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美しいくらし
ひとり出版者の仕事 暮ラシカルデザイン編集室
沼尻亙司
第9回 今こそ、”房総へ”。日常の豊かさとは何かを問い続ける
 連載の第8回でお伝えした「今、寄付する支援/少し未来に行動する支援」。
 おかげさまで、出店したイベントや編集室のホームページを通じて、そして本を販売してもらっているお店の方たちに『BOSO DAILY TOURISM 房総日常観光』をお買い求めいただいた。
 イベント出店の機会を提供してくださった「North Lake Cafe & Books」(我孫子市)の松田さん、「勝浦朝市シェアマルシェ」(勝浦市)の実行委員の皆さま、並びに活動趣旨に共感して本の新規・追加発注をしてくださった「CB PAC」(鎌ケ谷市)、「珈琲商店ハト」(市川市)、「三舟山珈琲」(木更津市)、「モバイルカフェ 福笑屋」(移動販売)の皆さま、そして直接購入していただいた読者の皆さまに、改めて御礼申し上げます。

以下、売上冊数と募金金額の報告です。

[直接販売]
9月  9冊 ×(1350円 × 1/2 )= 6,075円
10月  9冊 ×(1375円 × 1/2 )= 6,187.5円
[卸販売]
9月   0冊
10月  29冊 ×(1375円 × 60% × 1/2 )= 11,962.5円
[合計]
43冊  募金金額合計 24,225円

<補足>『BOSO DAILY TOURISM』の税込価格は、9月は1,350円、消費税率引き上げ後の10月は1,375円となります。1冊あたりの募金単価は、イベント出店と編集室ホームページからの直販の場合、上記価格がそのまま売上になるため、9月675円、10月687.5円に。お店への卸販売は、編集室では買取で一律60%に設定しているので、その1/2にあたる412.5円とさせていただきました。


 11月1日、さっそく中央共同募金会(赤い羽根共同募金)「台風15号災害に伴うボランテイア・NPO活動サポート募金」に24,225円を募金させていただいた。

 ……だが、この原稿を書きながら、どうしても暗澹たる気持ちにならざるをえなかった。当初、「今、寄付する支援/少し未来に行動する支援」活動を経て11月になれば、復興へ向けての新たな展望が見えてくるのではないかと、楽観していたところがあった。
 ところが、再び台風19号が猛威を振るい、10月下旬には記録的な豪雨に襲われ、千葉県各地で浸水被害や土砂崩れが相次いだ。新聞やテレビなどの報道で、浸水した茂原市や佐倉市の光景、千葉市緑区の土砂災害の様子を目に焼き付けた方も多いことだろう。
 千葉県防災危機管理部の発表している台風15号及び台風19号の被害報告では、既に被害を受けた建物は5万戸を超えている。そこに今回の豪雨災害である。

ふだんは風光明媚な漁村風景が広がる、
館山市南端部の富崎、相浜、布良(めら)地区界隈。2019年10月3日撮影


 前回の連載(第8回)で、「地域の復旧の長期化、観光客の減少などによる影響がボディーブローのようにきいてくると思われる」と書いた。取材させていただいた方々の店舗に足を運び、声を聞いていると、その深刻さはいっそう増していると言わざるを得なかった。

右奥に見える建物が、以前取材した「富崎ベーカリー」(富崎地区)。住居部分の屋根が壊され、営業再開まで2週間以上かかった

自家製酵母を使った「富崎ベーカリー」のパンは地元の人たちに人気だ

 
 そこで、「今、寄付する支援/少し未来に行動する支援」活動をもう1カ月継続します。

・『BOSO DAILY TOURISM 房総日常観光』の売上の半分を寄付する
・実施期間は2019年11月1日(金)~12月1日(日)
・寄付先は社会福祉法人千葉県共同募金会「令和元年 台風15号・台風19号・大雨千葉県災害義援金」(赤い羽根共同募金)

 「今」は寄付による復旧の支援を、そして「少し未来」に、本書を携えてぜひ現地に足を運んでいただきたい。寄付というひとつのアクションをきっかけに、継続的な関係性へ……その活動趣旨を踏襲しつつ、今回は寄付先を新たなところにさせていただいた。
 前回は支援をされているボランティア団体やNPOの活動へ寄付させていただく「災害ボラサポ募金」。今回は同じ赤い羽根共同募金ながら、被災された方々への支援を目的とした義援金として寄付をさせていただきます。

 続いて、手前味噌なお知らせで恐縮ながら、私の写真展について触れさせていただこうと思う。有難いことに、2019年6・7月にNorth Lake Cafe & Booksで開催した写真展「房総へ」の巡回展を、タンジョウファームキッチンで開催させていただけることになった。

 タンジョウファームキッチンは隣接するタンジョウ農場で農業を営みながら、畑で採れた野菜や果実を使って、ランチやパフェを提供。木立に囲まれたカフェは、いつも女性客やカップルでにぎわっている。自然、食、そして人が関わりあう日常の豊かさとは何か。そんなことを問い続けている農場カフェである。『房総カフェ?』『房総落花生』の取材でも大変お世話になったところでもある。

タンジョウ農場で育てた野菜を販売

台風15号が上陸後、9月19日に店を再開


 実は、タンジョウ農場も一連の台風で被災されているのだが、

 「私たちよりももっと大変な目に遭っているところがいっぱいあります。だからこそ今、沼尻さんのこの写真展をやってほしいと思ったんです。大勢の方に、房総の魅力をお伝えしたいんです」

 その副農場長の岩山さんの熱い想いに促され、巡回展開催の運びとなったのだ。その熱量に応えなければと、改めて気を引き締めているところだ。

タンジョウファームキッチンのランチ


 写真展のタイトル、「房総へ」という三文字が、これまで以上に大きな意味を帯びてしまった。
 
 今回は前回展から写真を一部入れ替え、被害の大きかった南房総地域の写真や、東日本大震災後に取材した復興へ向けて歩む人たちの写真も展示する。風評被害に負けずに踏ん張り続けた有機農業を営む農家の「街と畑を耕す」という信念や、実家の福島が被災した、移動式のコーヒー店店主の「人と人とのつながりを求めて、笑顔を届けに」という言葉は、震災の時に限らず、今現在の私たちの暮らしにも大きく響く。

 一連の災害において、どんなモノを備えたらいいかとか、ハザードマップを確認すべきだなど、災害対応の必要性を数多く学んだ。だが、普段の地域課題にこそもっと視線が注がれるべきではないだろうか。維持できない山林、増える耕作放棄地、少子高齢社会、地方の疲弊……集落や地域そのものが満足に維持できなくなりつつある中で、災害対応がそもそも可能なのか。山間部にある高齢者たちの集落が孤立してしまうケースを、私たちはこの災害で既に目の当たりにしている。この秋に襲来した災害は私たちに、何気ない日常がいかに大切であるかを改めて認識させた。

 「日常の豊かさとは何かを問い続ける」

 自然と人との繋がりを模索し続けるタンジョウファームキッチンでの写真展が、そんなきっかけの場になればと思う。今、改めて房総の各地の日常から、豊かさの背景を見出したい。それが未来への糧になるはずだから。

「房総へ」
KOJI NUMAJIRI PHOTO EXHIBITION


【会期】2019年11月14日(木)~12月1日(日)
【時間】11:30〜17:00 ※月・火・水曜定休
【観覧】無料
【会場】タンジョウファームキッチン
   (千葉市花見川区大日町1399-2)

●写真展の詳細はこちら


沼尻亙司さんの公式サイト「暮ラシカルデザイン編集室」
https://classicaldesign.jimdo.com/
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【ぬまじり・こうじ】
1981年千葉県生まれ。千葉県全域のタウン情報誌『月刊ぐるっと千葉』編集室に在籍した後、2014年に千葉・勝浦の古民家を拠点にした「暮ラシカルデザイン編集室」を開設。「房総の名刺のような存在感としての本」を目指して、取材・制作・編集などの本づくりから営業までを行う。これまでに、人・地域にフォーカスした『房総カフェ』『房総のパン』『房総コーヒー』『房総落花生』『BOSO DAILY TOURISM 房総日常観光』などのリトルプレスを発行。
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