旧市街にある「足利うさぎや」
「足利うさぎや」は、栃木県足利市の東武足利市駅から渡良瀬川を渡り、歩いて15分ほどの石畳が続く商店街にあります。近くには日本最古の学校として知られる史跡足利学校もあり、このあたりは古い建物が数多く残されています。「足利うさぎや」の店舗も昭和時代の長屋で、かつて1階は織物関係の買継ぎ屋さん、2階は隣接する銀行の応接室として使われていたそうです。
レトロな雰囲気が漂う2階の部屋
空き家だった長屋を家主から譲り受けたのが23年前。2階のすりガラスの窓から光が差し込むどこか柔らかな雰囲気に魅了されたというオーナーの大竹麻実恵さんが、この建物を維持し活用するために織物やリメイクを扱う店に改築。その後、自らがオーナーとなって地元の足利銘仙をはじめ、関東一円の銘仙を中心に販売する店にリニューアルしました。以来20年にわたって店を切り盛りしています。
「足利うさぎや」が取り扱う銘仙はその昔、江戸時代の織物を起源に庶民の着物として親しまれました。糸の段階で色を染め織り上げる平織の絹織物で、主な産地は足利、伊勢崎、秩父、八王子、青梅などの関東地方。光沢のある色調と時代の影響を受けたモダンな模様が人気となり、大正から昭和にかけての20世紀前半に大流行しました。機織り機の普及で安く手に入るようになったことから、大正末期に行われた調査では、和服女性のうち約半数が銘仙を着ていたという記録も残っています。
こうして一世を風靡した銘仙ですが、現代でも人気の高い着物アイテムです。昔のものだとサイズが小さいものもあるのですが、スカートやブーツを合わせたり、手袋や袖口にレースを利用したりするなどして、アレンジと工夫次第ですてきに着ることができます。サイズを気にすることなく、あなたの好きな柄や色を大切に着てほしいので、もし着方に困ったら、お店で気軽に相談してみてください。銘仙好きのスタッフがきっといろいろなアドバイスをしてくれる思います。それでは、私が選んだ銘仙の冬コーデをいくつかご紹介しましょう。
まずは、寒い季節にふさわしい椿模様の銘仙です。絵画のように織り上げる併用絣(へいようがすり)を用いた伊勢崎銘仙で、赤い椿と緑の葉が見るだけでも元気になるくらい大胆に描かれています。漆箱を意匠した染め帯は花々の刺しゅうによってさらに華やかさを増し、帯全体から優雅な世界観があふれています。(後編につづく)
(撮影:下條祐美)
★シーラさんのInstagram
https://www.instagram.com/kimonosheila/★「足利うさぎや」のホームページ
https://www.xn--p8jqu3q.com/★
シーラさんが訪ねた着物屋さん【足利うさぎや】https://www.instagram.com/ashikagausagiya/住所:栃木県足利市大門通2380-1
営業:11:00~17:00、土日祝10:00~17:00
定休:月・火曜
産地によって織り方が異なる関東一円の銘仙を取りそろえた、見るだけでも楽しい“銘仙コレクション”のようなお店。「戦前から多彩なデザインに挑戦してきた銘仙には時空を超えた面白さがあります」。そう話すオーナーの大竹麻実恵さんは、普段着として位置づけられた銘仙を入り口にして着物を着る楽しさにふれてほしいと、色や柄が豊富な銘仙の魅力を「織物の町」として栄えた地元・足利から発信している。
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