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きれいをつくる
先生たちのちょいカツ!
第5回 青柳祥子 先生(折り紙創作家)
 その道をリードする先生にも、自分自身にカツを入れて頑張る場面がきっとあったはず。「先生たちのちょいカツ!」では、多彩なジャンルで活躍する先生たちに、困難を乗り越えた思い出深いシーンや人生の転機になったエピソードをインタビュー。仕事に取り組む姿勢や、人間味あふれる人柄などに迫ります。連載の第5回は折り紙創作家の青柳祥子先生が登場。折り紙を通じて世界をつなぐ青柳先生が経験した“カツ”とは?

周りの声を受け入れて、自分をリセットする



 一生懸命やっているのに、人からマイナスなことを言われると凹みますよね。でも、その声を聞き逃さず受け入れて、自分を一度リセットしてみる。そこに次の一歩を踏み出す大事なヒントが隠されているように思います。

 折り紙との出合いは1998年。当時、私たち家族3人は夫の仕事の関係でオーストラリアのシドニーで暮らしていました。ある日、市役所のイベントコーディネーターから、「移住民のクラフトクラスで折り紙を教えてくれない?」という思いがけない依頼が舞い込んだのです。私が日本人だからという理由で講師を任されたのですが、折り紙は幼稚園以来のこと。とりあえず箱や花などの基本的な5種類を覚えて、約20人の女性グループに教えました。すると、「これはペーパーマジックだ!」って拍手喝采の大喜び。反響の大きさに私自身が驚かされました。「日本の折り紙はこんなにも人を笑顔にする、素晴らしいものなんだ!」。その光景に感動した私は早速、折り紙を広める試みを精力的に展開。幸運にも市役所のコミュニティーセンターで教える機会に恵まれ、講師としての活動を軌道に乗せることができました。

青柳さんの作品。作りたいものをデッサンし、イメージに近づけながら折り方を考えていく
 そんなころ、誘われたお茶会で言われた言葉が私の胸に突き刺さりました。「青柳さん、折り紙を教えるぐらい誰にでもできますよね」と、日本人のママ友に笑われたのです。外国人の生徒さんには好評でしたし、私も一生懸命やっていたのですが、一部でそんな見方をされていたのかと思うとショックで……。でも確かに、本を見て覚えた折り紙なんて誰にだってできること。「私にしかできないことをやろう」と心に決めました。

 ヒントになったのが、そのころ娘のために読んでいた、ロシアの教育学者・ニキーチンの本です。お話をしながら積み木を置いていくというユニークな手法を折り紙に生かせないかと考え、形から連想させる「お話折り紙」の創作にたどり着きました。折り進めるプロセスをストーリー仕立てにすることで、「楽しい」「覚えやすい」と評判に。
 一方で、基本折りが載っている伝承折り紙の本をドリルのように何度も繰り返し、毎日夢中で折りました。手が慣れてくると、フェアリーペンギンやコアラといったオリジナル折り紙が次々と私の手から生まれてきたのです。

 シドニーでの8年間は小学校や図書館、大学、州立美術館の講師も務め、日本に帰国した現在も折り紙創作家として活動しています。私の折り紙ライフを振り返ると、大きく前進したきっかけはママ友のあの言葉です。彼女にしてみたら私を小バカにしたつもりだったのかもしれませんが、おかげで無理に突き進まず、立ち止まって考えることかできました。マイナスな意見でも、感情を交えず一時的にのみ込む。それは、自分にとって親切な言葉だったり、走り過ぎている自分を見つめ直すきっかけになったり。可能性を大きく広げるチャンスになることもあるのです。


カツナンバー
BACH FOR BREAKFAST

 バッハの、心地よい曲調をセレクトした一枚。出合いは15年前、シドニーのCD屋さんで、ディスクジャケットのかわいいイラストに弾かれて購入し、それ以来、ずっとお気に入り。「これを聞くと気持ちがリセットされます」

カツめし
ペニシリンスープ
 シドニー滞在中、体調を崩した青柳さんを気遣って、ユダヤ人の友人が作ってくれた思い出のスープ。深鍋に鶏をまるごと1羽、水、スープエキス、セロリ、タマネギ、ニンジンを入れて、鶏がホロホロになるまで煮込む。お好みでローリエとショウガを入れると出来上がり。「とにかくコラーゲンがたっぷりで、とっても元気が出ます」。日本では手羽先で代用して作るそう。

カツアイテム
デザイナー・皆川明さんのネックレス

撮影: 大崎 聡
 2012年にお店で見かけたレース製の青いネックレスを、ビビビっときて即購入。これをつけていると「すてきですね」「どこで買ったんですか?」と声をかけられることが多く、まさに“会話が生まれるネックレス”だとか。

2014年、FMヨコハマにネックレスをつけて出演
写真提供:青柳祥子 先生










カツ語
ありがとう。楽しかった。

『かわいいどうぶつおりがみ』
青柳祥子 著
価格:本体1200円+税
発行:永岡書店

 「とにかく、その人が笑顔でハッピーになればうれしい」と青柳さん。シンプルなフレーズだけれど、そのひとことで心が温まる。







【「青柳祥子のおりがみワールドへようこそ」のホームページアドレス】
http://www.shoko-origami.com/jp/

取材を終えて

テディベアやフェアリーペンギンはまるで絵本から飛び出したような愛らしさ、ティーポット型の封筒やハトのメッセージカード入れはちょっとした仕掛けにワクワク…。青柳さんの作品は、見て心が温かくなるものや、使って楽しめるものばかり。「すぐに捨ててほしくない」という作家の思いが込められているからか、作風にキャラクター性と不思議な愛着を感じます。人の心に残る折り紙。青柳さんの折り紙ワールドはさらに広がりそうです。
(構成・撮影:狭間由恵)
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【あおやぎ・しょうこ】
1961年生まれ。福岡県出身。1998年からオーストラリア・シドニーのコミュニティーセンターをはじめ、幼稚園や学校などの各施設で折り紙を教える。ニューサウスウェールズ大学や、ニューサウスウェールズ州立美術館の教育部門で講師も務める。2005年に帰国した後も、オリジナルのお話付き折り紙を取り入れた教室や研修などを国内外で開催。2006年に日本折紙協会賞受賞、2008年に長野耕平賞受賞。日本折紙協会会員、ブリティッシュ折紙協会会員、ハンガリー折紙協会会員、オランダ折紙協会会員。
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