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美しいくらし
ひとり出版者の仕事 暮ラシカルデザイン編集室
沼尻亙司
第8回 千葉の本に、できること
 2019年9月9日。
 強い勢力のまま千葉市付近に上陸した台風15号は、深い爪痕を残した。

 一時、千葉県を中心に関東や伊豆諸島で最大90万戸以上が停電。あれから2週間以上も経った、この原稿を書いている9月25日時点でも、低圧電線や家庭への引き込み電線の損傷により、県内の各所では電気が使えない家々がある。また、損壊・浸水被害を受けた住家・非住家は2万戸前後にのぼり、さらにその数は増える可能性があるという。屋根を飛ばされるなどの建物被害に遭われたところや、農水産業への影響の長期化は避けられそうになく、未だ心配は尽きることがない。

 被災された皆様には、改めて心よりお見舞い申し上げます。

 編集室は房総半島の東側、太平洋に面した港町、勝浦市にある。建物が築100年ほどの古民家だったため、瓦の剥落を危惧していたが、玄関の引き戸やガラスが破損した程度でなんとか乗り切ることができた。

 それよりも堪えたのはライフラインの寸断だった。
 編集室界隈は13日の明け方まで、電気・水・そして通信が使えなくなった。今振り返ると、2週間以上にわたりライフラインが寸断されているところもあるので、このくらいは軽微な被害といえることもできるが、普段とは違う生活を送ることで、精神的・肉体的ダメージはやはりそれなりに受けるものだ。
 幸い、ガスはプロパンだったので普通に使え、電気は普段から太陽光パネルや、車につなげているポータブル電源を併用していたので、扇風機や照明、PC充電程度なら常時賄えた。
 一方、水は井戸水なのだが、まずいことに水を汲み上げるポンプの電気が別系統だったのだ。なので、水はまったく出なかった。スマホなどの通信もダメ。13日の朝、トイレの水が満足に流せるようになった時、静かに感動した。

 ライフラインが止まってからラジオをずっと流していたが、日に日に懸念は増大していく。各地の現状が伝えられ、取材に訪ねた多くの場所が被災していたことが分かってきたからだ。特に、報道でも多く取り上げられた南房総や、東京湾に面した内房と呼ばれる地域は、昨年発行した『BOSO DAILY TOURISM 房総日常観光』で何度も足を運んだフィールドだった。気持ちを抑えられず、台風15号が直撃した翌週15日、木更津市から館山市へと南へ縦断させるように車を走らせた。そこには未だ日常を取り戻せないでいる、あまりにも傷ついた光景が広がっていた。

鋸南町、勝山漁港付近

富津市、東京湾フェリー乗り場。ここ金谷地区では断水も続いていた


 光を重ねたクリアーな碧い海を背景に、折り重なる鈍色の瓦屋根の民家……取材で駆け回った美しい房総の漁村風景は、幾重ものブルーシートに覆われていた。
 穏やかな里山の風景は、折り重なる倒木に痛々しい姿に変わり果てていた。

 房総は、日常の風景、暮らし、生業(なりわい)にこそ、愛おしくなるほどの魅力がある。だからこそ『BOSO DAILY TOURISM』というリトルプレスを作った。
 この本は、木更津・内房・南房総地域のガイドブックでありつつ、房総の日常を生きる人たちにフォーカスした記事や、いつもの房総の風景を切り取ったビジュアルなども盛り込んだ「現地にとっての日常感覚」を編集している。私たちの日常と、現地の日常との「差異」から新たな魅力、価値観を発見する「日常観光」。それがコンセプトである。

 残念ながら今回の台風で、掲載させていただいた多くの方たちも被災された。木更津市のパン屋「かさりんご」は停電による一部原料の廃棄、館山市の「ブロワ珈琲焙煎所」はテラスの一部損壊、同じく館山の「TRAYCLE MARKET & COFFEE」はご実家の屋根が飛ばされる被害に見舞われていた。富津市の「cafe GROVE」も長期停電や倒木、南房総市の「free style furniture DEW」もやはり長期停電や倒木などの被害に遭われた。

 そんな状況の中、物資の拠点として活動されたり、営業を再開することで少しでもほっとできる「日常」を提供したりと、自らも被災者でありながら奮闘されている姿に心を打たれた。房総の底力を、私はほんとうに誇りに思う。

館山市にある古民家カフェ「TRAYCLE」。支援物資や携帯充電の拠点の一つとして活動された

自らも被災の当事者でありながら営業を続ける「TRAYCLE」の知識さんご夫妻


 ただ、心配なのは「今後」。直接的な被害に加えて、地域の復旧の長期化、観光客の減少などによる影響がボディーブローのようにきいてくると思われる。実際、例年なら掻き入れ時である9月の三連休も、お客が少ない状況だった。

 そんな中、何かできることはないだろうか。そう考えた時、本の作り手として無力感にさいなまれた。本は食べることはできないし、電気を生むこともない。だが、平生を取り戻し始めた「少し未来」へ向けた支援ならできるのではないか。そう考えた。そして、次のような行動を起こすことに決めた。

・『BOSO DAILY TOURISM 房総日常観光』の売上の半分を寄付する
・実施期間は9月19日(木)~10月31日(木)
・寄付先は中央共同募金会(赤い羽根共同募金)「台風15号災害に伴うボランテイア・ NPO活動サポート募金」

 「今、寄付する支援」と「少し未来に行動する支援」
 「今」は寄付による復旧の支援を、そして「少し未来」の落ち着いた段階になったら、本書を携えてぜひ現地に足を運んでいただければと思う。ボランティアはもちろん、観光でも美味しいもの食べにいくのでもなんでも、実際に現地に足を運んでもらうことは、現地にとって確実に励みになる。寄付というひとつのアクションをきっかけに、継続的な関係性へと発展していく。そんな流れになればと願っている。

 どんな形でも結構です。みなさま、どうぞ房総を、そして千葉県に想いを馳せていたただければ幸いでございます。

『BOSO DAILY TOURISM』。表紙は被害の大きかった富津市金谷地区で撮影した夕景



『BOSO DAILY TOURISM』の販売店
【千葉県内】豆nakano(千葉市中央区)、MOON LIGHT BOOKSTORE(千葉市中央区)、千葉市美術館(千葉市中央区)、自家焙煎珈琲豆屋 じゃくう鳥(千葉市中央区)、PIE & COFFEE mamenakano(千葉市美浜区)、タンジョウファーム キッチン(千葉市花見川区)、丸善 津田沼店(習志野市)、CB PAC(鎌ケ谷市)、猫実珈琲店(浦安市)、良文堂書店(松戸市)、North Lake Cafe & Books(我孫子市)、Kinari cafe(我孫子市)、ブックマルシェ(我孫子市)、ごはん屋さんとちいさな工房 てまめや(四街道市)、ときわ書房 志津ステーションビル店(佐倉市)、アベイユブックス(佐倉市)、コーヒー くろねこ舎(茂原市)、紅雲堂書店(木更津市)、cafe GROVE(富津市)、星空の小さな図書館(いすみ市)、星空スペース(いすみ市)、御宿ウチヤマ(御宿町)、シーガル(御宿町)、SPAiCE COFFEE(勝浦市)、Tokidokido(勝浦市)、bistro au bon accueil(勝浦市)、鴨川書店(鴨川市)、安房暮らしの研究所(南房総市)、海猫堂 ※道の駅ちくら潮風王国内(南房総市)、Sand CAFE(南房総市)、ブックセンター近田屋(南房総市)、道の駅三芳村鄙の里(南房総市)、free style furniture DEW(南房総市)、宮沢書店 本店(館山市)、宮沢書店 TSUTAYA店(館山市)、TRAYCLE Market & Coffee(館山市)、ブロワ珈琲焙煎所(館山市)
【千葉県外】shop + space ひめくり(岩手県盛岡市)、リードブックス(福島県いわき市・イベント出店)、REBEL BOOKS(群馬県高崎市)、sonorite'(茨城県龍ケ崎市)、往来堂書店(東京都文京区)、タコシェ(東京都中野区)、旅の本屋 のまど(東京都杉並区)、本屋 Title(東京都杉並区)、代官山T-SITE 蔦屋書店(東京都渋谷区)、BOOKS f3(新潟市中央区)、レティシア書房(京都市中京区)、blackbird books(大阪府豊中市)、1003(神戸市中央区)、451BOOKS(岡山県玉野市)、taramu books&cafe(福岡県大牟田市)、自由地図ブックス(佐賀県伊万里市)

※在庫の有無は各店舗にご確認ください。
※こちらのご注文フォームからもお申し込みいただけます。

沼尻亙司さんの公式サイト「暮ラシカルデザイン編集室」
https://classicaldesign.jimdo.com/
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【ぬまじり・こうじ】
1981年千葉県生まれ。千葉県全域のタウン情報誌『月刊ぐるっと千葉』編集室に在籍した後、2014年に千葉・勝浦の古民家を拠点にした「暮ラシカルデザイン編集室」を開設。「房総の名刺のような存在感としての本」を目指して、取材・制作・編集などの本づくりから営業までを行う。これまでに、人・地域にフォーカスした『房総カフェ』『房総のパン』『房総コーヒー』『房総落花生』『BOSO DAILY TOURISM 房総日常観光』などのリトルプレスを発行。
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