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ニースっ子の南仏観光案内 マイ コートダジュール ツアーズ社長
ルモアンヌ・ステファニー
第4回 サン・トロペのお巡りさん【サン・トロペ】
 フランス人にとって、コート・ダ・ジュールはバカンスを過ごしたり、別荘を買ったりするのには夢の場所です。町や村によって物価や雰囲気が違いますが、高級感にあふれ、セレブが集まるのがサン・トロペでしょう。表面的なイメージにとらわれることなく、その本当の魅力を皆さんにお伝えしたいと思います。


 世界での知名度の高さに対して、日本では観光やファッションの雑誌にときどき紹介されているだけ。ほとんど知られてなく「穴場」といえるでしょう。町中を散歩していてもアジア人にはほとんど会いません。

 サン・トロペ湾の奥にあるこの町は、ニースから東に120キロ。アクセスがあまりよくなく、道が空いていれば一時間半で到着しますが、一本道なのでよく大渋滞します。特にマルシェの日は3時間かかることもあります。しかし、ここを見ずに日本へ帰ってしまうのは残念ですし、リピーターの方でも必ず気に入ってくれるので、私はいつも皆さまをご案内しています。


 日本とフランスのつながりにとっては特別な町で、日本人が1615年に初めてフランスの土を踏んだ場所です。支倉常長ら一行がメキシコ経由でスペイン、ローマへ慶長遺欧使節として派遣され、1615年にマドリードから発ってイタリア・ジェノバに向かう途中で嵐に会い、サン・トロぺに2、3日寄港しました。

 20世紀の初めまではずっと小さな漁村でしたが、1956年にサン・トロペで撮影された映画『素直な悪女』に出演した女優のブリジット・バルドーがこの地のとりこになり、ずっと住むようになりました。それがきっかけで、有名人の友達が遊びに来たり、世界中で注目を集めるようになって、大人気のリゾート地となっていったのです。

 この町は、なんと夏の間は人口が冬(4300人)の4倍に増えるんですよ。ヨットハーバーが見どころで、城塞までのぼれば町と海をきれいに見おろせます。しかし、コート・ダ・ジュールとは雰囲気が違って、私も行くたびにわくわくしてバカンス気分になります。なぜでしょうか?

 まず、ファッションが違うのです。ニースやモナコあたりは一年を通して働く人が多いのですが、サン・トロぺではバカンスを過ごす人が多く、ここで働いている人のほとんどが観光関係者です。ラフな格好の人をよく見かけますが、それもまたおしゃれ。
 ヒールを履くことが少なく、ヒッピー風のワンピースがはやっていて、カゴバックを持ち、ぺったんこなサンダルでお散歩するのはトロぺジェンヌ(サン・トロペの娘)ならではのドレスコード。ビーチや日差しの強いテラスでのんびりするのが好きで、日焼けをするのがステータス。


 ブランドもののショップもありますが、かわいいらしいブティックもたくさんあって、週に2回開かれるマルシェもおすすめです。私が南仏で訪れた中でいちばんおしゃれな町ですが、リーズナブルなので洋服以外にも食器や雑貨などを買いたくなります。


 私が初めてサン・トロぺを訪れたのは子ども時代。幼いころからこの町に行くのが夢でしたが、クルーザーを見たり、有名人に会ったりするためでなく、大好きな映画のシリーズの舞台だったからです。日本では全く知られていなくて、有名な監督の作品でもないので、皆さんは題名を聞いたこともないと思いますが、30代以上のフランス人にいえば誰でも知っている『サン・トロペのお巡りさん』《Le gendarme de Saint Tropez》です。

 1964年から1982年まで計6作も制作されました。監督が別の映画の下見をしているときにカメラを盗まれ、交番に盗難届を出しに行くと、担当してくれたのはやる気のないのんびりしたお巡りさん。それがきっかけで、現地のなまけもののお巡りさんをテーマにして映画を作ろうと思ったらしいです。

映画のメインの登場人物は、田舎から引っ越してきた厳格なお巡りさんと、もともとサン・トロペで働いているのんびりで適当なお巡りさんたち。浜辺に出没するヌーディストを追いかけたり、猛スピードで車を運転するシスターを逮捕したり、宇宙人から村を守ったり……。

 今でもびっくりするようなシチュエーションばかりで、見てもあまり笑えないでしょうが、8歳の私は大ファンでした。あの映画の舞台になっている交番がずっと見たくて、親が私の夢をかなえるために連れて行ってくれたときは、町の観光は全くしないで、交番だけを見て大満足して帰った記憶があります。
 

 メインの登場人物Louis de Funès氏が1983年に亡くなって、交番だった建物は2003年に使われなくなり、しばらくは寂しい状態でした。しかし、2016年に「憲兵隊と映画の博物館」に生まれ変わって、「サン・トロぺのお巡りさん」に関する資料やゆかりの品が数多く展示されるようになりました。来館者は年間10万人にも達し、まだまだファンが多いそうです。

今でも村のいろいろなところで「お巡りさん」が生きています。フランス人にしか人気がないお巡りさんのキャップ形のマグネットや絵葉書、スノーボールなどもあり、本人の真似をして、全く同じような服装を着ているコメディアンのお巡りさんもいます。

 彼はコート・ダ・ジュール出身で、お父さんは本物のお巡りさん。毎年夏の間だけ、サン・トロぺの路上でパフォーマンスをしています。女性のミニスカートの長さを確認したり、車の行先を変えさせたり、人を笑わせているのです。往年の映画を思い出し、懐かしくなってチップをあげる人が多く、かなり有名人となっています。

 私が初めて彼に会ったのは、映画の中にも出てくる有名なカフェでランチをしていたとき。突然現れてパフォーマンスを始めたときには鳥肌が立ちました。そしてたまたま昨年、博物館前のベンチに座っている彼の姿を偶然見つけて、記念に後ろ姿を撮りました。幼いころに夢中だった、あのお巡さん本人が戻ってきたかのようで懐かしかったです。(つづく)
 
★サン・トロペ へのアクセス方法
ニースから直接電車やバスで行けません。車を利用するか、夏季限定で運航している直行便の船では2時間半で行けます。

【マイ コートダジュール ツアーズ】http://www.mycotedazurtours.com/
【mycotedazurtours Instagram】https://www.instagram.com/mycotedazurtours
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【Stephanie Lemoine】
1979年フランス・ニース生まれのニース育ち。高校で第3外国語として日本語を選択し、大学はパリにある国立東洋言語文化学院(Institut national des langues et civilisations orientales)で日本語と日本文学を専攻。大学時代の1年半、東京学芸大学への留学を経験する。ニースを拠点にした日本語ツアーや通訳、各種コーディネートなどを提供している「マイ コートダジュール ツアーズ」に、日本語ドライバーとして2008年から勤務し、10年に社長に就任。日本でのお気に入りの場所は宮島(広島県)と湘南(神奈川県)。大好きな鎌倉で老後を過ごすのが夢で、2人の息子たちには毎日欠かさず日本の話をしている。
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