第2回 「あるがまま」を守り続ける取り組み(前編)
新刊書『増補版 フランスの美しい村を歩く』で紹介しているのは、小さいけれど宝石のようなきらめきを放つ30の村々。寺田直子さんが、旅のプロフェッショナルとして厳選したものです。フランス観光開発機構のアジア・太平洋・中東統括責任者として観光大国・フランスの観光政策を担う在日代表のフレデリック・マゼンクさんと寺田さんに、「美しい村」の魅力を語り合ってもらう対談の第2回です。―― フランス観光開発機構は2009年、国外でフランス観光をPRするフランス政府観光局(Maison de la France)と、観光分野のコンサルティングを担うオディット・フランス(ODIT France)の統合によってできた新しい組織です。東京を含めた32カ国34カ所の拠点からフランスの観光に関する情報を発信しています。最近、特に力を入れているのが、「フランスの最も美しい村」協会に加盟する村をめぐる旅のプロモーションです。寺田 そもそも、協会がスタートしたきっかけというのは何だったのでしょう?

マゼンク 歴史的な建物や自分たちの文化を残したいとの思いに加え、多くの観光客に来てほしいという願いを込めてのことだと思います。フランスの観光業が現在、GDP(国内総生産)に占める割合は7.5%ほどで、自動車産業とほぼ同じ規模の大きさです。力を入れ始めたのは第二次世界大戦後間もない1947年から。戦争を経て、観光産業が大事だということに気づいたのですね。人口が大都市であるパリに集中し始めたことも大きな要因でしょう。とにかく国を作り直す時代でしたから、地方も何かやらなければ、と決意したのだと思います。それ以降、必ず毎年それなりのプロモーションをやり続けているというわけです。

寺田 70年の蓄積が観光大国を作り上げたというわけですね。フランスでは夏休みが長いから、旅の需要もあるのでしょう。私も、夏の取材ではキャンピングカーなどで「美しい村」を点々と周っている家族にたくさん会いました。犬も連れていて、車のドアを開けるとワンちゃんが最初に出てくるんですよ(笑)。

「フランスの最も美しい村」協会発祥の村、コロンジュ・ラ・ルージュ
マゼンク 協会ができたのは1982年、キャンピングカーのブームが起きたのもまさに80年代です。今はキャンプ場も整備されてテントや小屋を借りられるようになりましたが、昔はそうではなかった。また、フランスでは1年間で5週間から2カ月間くらい休む。そうすると旅行期間も長くなる。犬も一緒に連れて行けるので、キャンピングカーはいろいろな点で便利なんです。でも、買うとなると涙が出るくらい高い(笑)。
―― 次回は「第2回 「あるがまま」を守り続ける取り組み(後半)」をお届けします。(構成:白田敦子)
【てらだなおこ×ふれでりっく・まぜんく】
【寺田直子】
トラベル・ジャーナリスト。東京都生まれ。日本とオーストラリア・シドニーの旅行会社勤務後、編集プロダクションを経てフリーランスとして独立。これまでに60カ国以上を訪れ、年間150日は国内外のホテルに宿泊している。著書に『ホテルブランド物語』(角川oneテーマ21)、『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)などがある。
【フレデリック・マゼンク】
フランス観光開発機構 在日代表。フランス、ミディー・ピレネー地方ミヨー生まれ。パリ政治学院卒。2000年~2006年フランス政府観光局(当時)日本事務所、2006年~2015年フランス観光開発機構中国事務所勤務を経て、現職。アジア・太平洋・中近東地区統括責任者も兼任している。