第2回 「あるがまま」を守り続ける取り組み(後編)
寺田 5週間から2カ月間近くの夏休みを楽しむとは、さすがは世界が認める観光大国! 世界中からも多くの観光客が訪れますが、昨年11月に発生したパリ同時多発テロはどのような影響を与えているのでしょうか。

イヴォワール
マゼンク 他国と比較して、日本のマーケットは敏感に反応しています。日本は反応が早く、何か起きると翌日からすぐ変化が起きて元に戻るのが遅いのです。2001年のアメリカ同時多発テロのときも、東南アジアで「SARS」が流行したときも、フランスへの観光客が大幅に減少しました。国際的な事件が起こると、旅そのものをしなくなる傾向があるようです。

「花咲ける町」4つ星のエギスハイム
寺田 春になり、徐々に戻りつつあるのではないでしょうか。危機管理をしながらも、これからぜひ、多くの日本人旅行客に「美しい村」の魅力を知ってほしいですね。実際に訪ねて感じたのは、「美しい村」の素晴らしさは歴史的な背景を持った村そのものの価値にあるということでした。観光客向けの整った施設になじんだ私たちには、あるがままの村の風景は新鮮な驚きであり、今まで味わったことのない観光の面白さに気づかせてくれるでしょう。現地では日本からの個人旅行者に何人か会いましたし、「美しい村」は日本人旅行者の間でもじわじわと浸透しつつあるように感じます。

「花咲ける町」のマーク
マゼンク 協会はブランドの信頼性を高めるために厳しい認定基準を設けており、数年ごとにチェックを受けて失格になることもあるんですよ。それが「美しい村」の質を保つ上で大きいと思います。フランスにはまた、「花咲ける町(Les villes et villages fleuris)」や、毎年テレビ番組の視聴者アンケートで選ぶ「フランス人が一番好む村(Le Village pr�・f�・r�・ des Fran�・ais)」もあります。フランス人は、そういう格づけが好きなんですよ(笑)。

「フランス人が一番好む村」のマーク
―― そんなところ、日本人もよく似ているような……。その点でも、「美しい村」は日本人におすすめかも。次回は、とっておきの「美しい村」の楽しみ方を教えてもらいます。(構成:白田敦子)
【てらだなおこ×ふれでりっく・まぜんく】
【寺田直子】
トラベル・ジャーナリスト。東京都生まれ。日本とオーストラリア・シドニーの旅行会社勤務後、編集プロダクションを経てフリーランスとして独立。これまでに60カ国以上を訪れ、年間150日は国内外のホテルに宿泊している。著書に『ホテルブランド物語』(角川oneテーマ21)、『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)などがある。
【フレデリック・マゼンク】
フランス観光開発機構 在日代表。フランス、ミディー・ピレネー地方ミヨー生まれ。パリ政治学院卒。2000年~2006年フランス政府観光局(当時)日本事務所、2006年~2015年フランス観光開発機構中国事務所勤務を経て、現職。アジア・太平洋・中近東地区統括責任者も兼任している。