第1回【親子編】高野優さん(育児漫画家) ~第1話~悩む母親たち
「個性を伸ばす」「個性を尊重する」「個性を生かす」といわれるように、「個性」は、学校や職場、家庭での教育目標や組織理念などでよく使われています。しかし、言葉の意味を明確に答えるのは容易ではありません。それどころか、「あなたの個性は?」と聞かれても、答えに戸惑ってしまうのではないでしょうか。自分の持ち味、容姿や性格、それともその人の才能? 誰もが「個性」の本質をつかめないまま、一人ひとりがより輝くことを求められているように思います。
新連載「白熱! 個性論」では、多彩なジャンルで活躍されている方にインタビューし、身近な問題に目を向けながら「個性」について考えます。
第1回は、自らの子育てエピソードを題材にしたエッセイなどを執筆する育児漫画家の高野優さん。子育て世代の親を対象にした講演活動も全国各地で行っています。そんな高野さんがこれまでの経験をもとに語る「個性論~親子編~」を3回にわたってお届けします。
今、多くのお母さんたちが子育てについて考え悩んでいます。講演会で全国を回り今年で16年になりますが、最後の質疑応答で出される質問内容のベストスリーは16年間ずっと変わりません。3位は「お母さん友だちとの付き合い方」、2位が「自分の時間がない」、1位は「上の子を叱ってしまう」。これは悲鳴にも似たお母さんたちの声なのです。
1位の「叱る」にはさまざまな理由が考えられますが、よくありがちなのが、わが子を誰かと比較してしまい、その結果叱ってしまうというケースです。礼儀正しくて、勉強ができて、先生に好かれて、友だちにも恵まれ、スポーツも万能……と、よくできる子が親の理想になり、その期待に応えてくれないから厳しく当たる。これでは、親がわが子の能力や適性を認めているとはいえません。

『高野優の思春期ブギ-』
高野 優 著
本体価格: 1200円+税
発行元:ジャパンマシニスト社
以前、ある新聞社の方に聞いた話によると、アメリカでは親に「わが子のよいところを書いてください」とお願いするとスラスラ書けるけれど、日本の親は書けなくて困るそうなんです。わが子の「個性をもっと伸ばしたい」「長所を引き出してあげたい」という深い思いはあるのに、親たちはどうサポートしていいかわからず、空回りしているのです。
■子どもの個性とは? 子どもの個性とはいったい何でしょうか? 季節に例えたら、みんなキラキラした夏の子ばかりじゃないですよね。夏の子ばかりが社会にいたら調和がとれません。じめっとした子がいてもいいし、しっとり静かな子がいてもいい。
個性といえば、すぐに長所に結びつけてしまいがちですが、実はそうではありません。長所と短所をひとくくりにした、その子が持っているオリジナルなのだと思います。
【今日のまとめ】個性とは、長所も短所も含めたその子が持っているオリジナル
イラスト提供: 高野優さん
―「個性を伸ばしたい」という切実な親心がある一方、わが子の長所を書き出せない親たち。第2話では、高野さん自身の子ども時代を振り返ります。【高野優 公式ブログ「釣りとJAZZと着物があれば」】https://ameblo.jp/youtakano2018/(構成:狭間由恵)