南仏に限らずですが、今回の旅でも感じたのが、老若男女問わずフランス人の姿勢がいい、ということ。通りを歩いている人、カフェで食事している人、待ち合わせをしている人、なんだか皆、シュッとしていてスマートなのです。油断すると前かがみになりがちな私は、ときどきハッとして姿勢を正していましたが、どうして皆さん、あんなに姿勢がいいのでしょうか。
その理由を、プロヴァンスのガイドをお願いしたクルチュー葉子さんに聞くと、フランス人は姿勢について、小さなころから親に厳しく躾けられるのだそうです。もちろん、日本でもお行儀は躾けられます。ただ私の場合、親や祖父母に「箸の持ち方が下手だと大人になってから恥ずかしいよ」「咳をする時は手を口に」「脱いだ靴はそろえなさい」というエチケットやマナーは厳しく注意されましたが、姿勢についてはそこまで言われた記憶がありません。
葉子さんは昔、フランス人の友人と家で過ごしていて、ふと町に出かけることになったとき、その友人は、「やめておくわ。今の格好はPrésentableじゃないから」と言ったそうです。Présentableとは“人前に出せる”という意味で、フランス人は常にPrésentableな自分であることを大事にして、お洒落を心がけているのだとか。さらに言うと、現地で女性の胸元がとてもオープンなファッションをあちこちで見かけたのですが、それも、“自分のチャームポイントは見せるべき”という考え方に基づいているのだそうです。こんなふうに、人に見せる自分への意識の高さも、姿勢のよさにつながるのかもしれません。
そして、フランス人はとにかく挨拶を交わします。日本でもそうですが、よほどのことがない限り(相手に差別的な感情がない限り)、笑顔でボンジュール(こんにちは)が言えたら、みんな親切に接してくれます。特に今回の南仏旅では、人懐っこく喋りかけてくれる方が多く、こちらがほんの少しフランス語を理解できると分かると、一気にすごい勢いで喋りかけてくれました。それがうれしくもあり、全てを理解できない自分がもどかしくもあるのですが……。
マルシェではお花屋のマッチョなお兄さんに可愛いブーケを作ってもらいました。「日本に行ってみたい」という彼と話していると、近くのカフェテーブルで私たちの会話を聞いていたブロンドヘアの美しい母娘が、お喋りの輪に入ってきてくれました。なんでも日本が大好きで、息子さんは日本語の勉強をしているそう。しかも今年の5月に家族で日本を訪れ、香川県の直島に行かれたとのこと。そして、一緒にいた小顔で目鼻立ちのすっとした娘さんの名前が、なんとヨーコさん!
正直、彼らが話すフランス語の半分以上は何を言っているのか分からなかったけれど、とにかく話しかけてくれたことがうれしくて、その後も、ブーケが出来上がるまでいっぱいお喋りをしました。
そうそう、日帰りピクニックに出かけた日も楽しい出会いがありました。滞在しているリル・シュル・ラ・ソルグの町から、目的地のフォンテーヌ・ド・ヴォークリューズという町までは、学校の夏休み期間中のため、バスが減便され一日に3便しかありませんでした。当然利用者も少なく、バスの運転手さんも往復同じ方。少しぽっちゃりしたニコニコ笑顔の運転手さんは、帰りのバスは他にお客さんが居なくて貸し切り状態だったせいか、景色のいい場所でいちいちバスを停めてくださるのです。そう、私が写真を撮りやすいように。さらには「ここの岩は大きいよ」「この橋は古いよ」など、プチ解説付きです(笑)。田舎道から町に向かう大通りに入るときには、まるで私の気持ちを代弁するように「さよなら、ヴォークリューズ~」と鼻歌まじりに大きくハンドルを切る運転手さん。彼の陽気で優しい人柄にふれた帰り道でした。
このように、旅の間に出会った方たちがみんな人懐こく親切だったことが、この地の滞在を豊かなものにしてくれました。もし、これを南仏気質と呼ぶのなら、この地の爽やかな気候とおいしい食材が、人々をそうさせるのかもしれません。(つづく)
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