小さいときに母親に連れられて行った近所のスーパーで、たまたま見かけた黄色いスイカがなぜか気になって気になって仕方がありませんでした。スイカは赤いはず、黄色いなんてありえない! こんなありえない色違いに僕は惹かれました。昔からそこまで自己主張の強い人間でもないので、黄色いスイカを買ってもらったのはたしかその翌年か翌々年だったように記憶しています。
ちなみに、いまでは「ちょっとピンク色のココナッツを食べにインドネシアに行ってくるわ」が共働きの妻に対して成立してしまうのですから、この30年間でプレゼンテーション能力はきっと飛躍的に向上したのでしょう(笑)

カリマンタン島(インドネシア)奥地の村市場にて
本当は赤くなりたかった!? 黄色いドラゴンフルーツ 僕が小さいときはスーパーでは目にすることがなかった果物のひとつに、ドラゴンフルーツがあります。10年前に輸入解禁になり、いまではベトナム産のドラゴンフルーツがスーパーでも普通に売られています。
「どんな味なんだろう?」「美味しいのかな?」
真っ赤な龍のウロコのような強烈な見た目は、きっと多くの人々の興味をそそるでしょう。
この真っ赤な見た目は、鳥や動物への色仕掛けです。葉っぱや茎と同じ未熟な緑色から、遠くからでも目立つ赤色に染まったら食べてOKのサイン。信号機とは逆ですね(笑)。果実と一緒に種子を食べた鳥や動物が遠く離れた場所で糞とともに種子をばらまくことで、昔から果物は少しでも少しでも離れた土地に伝播していきました。
はじめてドラゴンフルーツを食べたのはたしか沖縄だったと思います。当時学生だった僕にとって、1個500円もする不思議な見た目の果物は、買うのに少し勇気がいりました。どんな中身なんだろうと期待を込めて半分に切ってみると、白い果肉に黒いゴマ粒みたいな小さい種子がびっしり詰まっていました。そのとき食べてみた印象は、パサパサした味のないキウイフルーツ。期待感を煽る派手な見た目とのギャップに、思わずガッカリした記憶があります。
でも、もし旅先で黄色いドラゴンフルーツに出会えたらラッキーですよ。ドラゴンフルーツは赤いはず、黄色いなんてありえない! こんなありえない色違いに惹かれて再び手をのばしたのは、サンパウロ(ブラジル)のマーケットでした。ゼリーのようなプルプルした食感に、ぎゅっと濃縮された抜群の甘み! 記憶の中の味のないキウイフルーツとのギャップに、思わず小躍りした記憶があります。
それ以来、世界のどこかでこのラッキーイエローに出会ったときは多少値が張っても必ず買うと決めています。南米原産で生産量も少ないイエローは、まさに知る人ぞ知る存在。香港の露店で、ジャカルタ(インドネシア)の最高級スーパーで、ミラノ(イタリア)のフルーツジェラート専門店で、さりげなく置かれていたのは果物屋の目利きの証でしょうか。

サンパウロ(ブラジル)のマーケットで並ぶ、黄色と赤のドラゴンフルーツ
果物の色は、含まれる色素によって決まります。全ての果物が最も目を惹く赤系色素を持っているわけではありません。紫だったりオレンジだったり、持てる色素の限りを尽くしてできるだけ赤に近づけようとしてきます。黄色いドラゴンフルーツは、残念ながらあまり赤には近づくことができなかったようです。尋常でないその甘さは、「見た目じゃなくて味で勝負だ!」という発想の転換なのかもしれません。
マニアック・ドラゴンズ フルーツハンティングも、多くの趣味と違わずネット上にもマニアが集うコミュニティがあります。SNS上のグループで、「たまたま見つけたこのフルーツはなんていうの?」という投稿には、世界中から瞬時に的確なコメントがつきます。
「33品種の珍しいドラゴンフルーツの枝、販売してます。興味あればメッセしてね!」
ちょうどこの記事を書いている最中、カランバ(フィリピン)のドラゴンフルーツファームから、フォトジェニックな写真とともにこんなポストがありました。

幸運にもキャプテンクック(ハワイ島)のフルーツスタンドで巡り合った、ウルトラレアなオレンジドラゴン!
「ハワイアンオレンジ」という品種は、黄色よりもさらに希少なオレンジ色の見た目に、ピンクの果肉。「カメレオン」の果肉は、外側が紫で内側が白という二重構造で、ひと目を惹く美しさです。「AX」は、ビビッドなグリーンの外見にピンクの果肉という、ポップなクリスマスカラー。きっとこの組み合わせをつくるのに、数えきれない交配を繰り返したに違いありません。
一般的にドラゴンフルーツは赤肉・白肉・黄皮の3種類と言われていますが、その先には想像のナナメウエをいく奥深い世界が広がっているようです。(つづく)

Instagram(インスタグラム)が生み出した? ドラゴンフルーツのバナナ剥きはフォトジェニック!
【森川寛信公式ウェブサイト】
http://worldbeater.tv/