新刊『イタリアの美しい村を歩く』の著者で中山久美子さんが、本には書ききれなかった村の魅力を教えてくれる新連載。地元でつくられている特産品や古くから伝わる郷土料理など、村の「食」をテーマに全5回にわたって紹介してもらいます。
イタリア中部アブルッツォ州にあるナヴェッリは、高級なスパイスとして知られるサフランの一大産地。グラン・サッソと呼ばれるアペニン山脈最高峰の山々が北に連なる、標高700mの広大な高原でつくられています。サフランがDOP(原産地名称保護)認証を持つ村の特産物であることは
『イタリアの美しい村を歩く』の中で紹介しましたが、ナヴェッリを代表する農作物はこのサフランだけではありません。それは「ナヴェッリのひよこ豆」。村の名前がついたひよこ豆は、スローフード協会が絶滅させないよう保護すべく定めた伝統食材リスト「プレシディオ」にも名を連ねています。
なだらかな丘に立つナヴェッリ
村のレストラン
私がサフランの収穫体験をするためにナヴェッリを初めて訪れたのは昨年(2021年)11月初旬のこと。その約1年後に友人との再会をかねて再びナヴェッリを訪問することになりました。
友人と乗ったバスが村に到着したのは14時過ぎ。すでにランチタイムを過ぎていたのですが、昨年の収穫体験でお世話になったサフラン生産者組合会長のマッシミリアーノさんがレストランを予約してくれたおかげで、遅めの昼食にありつけることができました。オーダーしたのは、もちろん村の特産品、ひよこ豆を使った料理です。
一般的なものよりも小粒で、皮が薄くクリーム色。タンパク質とミネラルを豊富に含んでいるので栄養価が高く、昔から山間の村で農業を営む人たちの貴重な栄養源でした。レストランで食べたのはサフランのスープで煮込んだ、ぜいたくな一品。スプーンいっぱいのひよこ豆を口に含むと、まずサフランの芳香が口の中に充満し、噛んでいくうちに温かいひよこ豆のほくほくとした食感と優しい甘みが広がります。
私が村で食べたクリーム色のひよこ豆は、普段から家庭料理の食材として地元に親しまれている品種ですが、実はナヴェッリのひよこ豆には皮の赤い品種もあります。かつて貧しい農家が販売用に栽培していたクリーム色の豆に対して、赤い豆は農家の食料用。ごつごつとしていて皮が固く、柔らかく煮込むのに少々手間がかかります。とはいうものの、味はクリーム色の豆より濃厚で、最近は赤い豆を再評価する動きもあるそうです。
村では乾燥したひよこ豆が通年出回っていますが、12月24日のクリスマスイブはひよこ豆と栗のスープを食べるのがこの地域の伝統になっています。収穫期の8月半ばにはナヴェッリで40年以上の歴史を持つ「ひよこ豆とサフランの食祭り」が開催されるそうなので、次回は村の食でにぎわう夏に訪れてみたいものです。(つづく)
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