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美しいくらし
おうちで旅気分 育児漫画家・イラストレーター
高野 優
第3回 120センチだったわたしたちは……



 待ちに待ったアーティストのライブがあったのに、急きょ、無観客ライブに変更になったと主催者から連絡があった。
 有料の生配信。間近で聴くのとモニター越しとでは、どう違うんだろう? 同じ空間で音に酔いたかっただけに残念で仕方ないけれど、この先、音楽の世界はどうなるのかわからないし、大好きなライブハウスが廃業になったら大変。応援する気持ちも込めて、今夜は有料配信を堪能しよう。

 タイミングを見計らったかのように、今朝、ライブ鑑賞の相棒が届いたばかり。
 氷下魚とビールとジンギスカンの三点セット。
 全国各地から簡単にお取り寄せができるけれど、古い友人からの贈り物は、懐かしさや思い出も、箱の中から溢れてくるような気がする。

 氷の下の魚と書いて「こまい」と呼ぶ。氷が張った海の中でも活発に泳ぐ魚。北海道で暮らしていた頃は、寒干しにした硬いこまいを木槌で叩いて、炙って食べるのが好きだった。いつしか、魚の名前を口に出すこともなく、食べ方まですっかり忘れていた。

 早速、お礼の電話をかける。
「なんもさ、おちついたら遊びに来てね、したっけね」と、早口の北海道弁。どうしてだかわからないけれど、その声が耳に響くだけで泣きそうになる。120センチにも満たなかったわたしたちは、いつしか背もぐんと伸びて、人生の酸いも甘いも一通りは噛み分けて、ここまで来た。

 やったことがないからと恥ずかしがる友人を説き伏せて、今夜はオンラインで乾杯予定。スマホの画面越しにおしゃべりを愉しみ、パソコンからは音楽の生配信が流れる。なんて贅沢な時間。
 束の間だけど、距離を飛び越えて7歳だったあの頃に戻ってみようよ。もちろんおつまみは氷下魚で。

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高野優さんのオフィシャルブログ「釣りとJazzと着物があれば。」

【高野優さん☆過去の記事を紹介!】
さまざまな個性を考える「白熱!個性論」親子編では、3人の子育て経験をもとに親が向き合うわが子の個性についてインタビューしました。女流棋士の中倉彰子さんが将棋の魅力をつづった「将棋×子育てのイイ関係」で全10回のイラストを担当。「わたしの仕事道具」第1回では心に残る旅アイテムを紹介してもらいました。こちらも併せてお読みください。
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【たかの・ゆう】
育児漫画家・イラストレーターであり、社会人、高校生の三姉妹の母。
2008年のNHK Eテレ『土よう親じかん』と、2009年のNHK Eテレ『となりの子育て』で司会を務め、2013年のNHK Eテレ『ハートネットテレビ』や2020年のNHK Eテレ「ウワサの保護者会」にゲスト出演。2016年は日本テレビ『スッキリ!!』ではコメンターとしても活躍する。2014年開催の第62回日本PTA全国研究大会記念講演や2019年開催の第53回全国保育士会研究大会基調講演に登壇。日本マザーズ協会のベストマザー賞文芸部門を受賞(2015年)、講演会講師派遣「スピーカーズ」のスピーカーズアワード教育・育児部門で大賞を受賞(2018年・2019)。『思春期コロシアム』(東京新聞社)『よっつめの約束』(主婦の友社)『HSP! 自分のトリセツ』(1万年堂出版)など、著書は40冊以上になり、台湾や韓国等でも翻訳本が発売中。
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