
旅先の滞在場所として借りた一軒家
数年前から、旅のお宿として、エアビーという個人のセカンドハウスなどを借りるサービスも選択肢に入れるようになりました。最初は手続きが不安だったり戸惑ったりしましたが、慣れてくると、旅先で家が持てることのありがたさが身に染みるようになりました。「暮らすように旅をする」といえば聞こえはいいけど、結局は「旅の合間に普段の暮らしを入れないと、身体がもたない」のです。若さで旅を乗り切れる時代は過ぎ、いよいよそんなお年頃。でも、このいつもと違う環境で暮らしを体験することが、旅のアクセントになり、とても楽しいのです。
いちばんありがたいのは、やはり自炊ができることでしょうか。カフェやレストランの食事、サンドイッチやキッシュなどの軽食、もちろんそれらもおいしくいただくのですが、さすがに続くと胃がしんどくなってきます。そして、慣れた味に口恋しくもなります。(さらに言えば、初めての土地でレストランを探し、メニューを解読して注文するのって、まぁまぁ体力使います)。旅の間は、なるべく夕食を普段の時間通りに食べたかったので、自炊用食材をスーツケースにいろいろ詰めて持っていきました。アルファ米シリーズ、乾麺のそば、インスタントラーメンにカップ麺、レトルトカレーに福神漬、フリーズドライみそ汁に塩昆布と梅干し、市販の合わせ調味料などなど。簡単な自炊を考えるとき、趣味の山登り経験が役立ちます。
例えば、ある日の夕飯は、町で調達した豚肉、ズッキーニ、マッシュルームをフライパンで炒めて市販の照り焼き調味料で味付けしたもの&お粥の塩昆布のせ。別の日はマルシェで買ったサーモンの切り身のソテー&出来合いの総菜を、インスタントラーメンとセットで。特に、一日中歩き回って疲れた日の夜などは、アルファ米とレトルトカレーで簡単に済ませられると、身も心も休まります。そして朝食は、近所のパン屋さんで買ってきたクロワッサンに、サラダとハムとちょっとした卵料理を足すだけでご馳走です。食事が充実していると、心が安定して元気に過ごせます。これ、すごく大事です。
今回は、フランス南東部のアヴィニョンにほど近い、リル・シュル・ラ・ソルグという小さな町の一軒家をレンタルしたのですが、ホストさんが明るくよい方で、「昼間は暑いから窓を閉めておいて、朝夕に涼しい空気を入れるといいよ」とか、「洗濯機は標準でセットしたから、あとはスタートボタン押すだけで大丈夫だよ」とか、暮らしに必要ないろんなことを、身振り手振りで丁寧に教えてくれました。エアコンのない家でしたが、扇風機だけで快適でしたし、何より毎日洗濯ができて、2階のテラスで服がカラっと乾くのが気持ちいい!
滞在した家は、中心部から少し離れたところにあって、環境はとても静か。すぐ近くを流れるソルグ川沿いを、可愛いカモの親子を見ながらお散歩するのが朝夕の日課となりました。初めて泊まった日の夕方、門の鍵で悪戦苦闘していたら、「ややこしいね。がんばって」と、隣の家で食前酒のアペロを楽しんでいたご夫婦が励ましてくださったり、2軒隣の少し年配のマダムに朝のご挨拶をすると、「ここは静かだから、よく眠れるでしょう?」とほほ笑んでくださったり、こちらがエアビー住人だと分かっているご近所さん達も、なんだか穏やかで親切。そんなちょっとしたことに笑顔になれるのがうれしいのです。
幸いなことに、借りたお家の中庭や2階のテラスにテーブルとイスがあったので、お隣さんを真似て私もアペロタイムを過ごすことにしました。テーブルセッティングに使う小道具は、町で毎週日曜日に開催されているブロカント市で調達します。テーブルサイズに合わせてクロスを買い、お花を生けるための器を探し、お花も好きなものを選んで購入。ワインにチーズにオリーブ、ハムにラディッシュを並べたら、素敵なアペロテーブルの出来上がりです。夏のヨーロッパは日が長く、蚊もほとんどおらず、ときどき吹く涼しい風を感じながら、旅先でのお家時間を楽しみました。(つづく)
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