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美しいくらし
ひとり出版者の仕事 暮ラシカルデザイン編集室
沼尻亙司
第10回 人と人とのつながりを求めて笑顔届ける
 前回より延長して実施した「今、寄付する支援/少し未来に行動する支援」。
 11月もおかげさまで、写真展会場やブックイベントなどで『BOSO DAILY TOURISM 房総日常観光』をお買い求めいただいた。イベント出店の機会をいただいた「あわぶっく市」(南房総市)の実行委員の皆さま、並びに本を追加発注してくださった「SANGA SOBA & COFFEE STAND」(富津市)、そして直接ご購入くださたった読者の皆さまに、改めて御礼申し上げます。
 また、写真展に合わせて作った展示解説の小冊子『Pictorial record & BOSO_ZINE』も同様に、売上の1/2を寄付させていただくことにした。

 以下、それぞれの売上冊数と募金金額の報告です。

●『BOSO DAILY TOURISM』
【直接販売】11冊 ×(1,375円 × 1/2 )= 7,562.5円
【卸販売】5冊 ×(1,375円 × 60% × 1/2 )= 2,062.5円

●『Pictorial record & BOSO_ZINE』
【直接販売】16部 ×(100円 × 1/2 )= 800円

【募金金額合計】 10,425円

<補足>お店への卸価格は、編集室では買取で一律60%に設定しているので、その1/2にあたる412.5円を『BOSO DAILY TOURISM』の募金単価とました。

 12月2日、社会福祉法人千葉県共同募金会「令和元年 台風15号・台風19号・大雨千葉県災害義援金」(赤い羽根共同募金)に10,425円を募金させていただきました。
 現地では、建物などの復旧が長期化するのは必至な状況だが、飲食店などは再開しているところも多い。「今」は寄付による復旧・復興の支援を、そして「少し未来」に、本書を携えてぜひ現地に足を運んでいただければ幸いだ。特に南房総はこれから花のシーズンを迎える。12~1月の鋸南町のスイセンから始まり、2~3月は南房総の海辺でキンセンカや金魚草など、色とりどりの花が咲き誇る。南房総のハイライトを、ぜひご堪能いただきたい。

南房総市千倉のお花畑(「房総へ」より)


 そして、千葉市の農場カフェ「タンジョウファームキッチン」で開催していた写真展「房総へ」が12月1日、無事に終了した。特に11月24日に行われた、タンジョウ農場の収穫祭の日に大勢のお客さんにお越しいただいた。全面的にバックアップいただいたスタッフの皆さま、そして足を運んでくださった皆さまに、改めて深く御礼申し上げます。

 巡回展「房総へ」の2回目となる今回は、「房総」というフィールドのほか、「日常」「豊かさ」をコンセプトに据えて展示を行った。

 私たちのふだんの日常。そして、旅先で不意に出会う現地の日常。フィールドや視点を変えるだけで、日常と非日常のレイヤーは溶け合い、私たちの抱いていた「あたりまえらしさ」の感覚は揺らぐ。そうした日常の「差異」から新たな魅力、価値観を発見する「日常観光/DAILY TOURISM」。今までリトルプレスでそれを表現しようとしてきたが、本展はそれを写真という媒体で表現しようと試みたものであった。

 一方、6~7月に「North Lake Cafe & Books」で最初の展示をした後、続けざまに風雨が房総を襲った。思いもよらず、なにげない日常がいかに大切なものだったかを認識させられた中で、改めて各地の日常から豊かさの背景を見出したい。それが未来への糧になるはずである。そう考え、次の4枚の写真を会場に提示した。これは、東日本大震災関連の記事で取材した時のものだ。

「真澄屋」(「房総へ」より)

「真澄農園」(「房総へ」より)


 この2枚は、千葉県北西部、流山市にある有機無農薬野菜と自然食品を扱う八百屋「真澄屋」と「真澄農園」の写真である。

 真澄屋は吉田篤さん、まさ子さんが1981年に開業した。1994年には江戸川河川敷の遊休地を耕し始め、真澄農園をスタートさせた。取材したのは2011年11月。原発事故により苦境に陥りながらも、仲間と支え合い、地域の人たちと付き合い続けながら踏ん張る篤さん。土と向き合い始めて以来、最も困難な状況にあるにも関わらず、絶対に笑顔を絶やさなかった。その表情には、

「街と畑を耕す」

という開業以来の理念を貫き通す、ブレない意志があった。人権が守られ民主的である「社会」と、循環しサスティナブル(持続可能)な「自然」。どちらが欠けても、私たちの平穏な暮らしや生業は成立しない。社会と自然を、すこやかな畑の土のような柔らかさで繋げんとする人がここにいることを伝えたかった。

「福笑屋」(「房総へ」より)


 続いての2枚は、千葉県東部、山武市を拠点に各地のイベントでコーヒーの香りとその笑顔をふりまきながら、移動式コーヒー店を営む宮嶋さん。

 震災では故郷の福島が被災。地震発生から間もなく帰郷し、約1カ月滞在しながらボランティア活動に奔走した。そして、かねてから思い描いていた移動販売店の開業を予定より前倒しし、4月11日にオープンさせた。店名は「福(ふく)笑(み)屋(や)」。福島に笑いを……その思いを込めて。

 真澄屋はその後、街の人たちが交流できるカフェをオープン。宮嶋さんは今も

「人と人とのつながりを求めて 笑顔を届けに」

スバルサンバーでかけ回る。

 人と人とのつながりの中で、日々積み重ねられるささやかな日常にこそ豊かさを育む土壌があり、その土に笑顔というとびきりの肥料を与えることが、人として生きる豊かさの前提になるのではないか。
 災害が日常化する中で、さまざまな備えが必要であることを教訓として学んだ。もちろんそうした物理的対策は大切だが、震災、そして今回の災害を通じて、「日常の課題があぶり出された」ことを痛感したはずだ。そもそも豊かさの前提条件が地域から失われてはいないか、そこを見据える必要性を感じるのだ。震災を乗り越えてきた人たちの姿勢は、私たちがこれからをどう生きるかを、そっと問いかけている。


沼尻亙司さんの公式サイト「暮ラシカルデザイン編集室」
https://classicaldesign.jimdo.com/
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【ぬまじり・こうじ】
1981年千葉県生まれ。千葉県全域のタウン情報誌『月刊ぐるっと千葉』編集室に在籍した後、2014年に千葉・勝浦の古民家を拠点にした「暮ラシカルデザイン編集室」を開設。「房総の名刺のような存在感としての本」を目指して、取材・制作・編集などの本づくりから営業までを行う。これまでに、人・地域にフォーカスした『房総カフェ』『房総のパン』『房総コーヒー』『房総落花生』『BOSO DAILY TOURISM 房総日常観光』などのリトルプレスを発行。
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