歳のときに、妹と一緒に父から将棋を教わりました。学校から帰ると毎日のように、妹と2人で近くの道場へ通い、同じ年ごろの子どもからお父さん世代、おじいちゃんくらいの高齢者まで、幅広い世代と対等に勝負することで棋力を上げてきました。
 
 当時女の子は珍しく、さらに姉妹となるとけっこう目立つ存在で、道場のみなさんにはずいぶんとかわいがってもらいました。中でも、醤油ラーメンの思い出は特別。お客さんの中で出前のラーメンを頼む人がいると、席主と言われる道場のおじいちゃん先生は、ときどき私たち姉妹の分も頼んでご馳走してくれるのです。できたてのラーメンが届くと、思わず姉妹でニッコリ。将棋漬けの日々を送っていた私たち姉妹にとって、ご褒美ともいえる瞬間でした。将棋は一人で勝負するものですが、道場のように将棋好きが集まる場では、こうして面倒見のいいおじいちゃんやおじさんたちに支えられていたんだなぁと改めて実感します。
 
 大人が子どもに教えたり、ときにはその逆があったり。さわぐ子どもをおじいちゃんが「静かにしなさい」と叱ったり……。子どもたちの中から、地元の期待を背負ってプロの道を志す子がいれば、大人たちはその子の成長を見守り、応援する。そういった人と人のふれあいが道場にはしっかり根づいているんですよね。違う世代とのコミュニケーションを楽しむ機会が減っている現代にこそ、先人がつくりあげてきた将棋文化をもっと見直すべきだと思います。(第4回・下につづく)

【「株式会社いつつ」のホームページ】 http://www.i-tsu-tsu.co.jp/



    ☆育児漫画家・高野優さんのイラスト&つぶやきコーナー☆ その7









【高野優 公式サイト】http://www.k4.dion.ne.jp/~alamode/
【高野優 公式ブログ タカノアラモード】http://www.take.cside5.jp/alamode/blog/

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【なかくらあきこ・たかのゆう】
★文/なかくら・あきこ★東京都出身。女流二段。株式会社いつつ代表取締役。6歳から将棋を始める。1991、92年の女流アマ名人で連続優勝を果たし、94年に高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。その後、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会を務めるなどメディアで幅広く活躍。2007年に公益社団法人日本女子プロ将棋協会へ移籍。15年3月に現役を引退し、同年10月に株式会社いつつを設立。将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開し、お母さん向けの講演なども行う。将棋入門教材「はじめての将棋手引帖」の制作や、絵本『しょうぎのくにのだいぼうけん』(講談社)も出版。

★絵/たかの・ゆう★北海道出身。育児漫画家・絵本作家。NHK教育テレビにて『土よう親じかん』(2008年4月~2009年3月)、『となりの子育て』(2009年4月~2011年3月)の司会を務め、子育て世代から支持が厚い。『よっつめの約束』(主婦の友社)など著書は約40冊に上り、台湾や韓国などでも翻訳本が発売されている。また、マンガを描きながら話をするという独自のスタイルで、育児をテーマにした講演会を全国で開催。2015年には、特定非営利活動法人日本マザーズ協会が主催する「第8回ベストマザー賞2015・文芸部門」を受賞。
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