古くなったパンでつくるカネーデルリ
ところ変われば食が違う、それは古くなったパンの再生方法まで……。
私が住む中部トスカーナ州では、リボッリータやパッパ・アル・ポモドーロなど、古く硬くなったパンを無駄なく活用する郷土料理がたくさんあります。イタリア北部のトレンティーノ・アルトアディジェ州に伝わるカネーデルリもその一つ。硬くなったパンに牛乳や卵を混ぜ合わせてつくる料理で、見た目は大きな肉団子。そのため実際に食べるまでは、パンを使っているとは知りませんでした。
カネーデルリの3種盛り合わせ
同じカネーデルリでも地域や家庭で材料が異なりますが、特産の燻製ハム・スペックを刻んで炒めたものを入れるのが一般的。調理法は、茹で上げてそのまま、あるいは溶かしバターと絡める食べた方と、ブロードと呼ばれる香味野菜と肉でとったスープに入れる食べ方の2種類あります。
以前、トレンティーノ・アルトアディジェ州の北側に位置するヴィピテーノ近郊に家族でスキー旅行をしたときは、スープタイプはもちろん、スペック味のほかにホウレンソウ味やチーズ味といった、いろんな種類を食べ比べしてみんな大満足! それ以来カネーデルリは家族のお気に入り料理となり、自宅でもつくるようになったのです。
材料に欠かせない古いパンは、トスカーナの郷土料理で使うために常備していて困りません。現地まで行かなくてもおいしいカネーデルリが食べられるようになっただけでなく、パンがたまったときにできる料理のバリエーションが増えたことは旅の思いがけない収穫でした。
可愛い町並みが広がるヴィピテーノ。中心には「市民の塔」が立っている
レストランでオーダーしたグーラッシュ
2022年3月、再びトレンティーノ・アルトアディジェ州を訪れ、ヴィピテーノへと向かいました。暖冬とはいえアルプスの麓にある村の夜はやはり冷え込みます。散策していると、メーンストリートの奥に立つ「市民の塔」にほど近い場所で夕食によさそうなホテル兼レストランを見つけました。
もちろんお目当てはカネーデルリですが、実際にオーダーしたのは同じく郷土料理のグーラッシュ。カネーデルリを単品で頼むとそれだけでお腹いっぱいになってしまいそうで、カネーデルリが付け合わせとなったグーラッシュという肉の煮込み料理を頼むことしたのです。
茹で上げたカネーデルリだけ食べると口の中がもさもさしてしまうのですが、グーラッシュのソースを絡めると、しっとりとほどよい食感になり、肉のうま味が溶け込んだソースを余すことなく楽しめます。冬にいただくカネーデルリは煮込み料理との相性が抜群! 熱々の一皿が私の冷えた体をほっこりと温めてくれました。(つづく)
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