第11回 リヤカー屋台~商いという風景をつくる(下)

支柱部分を解体した状態でラクラク駐車場へ移動。リヤカーの手持ち部分やタイヤの付いた台座も分解して車に積む
連載第11回(上)で、リヤカー屋台の魅力についてまとめてみたが、そもそもなぜ、リヤカー屋台で本を届けようと考えたのか。「千葉の名刺となる本を作り、届ける」というコンセプトでやり続けている中で、「届ける」という部分を強化したいという想いがあったからだ。特にここ1、2年の間に、その想いを強くすることが多々あったので、それをまとめてみた。
1)一箱古本市以外のイベントへ拡張したい 千葉県でも各地で一箱古本市が行われていて、私も度々出店して楽しませていただいている。だが、「一箱」と付いているように屋台規模の出店は難しかったり、また、新刊販売がメインの私にとっては「古本市」になんとなく居心地が……。それに、以前から本に縛られないマルシェなどにも出店してみたいと考えていたこともあって、コアな本好きばかりが集まる場所以外でも千葉の魅力を届けたいという気持ちが強まっていった。
2)熱量の届き方を再考する 卸販売させていただいている書店の店長の交代や、店舗リニューアルなどが立て続けにあった。そうなった途端、突然これまでと180度方針が変わって卸が打ち切りとなったり、はしごを使わないと手に取れないだろ! という場所に本が置かれてみたり。かつてその書店で3桁台の冊数を売り上げた実績があったとしても、先方の諸事情によって本に込めた熱量が売り場でガクンと落ちることが、本当に悲しいことだった。だから原点に戻り、決して大勢に届かなくても、自ら汗をかき読者の元にしっかりと届けたい! その想いが高まっていく。
3)『房総落花生』の発刊と、岡山でのブックイベント 『房総落花生』という、千葉の落花生のことばかりを載せたマニアックなリトルプレスを、岡山県玉野市にある「451BOOKS」の根木さんに気に入っていただき、岡山大学で開催された「イチョウ並木の本祭り」に呼んでくださった。このとき、本とともに千葉産の落花生やピーナッツペーストも販売。これが大変好評で、知られざる千葉の魅力が届いている手ごたえを実感した。本とともに、取材した商品も併せて販売することで、より伝わることがある。そしてその場を欲するようになった。
こうした背景の中で出会ったのが、リヤカー屋台の作り手、伊藤さんだったのである。

我孫子市にあるブックカフェ「North Lake Cafe & Books」前で1roomの伊藤さんとともに出店。
リヤカー屋台はストリートの風景をつくる
沼尻亙司さんの公式サイト「暮ラシカルデザイン編集室」https://classicaldesign.jimdo.com/